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社風の違う企業が合併しても教科書通りのシナジー効果が実現する可能性は低い

2005年02月23日

売りに出されていた About.com は、結局 新聞系の老舗ニューヨーク・タイムズが買うことになりました。今回の落札劇に関する事情を紹介します。 情報源は、Web企業買収に乗り出す新聞社、その狙いは?です。

New York Timesが2月17日にAbout.comを4億1000万ドルで買収すると発表したこと、またDow Jonesによる4億6300万ドルでの金融サイトMarketWatchの買収は、従来の新聞社による買収よりもずっと取引額が高いことで世間を驚かせた。 しかしアナリストは、インターネット事業を拡大したいのなら、新聞社はこのくらいの額を払わなくてはならないかもしれないと指摘する。売りに出ているインターネットコンテンツ会社はほとんどないため、出版社は見つかるものに飛びついているという。

「インターネットの評価が大きく回復している」と話すのはMorgan Stanleyのアナリスト、ダグラス・アーサー氏。「インターネットでは、無傷のままバブルを生き抜いた資産はそう多くない。妥当なビジネスモデルと十分なWebトラフィックのシェアがある企業なら高く買われるだろう」

アナリストの分析によれば、新聞系メディアが著名な Web サイトに触手を伸ばすことは極めて合理的な投資判断と思われているようです。買収金額が高額化するのも、完全な売り手市場の状況も考慮に入れれば、About.com が高すぎる買い物と決めつけるような雰囲気もありません。外部の人間から見た、オールドメディアとニューメディアとの融合によるシナジー効果が期待される、といった教科書通りの分析です。それでは実際にメディアで働いている内部の人間は、新聞社による Web サイトの買収ラッシュをどう見ているのでしょうか。次のご紹介するのは、11年間 San Francisco Chronicle 紙で新聞記者として働いた後に、9年前にオンラインメディアの Cnet に移った編集者の感想です。 情報源は、ニュースサイトを買い漁る大手新聞社です。

9年前、私が大手新聞社での安定した職を捨てて、CNETのオンラインニュースサイトの立ち上げに参加したとき、周囲の人間は私を変人扱いした。彼らに言わせると「リスクが大きく、信頼性もなく、(大手新聞社のように)読者のブランドへの忠誠心もないオンラインニュースサイトに移るなんてどうかしている」というわけだ。

インターネットバブルがはじけ、悲惨な結末になって、若いインターネット起業家のほとんどは現実世界から教訓を学んだ。しかし、一部にはまだ、インクや紙だけでなく、ジャーナリストやブロガーさえも使わずに、コンピュータプログラムだけでニュースを発行するという夢を見ている者もいる。せいぜい頑張ってもらいたい。

その間、多くの大手新聞社の幹部たちは、ほとんどインターネットを無視していた。自分たちのビジネスの利益を向上させる機会であるにもかかわらず、新聞社のお偉いさんたちは、自分たちのビジネスモデルが食い荒らされることだけを心配していた。多くの企業がインターネットに投資したが、ただしあくまで添え物と捉えていたのは明らかだ(「自分はオンライン版ではなく印刷版のほうで記事を書いています」というのが多くのベテランジャーナリストたちの決まり文句だった)。

ところが、最近になって大手新聞社のネットに対する態度が変わってきた。といっても、積極的ではなく防御的な理由からではあるが。業績が停滞し、株主からの圧力を受けて、彼らはようやくインターネットの世界に飛び込む決心をしたようだ。今年は、インターネットニュースサイトと従来型の紙媒体の合併が間違いなく激化するだろう。夢見がちなインターネット企業も現実に立ち返り、従来型メディア企業と共存する道を選ぶことになるだろう。だが、大手の従来型メディア企業はもちろん何も気にしていない。彼らにとってはあくまで紙メディアが主体なのだから。

Cnet の立ち上げから参加した編集者ならでは、辛口のコメントです。新聞社側のネットメディアを下に見る態度が、根本的に変わっていない点に疑問を投げかけています。新旧のメディア間での社風は、実際にかなり異なるようです。社風の違いといえば、思い出すのは、AOLとタイムワーナーとの提携です。2000年に両社の合併が発表された時は、当時の勢いからして新興のAOLが老舗のタイムワーナーを飲み込むという論調でした。合併後5年を経過して、その結末は悲惨です。 情報源は、元会長のS・ケースが「AOLタイムワーナー」の合併失敗を語るです。

AOL Time Warner(現在のTime Warner)の元会長であるSteve Caseは、恐らく企業の歴史の中で最大の失敗といえるAmerica OnlineとTime Warnerとの合併に対する非難を甘受することを全く恥じてはいない。

実際、合併を立案したCaseと当時Time Warnerの最高経営責任者(CEO)だったGerald Levinの二人にとって、インターネットを武器にビジネスを展開する巨大なメディア企業という崇高なビジョンは、縄張り争いと冷酷無比の権力闘争という味気ない現実の中に消えていった。Caseは、Time Warnerの悪名高い閉鎖的な企業文化をつらい体験の中で身を持って実感した。数十億ドル規模を誇るTime Warnerの経営陣がAOLの新しい経営陣と連携するという発想に苛立ちをみせたのだ。

ビジネスモデルとしてはシナジーが期待できたとしても、社風が違えばマイナスの面の方が大きくなってしまいます。AOL Time Warner は、互いにメリットを期待した友好的な合併の結果で誕生したものです。コンパックとHPの合併も、現在まで目立った成果をあげていません。その結果、合併を推進したフィオリーナCEOが辞任することになりました。

異なった歴史を持つ企業が合併することは、友好的な意図をベースにした場合でさえ成功は難しいものがあります。ましてや一方の当事者の意図に反して仕掛ける敵対的買収の場合は、成功の確率はさらに低くなるはずです。ライブドアのニッポン放送の買収に関しては、本日フジテレビ側の対抗策が発表されました。いよいよ泥沼の長期戦の様相を呈してきました。この対抗策が無効になり、ライブドアがニッポン放送の過半数の株式を取得することに成功したとしても、教科書通りにシナジー効果が実現できるかどうかは大いに疑問です。

一般論として自分の会社が敵対的買収の対象となって、歓迎する人間はいないでしょう。本場米国での買収された企業の末路は惨めなものです。18ヶ月にわたる攻防のすえ、ピープルソフトを買収したオラクルは、早速リストラ計画の第一弾を発表しました(オラクル、ピープルソフト社員5000人のレイオフ計画を発表)。オラクルの買収目的は、そもそもピープルソフトが競合として大きくなりすぎる前に「潰す」ことにありました。途中方針も若干ソフトになったようですが、オラクルが欲しいのはピープルソフトの顧客であり、その製品ではないことは明らかです。そんな状況では、今回はレイオフを免れた元ピープルソフトの従業員の中からも、雪崩のように退職者が出てくることが予想されます。「負け組み」に容赦がないのが、アングロサクソンの論理です。


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