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携帯オーディオプレーヤー市場でリーダーとなったアップルのマーケティング戦略

2005年04月14日

好調なアップルの四半期決算が発表されました。 情報源は、Appleエンジン全開、iPod好調で530%増益です。

米Appleが4月13日発表した同社第2四半期(1~3月期)決算は、売上高が前年同期比70%増の32億4000万ドル、純利益は530%増えて2億9000万ドル(1株当たり34セント)の大幅な増収増益となった。前年同期の純利益は4600万ドル(同6セント)だった。

同四半期中の出荷台数はiPodが531万1000台で1年前より558%増え、Macは107万台で43%増えた。

地域別の決算結果が明らかではないので、日本市場の状況はわかりません。しかし、アップルの日本法人を牽引する前刀禎明氏(さきとう・よしあき)氏のインタビュー記事を読む限りでも、日本での意気軒昂な様子が感じられます。情報源は、『アップル日本法人代表前刀禎明氏――iPodブーム加速確信』(2005年4月13日 日経流通新聞MJ 3面)です。

――デジタル携帯音楽プレーヤーの店頭販売シェアが二月にMD(ミニディスク)プレーヤーを逆転。iPodの白いヘッドフォンも街中で目立ちます。
「業界では汚れるからと黒が当たり前で、白はおきて破り。しかし革新性を訴えるためにもあえて白を選びました。目立つヘッドフォンはそれだけで宣伝にもなります」

――音楽配信を日本ではいつ始めますか。
「公式には年内としか言えません。ただ日本の音楽ファンが満足できる十分な楽曲数をそろえるつもり。価格も日本のユーザーが納得する設定で始めます。米国ではクレジットカードが使えない若年層でも楽しめるプリペイド方式が好評で、日本でも検討します」

――iPodで販売網も広がりましたか。
「アップルの専門コーナーがある量販店は全国で約460店。このほかにiPodを販売するレコード店などが約230店あります。これまでは既存の取引先にいかに量を届けるかに力を割いてきたが、今年は新たな販路を開拓する年。雑貨を扱う西武百貨店系のロフトやHMVといったレコード店、総合スーパーの家電売り場にも広がりつつあります」

「大型直営店で政令指定都市を押さえていく感覚ですが、ディズニーストアのように大量に出すつもりはない。日本の消費者は飽きやすいからです。米国にはスクール機能などを省いたミニストアもある。日本でも展開する可能性はあります」

続いて、アップルに対抗しようとする他社のマーケティング戦略もご紹介します。 情報源は、『アップルひとかじり?――アイリバー、広告戦略を強化』(2005年4月11日 日経産業新聞 5面)です。

アップルを食う?――。デジタル携帯オーディオで攻勢をかける韓国レインコムの日本法人、アイリバー・ジャパン(東京・千代田)が広告戦略を強化している。東京中心に交通広告を展開し、雑誌広告も拡大する。今年2、3月には同社初のテレビCMを実施するなど、一般認知度の向上に注力している。

今月から首都圏では小田急、東急、東京メトロなどの沿線の主要各駅、関西では阪急、JRの主要各駅の構内に企業広告を掲示し始めた。雑誌広告も情報・スポーツ系雑誌を中心に大幅に増やす。

広告の構図は米アップルコンピュータのアイポッドを意識。リンゴをかじっている人の下には「Sweeter one」(こちらの方が甘い=いいよ)との文字が入っている。一見して「打倒アイポッド」ののろしともとれる。

この広告は、他社製品との性能比較等を訴えるものではないので、純粋な意味での比較広告とは言えません。しかし、このような広告が現れるようになったことは、もはやアップルがマーケット・リーダーとして追われる立場にあることを如実に物語るものでしょう。

数年前までパソコン市場で追う立場にあったアップルのマーケティング手法は、他社を攻撃することを得意としていました。時代が変われば、変わるものです。例えば、インテルのシンボルであったバニーマンを燃やしたCM(マック対ウィンドウズ、ユーザーどうしはひとまず休戦(上)で、物議をかもしたこともありました。

それ以外にも、インテルのCPUをカタツムリに例えて、そのスピードの遅さをあげつらうようなCMもありました。チャレンジャーとしては当然ともいえる戦略ですが、かなり危ない橋を渡った感じがします。もう一方のブランドの雄であるソニーに対しては、単純に敵意を露にするというよりは、その存在に対してある程度の敬意を払っている姿もうかがえます。以下は、「Macworld Tokyo 2001」基調講演でのジョブズCEOのの言葉です。

僕達はソニーが大好きだ。しかしPowerBook G4のスクリーンはVaioの12.1インチよりも52%大きい15.2インチであり、さらに匡体の厚みについてもPBG4(26mm)はVaio (29mm)よりも薄く、DVDドライブの搭載やより駆動時間の長いバッテリー、ワイヤレスネットワークへの対応もしている。私達はソニーを尊敬し、敬愛している。新しいPoweBookは明確にソニーをターゲットに開発した物だ。

携帯オーディオプレイヤー市場では、今度はソニーのウォークマンが iPod をターゲットとして攻める側に立場を替えました。そんな全ての競合他社の攻撃目標として狙われるようになった iPod の将来は磐石なのでしょうか? 売り場の最前線の声を拾ってみます。情報源は『デジタル携帯プレーヤー――iPod指名買い約6割』(2005年4月13日 日経産業新聞 21面)で、引用されているのはPCデポ港北本店の樋口朋芳ストアサブマネージャーのコメントです。

「入学シーズンを迎え、お祝いに携帯デジタル音楽プレーヤーを購入する家族連れが増えている。MD(ミニディスク)プレーヤーと違い、移動中の振動による音飛びがない点が好まれている。断トツに売れているのは米アップルコンピュータのiPodシリーズ。扱いやすさやデザインが評価され、購入者の約6割が指名買いで買っている」

「特に人気が高いのは最大1000曲を記憶できる『iPodミニ』(メモリー4ギガバイト、店頭価格ケース込み2万1800円)。4色から選べるのが女性を中心に受けている。フラッシュメモリー内蔵の『iPodシャッフル』(同512メガバイト、1万970円)は高校生の購入が目立つ」

「一方30代以上の男性には自社ブランド品の『musicaUNO』(同256メガバイト)が、9970円という値段もあって人気だ」

現在のiPod人気を支えているのは、女性や若者層にあることが分かります。決して従来からのアップルのパソコンのコア・ユーザ層に限定されているわけではありません。このユーザ層の拡大こそが、iPod がアップルブランドにもたらした最大の貢献でしょう。

iPod で新規開拓したユーザを自社のパソコンユーザにスイッチさせることも、アップルの重要なマーケティングの戦略目標の1つとなるはずです。女性や10代の若者は、パソコンのコア・ユーザではないので、想像するほど簡単なものではないでしょう。

一方、この記事で注目すべきは、30代以上の男性が iPod ではなく、PCデポのストアブランド製品を選んでいる点です(ストア側の発言ですので、ある程度割り引いて考えることも必要でしょうが)。この層はデジタル機器を日常道具として使いこなす、パソコンのコアユーザと考えられます。

敢えて大胆に推論すれば、パソコンのコアユーザ層には、iPod のファッション性やブランド力はあまり影響を及ぼしていないのではないかという仮説が考えられます。この点にもアップルの今後の課題が見えるような気がします。

さらに、今後アップルが携帯オーディオプレヤー市場で考えていくべき課題は、他社からマーケトシェアを奪うことと同時に、マーケットのパイそのものをいかに拡大していくかにあります。後者は、アップルがマーケットリーダーになったからこそ考えるべき課題といえるものです。

日本でもダウンロードサービス早期実現等、新たなマーケット拡大策がなければ、近い将来市場は飽和状態になるでしょう。新しいマーケットの拡大がなければ、携帯オーディオプレーヤーの普及率も早晩頭打ちになるはずです。そして、製品もコモディティ化して、ブランド力が効かない市場に変化します。現在のパソコン・マーケットのように。

成熟化したマーケットでの業界リーダーの古典的な戦略は、例えマイナーチェンジであれ新製品を矢継ぎ早に投入して、市場を活性化することです。元来、アップルの製品のライフサイクルは、他のメーカーに比べれば長いものになっていました。本当に画期的な新機構が追加できなければ、新製品を投入しないという正しい思想に基づくものともいえます。

しかし、市場リーダーとしてはマーケットの活性化を最優先として、短いプロダクトサイクルで製品を投入する戦略への転換を考えるべきかもしれません。果たして、リーダーとしてのアップルに戦略転換が起こるのか注目したいと思います。


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