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朝日新聞の新サービス「アスパラクラブ」は長期購読のインセンティブとなるか?

2005年02月24日

前回米国の新聞社が先を争うように Webサイトの買収に乗り出している話をとりあげました(社風の違う企業が合併しても教科書通りのシナジー効果が実現する可能性は低い)。日本の新聞社の場合はどうかというと、私が知る限りそういう動きは見られません。日本の場合は、新聞社が開設する Web サイトは内容が充実していてページビューも多い部類に入ります。そのため集客数アップを目的として、わざわざ特定のポータルサイトを買収する必要もありません。むしろポータルサイト系の方が、新聞社系・通信社系の配信内容をよせ集めているというのが、我が国の現状でしょう。

元々、日本の新聞社は比較的早い段階から Web サイトの構築に取り組んでいました。例えば朝日新聞の場合は、他社に先駆けて日本のネットインフラが整備されていない1990年代の中頃から、サイトをオープンしています。当時のページは、Internet Archive に残っています。その中で最も古い1996年のページには次のような説明があります。

日本国内の代表的なインターネット情報サービスに成長した「アサヒ・コム」に対しては、海外からも含めて非常に多くのアクセスがあり、多い時には1秒間に100個以上ものファイルが読み出されることもあります。このままでは、大事件が起こったあとや時間帯によっては、なかなか画面が開かないといった事態を招きかねないため、ユーザーの皆様の便宜をはかるため、「アサヒ・コム」は米国・サンノゼのメーンサーバーに加えて、国内にこれまで4個のミラーサーバーを設置してきました。

当初はナローバンドの電話線でサンノゼのサーバにアクセスしていたわけで、まともに読める環境になかったことが想像できます。それでも日本最初のニュースサイトに挑戦した新聞社の意気込みは十分に伝わってきます。朝日新聞は、伝統メディアの割には先進技術の導入に前向きで、RSSの導入も比較的早かったようです。朝日新聞にはインターネット以前の時代から、パソコン通信に取り組んでいた歴史もあり、デジタルメディアに対する積極性は評価されるべきでしょう。

新聞という既存メディアを持つ立場としては、新技術の登場を自らの市場を奪う脅威と捉えて敵対視するのが、ありがちな反応です。当時の朝日新聞には、ネットが普及すれば、新聞を読まなくなる、自社のニュースサイトを持つことは自殺行為に他ならない、とまでの考えはなかったのでしょう。また、新聞とネットは読者層が違うので、棲み分けが可能と想像していたのかもしれません。宅配が中心の新聞は、向こうから情報がやってくるメディアであり、自分でアクセスしないと情報が得られないネットとは、利用者の性格がオーバーラップしないので問題なしとする考え方です。

ブロードバンドが普及した現在、果たして新聞とニュースサイトは、当初の目論見通りに相互補完的に共存できているのでしょうか? よく言われる新聞と Web のシナジー効果は実現しているのでしょうか? 私の個人的な感想では、残念ながらNOです。朝日新聞とアサヒコムは、完全に共食い状態(カニバリゼーション)にあると思います。私の近くの人間を観察する限り、新聞を読む習慣のある人間は明らかに減少傾向にあります。理由は簡単です。ニュースをメインコンテンツとする限り、同じ内容であれば無料のネットを見れば済む話だからです。

こうした共食い状態を解消するために、朝日新聞のとりえる戦略の方向性は2つあります。1つは新聞紙面の充実です。単純なストレート・ニュースだけでは、サイトと差別化できません。土曜日の別刷りの「be」に代表される、特集取材読み物を新聞だけに展開する方法です(beの一部は、遅れてアサヒコムにも公開されるので、完全な差別化とはいえませんが)。新聞各社とも最近は、読み物風記事に力を入れているのには、このような背景があると思います。

もう1つの方向性は、ネットを利用して新聞読者を囲い込む方法です。そのために開設したのが朝日新聞の無料会員制サービスアスパラクラブです。登録さえすれば、誰でも閲覧可能なサイトですが、よく調べると朝日新聞の購読履歴に応じて3種類の会員種別があります。

グリーン会員は、入会時に朝日新聞を1年以上購読されている方になります。
イエロー会員は、入会時に朝日新聞の購読が1年未満の方になります。
ホワイト会員は、朝日新聞を購読されていない方になります。
それぞれの会員によって、利用できるサービスが変わります。

ホワイト会員は一部のサービスが利用できません。
イエロー会員はホワイト会員より多くのサービスが利用できます。
グリーン会員はすべてのサービスが利用できます。

朝日新聞の購読期間が長くなるほど、サービスが充実する仕組みになっています。

う~ん。「できます/できません」だけの説明を読んでも、グリーン会員にしか提供されないサービスの具体的な内容がサッパリわかりません。ベネフィットが全く想像できないので、マーケティング・コピーとしては落第です。結局詳しいサイト内容を知るのには、実際に試してみるしか方法がありません。そこで早速会員登録しました。ちなみに私は最上級のグリーン会員資格保持者です(別にえばるほどのことはないですが)。

購読履歴を販売店に調べているためか、パスワードがなかなか返送されてきません。アスパラクラブの読後感は、後日改めて報告することにします。アスパクラブは、販売店が配る洗剤などの景品での拡販競争に比べれば、王道を行くマーケティング戦略です。メディア企業はやはり、コンテンツの中身で勝負すべきです。しかしこの程度の会員制度が、長期新聞購読のインセンティブとして機能するかは疑問です。あくまでも実際に会員限定コンテンツ見る前の勝手な予想ですが。


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