堀江社長の第一声「日本の司法は生きていた!」を中村教授はどう考える?
2005年03月14日
ライブドアによる第三者割当新株予約権の発行差し止め申請を、東京地裁が認めました。地裁の決定を聞いた時に、堀江貴文社長が発した第一声は、次のようなものだったそうです(『堀江の敵は「堀江キャラ」』週刊AERA 2005年3月21日号 p.26)。
日本の司法は生きていた! すばらしい判断をしてもらった。
この後、ライブドア社内で開かれた記者会見では、大方の予想に反して堀江社長は高らかに「大勝利宣言」する様子はありませんでした。出てきたのは、この決定で話し合いの糸口が見つくかりそうになったという主旨の「少し前進した」程度の抑えたコメントです。勝者の余裕なのか、「想定内の結果」だったからなのか、その理由は定かではありません。折角解決の明かりが見え出したのに、ニッポン放送・フジ陣営の神経をこれ以上逆撫でして、振り出しに戻すような愚挙は避けたいという配慮が働いていたようです。
堀江氏の「日本の司法は生きていた!」という感想から思い出したのは、「日本の司法は腐っている」という中村修二氏言葉です。これは、青色発光ダイオード(LED)に関する発明の対価に関して、中村修二氏が日亜化学工業の間で和解が成立した後に開いた記者会見での言葉です「日本の司法は腐っている」、中村修二氏が記者会見で怒りをあらわに)。和解とはいっても、中村氏の場合は実質的には完全敗訴の弁になります。このあと、感情も露に日本の司法制度を辛らつに攻撃しました。もし、ライブドアの仮処分申請に下された決定が逆のものになっていたら、記者会見での堀江社長のトーンは全く違ったものになっていたのではないでしょうか。
今回の一連の騒動を通じて、株式制度や放送事業の外資規制の問題等の、現行の日本の制度での不完全さが浮き彫りになりました。さらには、もっと大きな企業価値やコーポレート・ガバナンス(会社は誰のものか)といった話題を取りあげるマスコミも増えています。ニッポン放送の問題がどういう決着になるのかはともかく、企業社会を取り巻く問題点に注目を集める働きがあったことは間違いありません。
もう1つ最近のビジネス関連の話題の中で、個人的に注目しているのが、公正取引委員会の動きと独占禁止法です。ここ数日間、インテルやドン・キホーテなど公取から排除勧告を受ける事例が目立ちます(インテル公正取引委員会からの排除勧告を意に介せず新聞全面広告を続行)。今日も、1件独占禁止法違反の疑いがある企業の記事が掲載されまました。 情報源は、『コーチ「ヴィトンが営業妨害」、日本市場攻防背景に』(2005年3月13日 日経流通新聞MJ 6面)です。
米ブランドのコーチは9日、仏ブランドのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが日本で独占禁止法に違反する不当な営業妨害をしたとして公正取引委員会に是正を求める申し立てをした。コーチによる百貨店内での出店計画などをLVMHが妨害したと訴えている。
コーチの日本法人コーチ・ジャパンによると、ヴィトンは昨年来、半ば公然とコーチの出店、増床計画を妨害してきたという。ヴィトンは複数の百貨店に対し「コーチの計画を認めるなら、同じ百貨店にあるヴィトンの店を撤退する」などと圧力をかけ、計画撤退を促したとしている。
ヴィトンは日本でも特に人気が高い高級ブランド。一店あたりの平均年商は三十億円以上。売り場の格式やイメージを規定するブランド力もあり、仮に売り場からヴィトンが抜けたら百貨店側への打撃は大きい。コーチ側は「独占禁止法上の競争者に対する取引妨害にあたる」と非難する。
この記事に注目したのは、「コーチの計画を認めるなら、同じ百貨店にあるヴィトンの店を撤退する」という脅し文句です。これもどこかで最近似たようなフレーズを聞きました。やはり冒頭のニッポン放送の関連の話題です。ニッポン放送の亀渕昭信社長は、「ライブドアの傘下に入った場合には、フジなどとの取引が中止され企業価値が毀損する」と主張しています。実際にニッポン放送が、ライブドアに買収されたとしたら、本当にフジグループとの取引がなくなってしまうのでしょうか。そうした場合に、独禁法上に抵触する可能性もあるような匂いもします。
法律的問題はともかくも、上の亀渕社長言い分には企業トップの発言としては疑問に感じられます。「現在フジグループからの仕事があるのは、あくまでもグループ内の企業だからだ。したがってグループから外れてしまえば、その仕事は他社に廻されてしまう」と言っているわけです。つまり、ニッポン放送という自分の会社のやってる仕事は、どこの会社でもできる仕事で、自社独自の付加価値は何もないことを白状しているのと同じです。トップからこんなことを言われれば、社員は憤慨するのが普通だと思います。
ニッポン放送の社員の方は、別にこんな言葉を気にかける様子もありません。経営陣と完全に一蓮托生で、ライブドアによる同社の経営参画に反対する声明文を発表しています。堀江貴文社長の一連の発言について「リスナーに対する愛情が全く感じられない」のが理由です。社長を含めて社員の考え方にも、何となく甘さが見られます。基本的には法律で新規参入が守られている業界特有のことかもしれません。いわゆる「ゆで蛙」の状況にいるのでしょう。今回の決着いかんに関わらず、ニッポン放送の経営陣、社員に意識改革が必要なことも確かでしょう。
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コメント
はじめまして!
私は先月出版の『広報の達人になる法』(ダイヤモンド社)の著者です。ここにお取り上げ賜り感謝いたします。
「広報の達人とは企業の思想家になるべき人物に他ならない」というのが本書の一貫した主張です。
そこに、カルルス・ゴーン日産自動車社長が共感され、序文をいただくことができたのです。
そこに「広報担当者は、戦術的実施者ではなく、戦略的思想家であれ!」と明確に述べられております。
私は、ゴーン社長と時代を見る感性が同じだったことを誇りに想い、またうれしく思います。
PR人のみならず、一般ビジネス人やマスコミ志望の学生諸君にもきっとお役にたつと思いますので、ぜひお読みいただきたく存じます。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
山見博康
Posted by: 山見博康 | 2005年04月17日 07:57