BBCのネットを利用したゲリラ・マーケティング戦略の噂から考えたこと
2005年03月18日
ネットの力を利用するテレビ局の新しいマーケティング戦略の話です。今月の初めに英国国営放送BBCのドラマの初回版が、放映前にネットに流れる事件がありました。これを見たネットユーザの間での新番組に対する前評判が、爆発的に高まっているそうです。 情報源は、放送前のBBCドラマがネットに流出して注目度アップです。
期待が高まっていた英BBC放送のSFドラマ『ドクター・フー』新シリーズのパイロット版がファイル共有ネットワークに流出したが、これは話題作りのための意図的なリークだった可能性がある。口コミの力を利用する「ウイルス型広告」の手法をBBC放送に伝授したという人物が、ワイアード・ニュースに経緯を語ってくれた。
広告コンサルタント、エイサ・ベイリー氏によると、今回のリークは、BBC放送が最近学んだウイルス型広告の威力をを活用しようとしていることの明白な証拠だという。そして、BBC放送はこれを、『ブロードキャスト・アサシン』(放送の暗殺者)と呼ばれる新戦力を何人も雇い入れて教わったのだという。
ブロードキャスト・アサシンとは、エンターテインメント業界やテクノロジー業界のベテラン集団で、BBC放送のエンターテインメント部門は昨年、彼らを招いて「新技術の数々が視聴行動におよぼす影響について議論した」と、ベイリー氏は説明する。広告業界のベテランであるベイリー氏も、このグループの1員だ。同氏はまた、『ウイルス型広告協会』の創設者でもあり、「われわれは彼らにあらゆるハウツーを教え、ウイルス型広告のやり方も教えた」と語る。
ベイリー氏によると、BBC放送はブロードキャスト・アサシンに、広く番組について知ってもらうためにウイルス型広告をどう活用すればいいかを尋ねたという。
「私は彼らに、予定より前に番組を流すべきだと話した――ちょうど彼らが『ドクター・フー』でやったように。オンラインに第1話を流せば、きっと効果がある。視聴者は、『自分は他の人より先に見た』という、あの優越感を味わえる」とベイリー氏。
「(今回のリークは)絶大な効果がある。BBC放送がそんなことをするのをわれわれが見るのはこれが初めてだから、本当に感服している」とベイリー氏は語る。
この記事から考えたことは2つあります。1つは、今話題のネットとテレビのシナジーの可能性です。新番組のお試し版をネットで流して、これを少し加工した本放送はあくまでもテレビで見てもらうようにする。放送後は、放送当日に見逃した人のための再放送をネットで流す。このようなサイクルの有効性は、説明の必要もないでしょう。
2つ目は、BBC側は否定しているにもかかわれず、「意図的に」流出させたと考えられていることです。こんな噂が出てくるのは、BBCがある意味邪道に近いゲリラ型マーケティングにチャレンジするくらいに、新番組のプロモーションに真剣に取り組んでいる証拠です。
もし、日本でNHKの新番組が事前にネットに流れたとした、NHKがわざとやったと考える人は皆無でしょう。同じ公共放送でありながらも、BBCとNHKでは番組制作に対するスタンスの違いがあるようです。国営放送であるBBCの運営費用は、国民の税金でまかなわれています。国民こそがBBCの株主であり、顧客にもなります。
したがって視聴率が、直接的に株主満足度、顧客満足度を図る手段だと考えられます。BBCの番組内容にも、公共放送独特の制約があるのはNHKと同じはず。それでもBBCの番組制作姿勢には、国民の関心の応えようとするサービス精神が溢れています。
現在米国カリフォルニア州で行われているマイケル・ジャクソンの裁判では、法廷内の実況中継が禁止されています。マイケル・ジャクソンのそっくりさんを使って、法廷の模様を忠実に再現する番組を制作しているのがBBCです。この番組は英国内だけでなく、米国でも高い視聴率を稼いでいます。
一方NHKの方は、看板の大河ドラマの視聴率が低迷中です。民放のトレンディドラマを模倣した時代劇ばかりが続いては、視聴者に飽きられるのも当然です。国民の支持率の現れである視聴率が好転していない限りは、聴取料の不払い問題が解決すると期待しても無理というものです。
「BBC放送のエンターテインメント部門は昨年、彼らを招いて「新技術の数々が視聴行動におよぼす影響について議論した」という部分にも注目すべきです。例えば、渦中のフジテレビの人間は、ネット技術の専門家から新しいマーケティング手法に関するレクチャーを受けるような努力をしているのでしょうか。親密な関係をネット業界と築いていることが、広く知られていれば、ライブドアから隙を突かれる可能性も低くなっていたかもしれません。
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