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ソニーのメディア・コングロマリット戦略を考えれば新CEOの人選は順当なのか

2005年03月17日

ソニー経営陣の入れ替えに関する日本のマスメディアの報道は、いまのところは「新CEO誕生」よりも「出井体制終焉」にフォーカスが当たっています。今後は、新CEOのハワード・ストリンガー氏に関する記事も徐々に増えてくることでしょう。そんな中で、映像業界出身者がソニーのトップに就くのは、ある意味当然だと考える見方もあるようです。 情報源は、『出井退場 ソニーはどこへ行くか』(日経ビジネス2005年3月14日 p.12-13)です。

「ハリウッドの世界では、今やSONYはエレクトロニクスメーカーではなくて、映画会社を表すようになった。どんなに頑張ってもハードはアジアの追い上げを受けて、いつかは汎用品と化す。パナソニックやサムソンにはないハリウッド発のブランドこそ、米国でのソニーの財産なのだ」。

出井伸之会長の後を受けて、会長兼グループCEO(最高経営責任任者)に就くハワード・ストリンガー氏は、かつて本誌にこう語ったことがある。

だからこそ、出井会長をはじめとするソニーの経営陣はここ数年、事あるごとに次のような「内外格差」を強調し、日本の報道や株価に苛立ちを募らせていた。 「投資家説明会や記者会見で欧米を回っていると、ソニーをメディア企業だととらえていることがよく分かる。エレクトロニクスの業績不振に過剰に関心が集まるのは日本だけだ」。

事実、日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)と比較した米ウォールストリート・ジャーナルをはじめ、欧米の有力メディアはおおむね好意的に今回の交代劇を受けて止めている。 出資を仰ぐなど経営てこ入れ的な意味合いがなく、通常のプロセスで日本を代表する企業のトップに外国人が就くのだから、ある意味では「ゴーンを超えた人事」とも言える。

MGMの買収により映画会社としてのソニーに地位を不動のものにしたのが、ストリンガー氏です。ソニーはもはや日本のエレクトロニクスのメーカーではなく、グローバルなメディア・コングロマリット(複合企業体)として理解されている側面があることが、この記事からもうかがえます。

なお、この記事とは全然関係ありませんが、ライブドアの堀江貴文社長が標榜しているのは、メディア・IT・フィナンシャル・コングロマリットです。世間の大方の反応を見る限り、堀江氏の発想について行けてないようですが... 現時点では、まだ「エアロスペース(宇宙旅行)」は付け加えてはいません。

話を元に戻すと、世界のメディア業界で「Made in Japan」であることは、ハンディキャップになるのでしょうか? 実は、その反対に日本製のポップカルチャーが極めて高く評価される傾向にあります。最近では、日本製であることを前面に打ち出して、「Japan Cool」ブームに便乗しようとする動きがエスカレートしています。 情報源は、『パフィー人気に見るジャパンクールの進化』(2005年2月28日 日経ビジネス, p.146-8)です。

「まいった」「助けて」「おかしいよ」。こんな日本語を主役が字幕なしに叫ぶアニメ番組が米国で大人気になっている。大貫亜美と吉村由美のデュオ「パフィー」が出演する「Hi Hi Puffy AmiYumi(ハイハイ・パフィー・アミユミ)」だ。昨年11月に米カートゥーン・ネットワークで放映が始まり、「6歳から11歳の間で4.9%」という同局始まって以来の最高視聴率を叩き出した。その後も順調に数字を伸ばし、平均で6.4%という記録的な視聴率が続いている。

パフィーのアニメのヒットが象徴するのは、日本と日本人が、米国人の立場から解釈され、彼らの手で新たな商品として創造される、という最近のトレンドだ。実はパフィーのアニメは、氷山の一角に過ぎない。

とりわけハリウッド映画にその傾向が目立っている。日本自体や日本の映画、小説を扱ったハリウッド作品の本数はこの3年で急激に増えた。例えば、昨年公開された「ラストサムライ」はトム・クルーズ主演で、渡辺謙、小雪も出演したことが話題になった。

パフィーのアニメ番組には、実物のパフィーもたびたび登場します。それも2人が日本人であることが、あからさまにわかるような設定で、日本語のセリフも珍しくありません。番組でかかるパフィーの楽曲の中にも、日本語のままで字幕がないものが多いそうです。日本製であることをセールスポイントにしようとする戦略です。

これと対象的なアプローチを取ったのが、宇多田ヒカルです。彼女の場合は英語力もネイティブと同じですし、あえて日本人であることを強くアピールことはしなかったようです。 米国の女性歌手と同じ土俵で勝負する道を選んだわけです。もちろん、それなりの勝算があってのチャレンジだったのでしょうが、結果は惨敗でした。

もしかして、母親は演歌歌手といったような生粋の「Made in Japan」を強調するプロモーション戦略をとっていたら、結果は違っていた可能性もあります。結果論になるのかもしれませんが、ここら辺の判断は難しいところです。もちろん、宇多田自身が無国籍の Utada として成功することだけを希望していたのだったとしたら、考えてもしょうがないことですが。

「Hi Hi Puffy AmiYumi」は、今年の11月に日本でも上映される予定です。これに先立って、米国から逆輸入されることになった日本人の作品があります。 情報源は、『村上春樹の短編集、米国から“逆輸入”』(2005年3月16日 日本経済新聞 朝刊  44面)です。

米国で1993年に刊行された村上春樹の短編集「象の消滅」の日本語版が、今月末に新潮社から刊行される。村上と親交のある米出版社クノップフの編集者が、英語に翻訳された村上の初期短編から17点を選んだ作品集。英語圏で評価を得て、その後の村上人気につながったという。

半ズボンが原因で両親が別れた話を女性から聞いているという設定の「レーダーホーゼン」に関しては、村上自身が英語版を元に新たに「翻訳」した。元の日本語版と比べると文体に変化がうかがえる。

この短編集が編まれたのは、村上作品がニューヨーカーなどの米誌に掲載されるなど、米国での評価が固まってきた時期に当たる。短編集のなりたちを著者自らが振り返った「まえがき」は、その辺りの事情も伝えていて興味深い。

果たして、村上作品の米国での評価は日本製だからなのでしょうか? それとも現代作家として普通に扱われての結果でしょうか? タイミングから考えると、村上作品の場合は日本製だからといった特別な要因はないようです。また、原作者が自ら「レーダーホーゼン」の英語翻訳をベースに書き直したというところも、注目です。かつて、こんな事例はあったのでしょうか? 村上ファンならずとも、逆翻訳版とオリジナル版との違いを読み比べてみたくなります。


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