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デジタルメディア全盛の中で健闘するアナログ版地図帳のマーケティング戦略

2005年02月07日

カーナビやインターネット、携帯電話の地図・位置情報サービスの普及により、最も影響を受けたオールドメディアは、紙に印刷していた地図帳でしょう。しかし、この昔ながらの地図帳の売り上げが、意外にも好調なようです。 情報源は、『"読み物"に進化する地図』(日経ビジネス 2005年2月7日 p.24)です。

1万部も売れればヒットと言われる地図の分野で、『今がわかる時代がわかる世界地図』は2003年度版の発売から販売部数が累計40万部に達した。この『日本版』も2004年度から累計で25万部に上る異例の売れ行きを見せ、出版関係者を驚かせている。2冊の出版元は、旅行ガイドのムックを多く手がける成美堂出版だ。

世界版には、各国のテロが起こっている地域を示す時事的なテーマから、世界のサッカーリーグに至るまで多岐にわたる情報を盛り込んでいる。1冊1600円(税抜き)と、比較的手の届きやすい価格に設定したことが男女や年齢を問わず人気を集めるもう1つのポイントとなった、とも見ている。

一方、この2冊とは少し異なるコンセプトを打ち出しているのが、『江戸明治東京重ね地図』『東京・首都圏未来地図』だ。『江戸明治東京重ね地図』は、現在の地図を江戸や明治の地図と重ね合わせて見ることができるDVD-ROM地図で、コンピューターの画面上にあるカーソルを現代から明治、江戸へと動かすことで自在に時代による変化の様子を見て取ることができる。

この商品は、普段歩いていて気に入った場所や撮影した写真、コメントなどを取り込み、自分好みの地図に変えていくことができる。街歩きを楽しむ団塊の世代を中心に人気だ。

ただ、ヒットしている地図には、共通して言えることがある。未来や江戸をテーマにしていたり、オリジナルの地図作成が楽しめたりと、どれも、切り口が斬新で、かつ飽きさせない工夫をこらしていることだ。「安易にこの流れに乗って、地図の製作・販売を試みる出版社も出てきた(成美堂出版・広瀬編集長)という。どうひねりを加えるか。目の肥えた"読み手"を納得させるのはようではないだろう。

この記事を読んでわかるように、必ずしもすべても地図帳が売れているわけではありません。紙に印刷する地図帳は、日々刻々と変化する情報を掲載するという点では、どうしてもインターネットにはかないません。 販売好調な地図帳のマーケティング戦略の基本は、単純な掲載情報の鮮度という、インターネットが優位性のある土俵での勝負を避けたことにあります。その代わりに注力したのは、独自編集による付加価値情報の充実です。この種の編集ノウハウという点では、新興のWeb系のコンテンツ製作社に比べれば、昔から旅行ガイドブックを製作してきた歴史のある出版社の方が、一日の長があるのは明らかでしょう。

『江戸明治東京重ね地図』の方は、ユーザ自身が作り込んで自分のオリジナル版を作れる点が、すべてのユーザに均質の情報を提供することしかできないWeb上のコンテンツに対する差別化要因になっています。しかし、オリジナルの地図を作りたいと考える人は、それほど多くはいないのでニッチなマーケット志向の製品でしょう。そのため販売価格も、18,900円と比較的高めに設定されています。 また、過去の史実を盛り込むということであれば、新しい情報の追加も不要です。ここでも、インターネットとの鮮度競争を避けるという発想が働いたのではないでしょうか。

一方、ネット系のコンテンツの方は、最新のデジタル技術を利用して提供する情報をさらにリアルなものに近づける方向への動きが加速化しています。例えば、カーナビでの搭載が進んでいる3Dの町並みも、近い将来帯電話でも見れる時代になりそうです。 情報源は、『携帯向けに立体地図~ドコモら3社が実証実験』です。

三菱電機とNTTドコモ、パスコの3社はインターネット対応携帯電話向けの3D地図と地理情報システムを開発した。総務省からの委託研究開発を受けて開発されたという。

このシステムは、携帯電話向け配信に配慮した特徴を備えている。地図データベースの生成にあたり、目印になりやすい建物の重要度を評価・記録する処理を行うことで、道案内の目安となる建物を優先的に表示可能。配信される端末の処理能力を特定し、スペックに見合ったデータ量を算定・配信する機能も備える。また、空間を表示する視点の位置に対応して、建物の前後関係を元にした建物の説明を表示するなど、地図と地理情報を複合表示することも可能だ。

このドコモの試みも、より実写映像に迫ろうとするカーナビの動きと同じものと考えられます。先ほどの紙の地図帳とこの携帯サービスの例から考えると、今後の方向性としては、ストーリー性のある地図帳と、リアルに迫る臨場感のコンテンツという、両極端の方向があるようです。どっちつかずの中途半端な地図メディアは、生き残りが難しくなっていくのは確実でしょう。また、地図帳の例は、独自の付加価値を生み出す工夫次第では、オールドメディアでも十分生き残っていく可能性を示すものです。


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