フジテレビ問題に参入したソフトバンク孫正義は堀江貴文、三木谷浩史をどう見ているか
2005年03月26日
ライブドアの堀江貴文社長に関する人物評が、最新号の日経ビジネスに掲載されました。まず、政治家の堀江評からご紹介します。堀江氏と親交があるのは、栃木5区選出の自民党代議士茂木敏充(もてぎとしみつ)氏です。ホリエモンと政治家との取り合わせを意外に感じる方も多いのではないでしょうか。2人は茂木氏を囲む若手ITベンチャー起業家の会合で知り合ったそうです。 情報源は、『堀江貴文は挑発する 企業のあり方を問う"トリックスター"』(日経ビジネス 2005年3月28日号 p.160-163)です。
茂木氏と親しい経済人は茂木から堀江の持つ二面性を次のように聞かされていた。1つは旧体制に立ち向かう攻撃的な面。そして、もう1つは他の若手ベンチャー起業家に対するコンプレックスに苛(さいな)まれている面だと。オン・ザ・エッヂがサイバーエージェントから仕事の発注を請けていた関係から下請け意識があったのだろうか。また、どこか洗練された華やかさを持つ藤田(藤田晋サイバーエージェント社長)に対するコンプレックスは口に出さないだけに余計に感じられたようだ。
「時価総額でサイバー(エージェント)を抜きましたよ」堀江は笑顔で茂木に報告した。
コンプレックスと言えば、先日放送された『報道ステーション』で古館一郎が堀江氏に「コンプレックスなんてないでしょ?」と問いかけた場面がありました。その時、堀江氏は「コンプレックスはありますよ」と答えて、腹が出ているとか、脇の下が匂うこととかを挙げていました。結局、核心がそれた、たわいもない話に終わってしまいましたが。
この記事で指摘されているような、先行して成功したベンチャー起業家に対してコンプレックスを持ってるなんてことは、決して本人は認めたがらないでしょう。堀江氏はよく「ネット企業も一番以外はみんなクズ」、「目標はヤフーだけ」といったような発言をします。どんなマーケットでも最終的にリーダーならなければ、意味がないというのは一面の真実かもしれません。
しかし、この言葉の裏には「一番から下は順位をつけてるのは止めろ」というメッセージが隠されているのも明らかです。現在マスコミで、ネット企業を比較する場合は、概ねヤフーが1番、楽天が2番、ライブドアは3番という位置づけになっています。だいたい3社のポータルサイトへのアクセス数で比較される場合が多いようです。
堀江氏は、どんな指標で比べられても、楽天の下に位置づけられることがことのほか嫌いなようです。楽天や三木谷氏に関して質問を受けるたびに、意識的に無視したり、眼中にないそぶりを繰り返します。プロ野球新規参入で楽天に敗れてからというもの、この傾向は特に顕著になってきました。裏を返せば、それだけ三木谷氏に対するコンプレックスを持っているようにも映ります。だからこそ2番手以下の順位付けを拒んでいるのではないでしょうか。1番のヤフーを別格にして、それ以外は全て同列のダンゴレース状態にしておきたいのが本音だと思います。
楽天の三木谷三木谷浩史に関する、ソフトバンクの孫正義社長の人物評も日経ビジネスに載っていました。後半の堀江評と比べると、好対照です。
「三木谷の僕らにないサラリーマン生活で身につけたバランス感覚はとても真似できない。まあ、ヤフーが本気を出せば楽天なんて...」
ところが、堀江に対する人物評は極めて厳しかった。
「大体ライブドアって実体がないじゃないか。ないものをあるように見せてるだけだからね」
堀江について回る批判は、株式分割を繰り返すことによって時価総額を増やし、M&A(企業の合併・買収)を展開してきただけじゃないかというものである。孫の批判もまさにそれである。テクニカルで水脹れさせた時価総額。
「堀江は確信犯だよ。彼はそんなことすべて分かってるよ」
孫社長の堀江評には、ことのほか厳しいものがあります。しかし、冒頭の「僕ら」という表現には、サラリーマンを経ないで学生起業家としてスタートした孫正義社長が、堀江社長を自分と同類と認めて、親近感を感じているようにもとれます。そこで、孫社長の昔を少し振り返ってみることにしました。
現在孫社長が自らドライブするビジネス分野は、ソフトバンクBB、日本テレコムに代表される通信事業に絞られてきました。また、携帯電話事業への参入も表明しています。孫社長自身も成熟した大人のビジネスマンの1人として扱われて、ホークス球団を買収する意向を表明した時も、目立って異論を唱える人も現れないくらいのビッグネームになりました。現在の孫氏の姿からは、想像できないかもしれませんが、孫社長も昔は堀江社長と同じように異端児扱いを受けていた時代もあったのです。
ソフトバンクグループは、IT展示会ベンダー(ジフデービス)やメモリー・メーカー(キングストンメモリ)といった、おおよそ通信インフラビジネスとはかけ離れた企業を、手当たり次第に買いまくっていた時期もあります。時価総額を最大化を目標にした「インターネット財閥経営」を標榜して、バブル景気を謳歌した代表も、孫社長でした。
その後ITバブルがはじけると、ソフトバンクは保有する米ヤフー株の含み資産だけが頼りの、いつ潰れてもおかしくない会社と思われるようになったのです。当時は、ソフトバンクのビジネスモデルも、中身のない、胡散臭いもと酷評されていました。孫社長の人物評も、今の堀江評と同じようなものだったと思います。その孫社長が堀江社長を酷評するとは、人間変われば、変わるものですね。
ここで言いたいのは、「勝てば官軍、負ければ賊軍」ということです。堀江氏も周囲からの風評を気にする必要はありませんし、いまさらソフトムードにイメージチェンジしようとしても、土台無理でしょう。ホリエモンは、もはや勝つことでしか、自分が正しいことを証明することはできないのです。
勝ち続けることさえできれば、数年後には堀江氏も尊敬すべき大起業家と呼ばれることになる可能性がゼロとはいえません。そんな時は、「時代がホリエモンに追いついていなかっただけ」という結果論的な説明におさまるはずです。負ければ、ただの時代が生んだアダ花で終わりで、みんなすぐに忘れてしまうはずです。いまでも地道にビジネスを継続している光通信の重田康光氏がマスコミに登場する機会はほとんどありません。世間とはそんなものでしょう。
但し、勝つということは、何もニッポン放送やフジテレビを強引に手中に収めることだけではありません。ソフトバンクグループが動いた以上、ライブドアが一転して不利な立場に追いつめられたことは、間違いないでしょう。堀江氏も、大人の解決策を選ぶことも重要な選択だと考え直すべき時期に来ました。問題は、堀江氏がこの大人の解決を完全勝利と同じくらいに受け止めることができるかどうかにかかっています。
最後に、日経ビジネスの記事の引用をもう1つ。これを読むと、これまで長々と書いてきたことが、どうでもいいように思えてきます。所詮他人がホリエモンの将来を心配しても、意味がないのでしょう。
堀江と親交のある起業家の1人はニッポン放送買占めで再びメディアの寵児となった堀江からこんな話を聞かされた。堀江は言うのだった。
「ウチとか、ほかのITベンチャーバブルも持ってあと1年だよ。だからさ、バブルのうちに実体のあるものを取りに行くんだよ」実体のあるもの、それはニッポン放送であり、その先のフジテレビであることは言うまでもない。そして、堀江はニッポン放送株買収に失敗した場合のライブドアの経営危機についても、こう言ったという。
「だって、うちは実体がないんだからさ、リスクなんてないよ」
若者に対して堀江氏は、「失敗を怖れることは何もない。失敗してもゼロに戻るだけ。だから、やらないやつはバカ」みたいな発言をします。この発言そのものは、ベンチャー起業家を増やして日本経済全体を活性化するという必要性を考えれば、全く異論はありません。この記事の「だって、うちは実体がないんだからさ、リスクなんてないよ」という発言の信憑性は定かではありません。もし、本当だとすれば、上場企業のトップの言葉としては、どうかと思います。
上場企業の社長は、株主への責任があります。リスク感覚のない社長の会社の株主だけが、リスクを負わなければならないのでしょうか? まあ、現在の株主は、基本的にはハイリクス・ハイリターンを承知の上で、ライブドアの株に投資している人ばかりだとは思いますが。
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