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武富士元久存氏、マクドナルド原田永幸氏、外部から招聘された社長の明暗

2005年03月15日

消費者金融大手・武富士の元久存(もとひさめぐむ)社長が退任しました。そのあまりにも短かった在任期間に驚かれた人も多いのではないでしょうか。情報源は、武富士社長に近藤専務昇格、元久氏わずか8カ月で退任です。

松井証券専務から武富士社長に就任し、大きな話題ともなった元久存氏がわずか8カ月あまりで社長を辞任した。「元久前社長から、強い辞任の申し出があった」(広報部)という。イメージ刷新、社内改革など「すべてこれから」(同)という時期だけに唐突感は否めず、業界では武井保雄・前会長の影響力を指摘する声も少なくない。

盗聴事件で創業者の武井前会長が辞任した後の混乱の渦中に武富士に飛び込んだ元久氏は、当時まだ42歳。期待されたのは、イメージ刷新と社内改革だった。だが、数々の新サービスを開発し、松井証券時代は「アイデアマン」ともいわれた元久氏でも、武富士の社長就任後は事実上「何もできなかった」(ライバル企業幹部)。

武富士では、外部の人材をトップに招きながら短期間で会社を去るパターンが繰り返されてきた。「社内改革を進めようとする外部出身の社長と、武井前会長との確執があった」(同)ためだとされる。今回の元久氏辞任の真相は定かではないが、業界では「武井前会長の意向を側近が代弁し、元久氏は何もできなかったためではないか」(同)と見る向きもある。

正直に言って、あまり意外という感じはしません。元久社長の言動からは、今回の辞任が十分に予想できました。就任直後のインタビュー記事を読んだ感想として、「武富士のおかれた状況に対する現状認識が甘くて、改革しようとする意欲に欠ける人物との印象を受けます」と書きました(日経ビジネスの元久存・武富士新社長のインタビューはどう読むべきか)。

さらに就任2ヶ月後の記事には、「いろいろなところで聞く、武富士の元久新社長の発言する内容にも、今ひとつ歯切れよさが感じられないのには、このような事情が絡んでいたのでしょうか。どんなに優秀な人材がトップとして迎えられたとしても、それをサポートする体制が全く整っていないのでは、大きな効果は期待できないのは、当然でしょう。」とあります(株価は回復したが、疑問が残る武富士の改革スピード)。まさに起こるべくして起こった結果といった感じです。

武井保雄前会長の長期政権が崩壊した後に、武富士の信頼回復のために松井証券の専務の地位を捨てて、社長になったのが元久氏でした。外部から乗り込んでも、1人では思う通りのことが何一つできなかったというのが実情でしょう。しかし、同じように長期政権が続いた後の企業でも、外部出身の社長がわずか1年足らずの間で改革を軌道に乗せた例もあります。 情報源は、『原田改革の「凄み」と「死角」』(週刊ダイヤモンド 2005年3月12日)です。

2002年12月決算で29年ぶりの最終赤字に転落した日本マクドナルドホールディングスが復活の狼煙を上げている。昨年2月にアップル・コンピュータから招聘された原田永幸(はらだえいこう)社長が断行した改革の成果が早くも現れ、前期決算では3期ぶりの黒字転換を果たした。

「難しいことをやったわけではない。当たり前のマネジメントを当たり前に実行したまでだ」という原田改革の要諦は、QSC(品質・サービス・清潔さ)の徹底改善にある。

営業時間の延長、客席スペース拡大を伴う店舗改装、消費者の市場調査を重視する商品開発、効率的な広告投資など、「細かい点まで数えれば100以上の施策を打った」(原田社長)。

同時に組織・人事制度を大きく変えた。昨年5月末にフラットな中央集権組織へ改編。古巣のアップル・コンピュータから現執行役員の大宮裕子氏以下5~6名を引き抜き、人事、IT、経営戦略といった主要部署に張り付け、社長自ら血を入れ替えた。

米コンサルティング会社のベリングポイント(旧KPMG)からは数人を入社させ、「改革施策の成果を検証し、成果を上げている人に報いる仕組みもつくった」(原田社長)。

ところが、改革の方向性が明確に提示され、業績回復という成果が上がっている一方で、社内からの人材流出に歯止めがかからない。原田社長がマクドナルドに転じて1年、執行役員以上の幹部社員のうち、少なくとも8人が会社を去った(3月末までの退任を含む)。

「売上至上主義についていけない」「米国市場の成功例を深慮せずに導入する」「社長の中央集権体制が強く執行役員の裁量が限られる」といった批判がある。

あくまでも強気の原田社長は、独裁的であるとの批判も一蹴しています。

幹部社員の流出については、気にしていません。アップル・コンピュータ社長時代も同じ現象が起きた。誰も苦痛もストレスも感じない改革などありえない。私は7年間続いた既存店売上高の減少をくい止めた。ビジネスは結果がすべてです。私のやり方についていけない人が辞めたとしても、改革の方向性が間違っているとは思いません(談)」。

社員の退職が続いたとしても、それはあくまでも社員自身が自己責任で選んだ結果という考え方です。決して、噂されるように意に沿わない人間を原田氏本人がクビにしたわけではないと説明しています。 情報源、『企業文化は独裁で作る』(日経ビジネス 2005年3月14日号 p.140-3)です。

私のプレゼンテーションは、決まって最後にバスの絵を出します。賛同するならバスに乗れというメッセージです。1月のミーティングでも、やはりバスの絵を出しました。昨年1年、私と仕事をして「思った以上にスピードが速い」「乗り心地が悪い」と思っている人がいるかもしれない。だから、今年はチケットを買い直せと。ワンチームでやる以上、乗るか乗らないか、はっきりさせないとダメなんです。その決断は個人の責任です。

私は社員をクビにしない。会社を辞めるかどうかを決めるのは個人です。会社を変革する時に、サラリーマンが「自分が辞めさせられるのではなかろうか」と動揺するのは当たり前です。それを放っておいて活力は生まれない。私の施策はリストラではなく、人材育成だよと言い続けています。

同じように外部から招聘されて社長に就任した、2社長の結果が正反対となった理由はどこにあるのでしょうか? それは、原田氏と元久氏とのビジネス・キャリアが根本的に異なるからだと思います。原田氏は、東海大学工学部卒業後、日本NCR、横河・ヒューレット・パッカード、アップル・コンピュータと、外資系IT企業一筋に歩んできました。

前職のアップルでは既に日本法人のトップを経験しています。IT業界のスペシャリストの食品業界への転身を懸念する声もありました(IT業界のビジネスリーダーは、他業界へ転出してもその手腕を発揮できるか)。しかし、原田氏はプロフェッショナル・マネジャーとしての力量は、業界を超えて通用することを身をもって証明したことになります。また、外資系出身者だけあって、改革を断行するには摩擦を起こすことや、批判を招くこともやむなしとの強い信念も感じられます。

元久氏は、東大文学部卒業後、山一証券、住友海上火災、松井証券と、国内系金融機関専門のキャリアです。新規事業の推進に手腕を発揮したことでは有名でしたが、組織マネジメントという面では、未知数であってのではないでしょうか。日本の大手金融機関では、40代前半で大組織の運営を任される機会もそんなになかったはずです。

また、前職の松井証券も松井道夫社長の強烈なリーダーシップで、成長してきた会社です。右腕と言われていたとしても、あくまでも松井社長の参謀としての役割に過ぎなかったと思われます。武富士でも、最初から自分の色を出すこともできなかったのでしょう。

もう1つの違いは、社内にそろえた腹心の部下の数にあります。改革のために外部から来た人間に対しては、幹部を含めて社員全員が敵となることも普通です。原田氏は、主要部門にアップル時代の部下を配置すると同時に、一般社員とコミュニケーションを持つ仕組みも積極的につくりました。独裁者という批判を恐れずに、急速の原田色を社内に浸透させたのでしょう。

一方、元久氏の方はまさに徒手空拳という感じです。松井証券と武富士とは、資本や取引関係はありません。松井証券から支援を仰ぐこともなかったはずです。うがった見方をすれば、最初から元久氏は社内浄化のシンボルとしての「お飾り」としての役割しか期待されていなかったのかもしれません。いまだに社内には武井一族の影響力は、厳然として強いものがあるようです。

これで武富士の改革は、また遠のいたような気がします。いまだに刑事被告人となった創業者一族の名前を社名に残しているのも、本当に改革するつもりがあるのか疑問に感じられる点です。単純にマーケティング的にも、今の社名はマイナスでしょう。

消費者金融の大手の社名が、アイフル、アコム、アイクと、ア行で始まるのが多いのは決して偶然ではないと思います。五十音順にしろ、アルファベット順にしろ、なるべく前に登場したいと考えた結果です。返済利息に大きな違いがない以上、借りれるならどこの会社でも構わないという人も多いものです。そうした場合、名簿の先に出ている会社が選ばれる可能性は結構高くなるはずです。


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