ボストンコンサルティンググループはいかにして現在の地位を獲得したのか
2005年04月21日
現在日本の戦略系コンサルティングファームの両雄といえば、マッキンゼーとボストンコンサルティンググループ(BCG)です。マッキンゼーが日本に事務所を開設したの1970年代の初めです。一方、BCGの日本事務所設置は1960年代に遡りますので、日本進出そのものはBCGの方が先行していたことになります。 しかし、その後はスター・コンサルタントの大前研一氏の活躍もあり、両社の日本でのプレゼンスには、大きな開きが生まれてくことになります。
業界トップに大きく水をあけられたBCGは、どのような戦略を実践することで、このような状況を打開し現在の地位を獲得することができたのでしょうか。BCG出身で、現在は百年コンサルティングの代表である、鈴木貴博氏が当時の戦略を解説しています。 情報源は、鈴木貴博のビジネス散歩『ボストンコンサルティンググループが勝ち上がった理由』です。
1987年当時の日本における他の外資系コンサルティングファームは、30人から60人といった規模であった。この規模というのは、欧米の外資系大手のクライアントの日本市場の調査プロジェクトでほそぼそと食べていきながら、あとは本社の赤字補填でなんとか現地組織を維持できる水準であって、多くのファームはなかなかその水準から抜け出すことができずにいる。
ようやく「戦略」が商品になる世の中になっても、日本の大企業クライアントはまずマッキンゼーを選ぼうとする。僕たちが戦っていたのは、まさにそういう競争環境のさなかであった。
業界で圧倒的なナンバーワン企業が中心に存在し、その周りで8社前後の企業が他の市場を食いあっている。我々はどのようなうたい文句でクライアントに働きかけるべきだろうか。
コンサルティング業界トップのマッキンゼーの強みは「論理的な分析から導かれる高品質な結論」「グローバルなナレッジ」「強力なマッキンゼーカルチャー」といったものである。よく言えば世界最高の結論をマッキンゼーが提唱するというイメージだ。
その一方で松永真理氏の著書『iモード事件』にも書かれているとおり、マッキンゼーは顧客と対立することを自分たちの存在意義であると定義するほど自尊心の強い集団でもある。このあたりの要素の裏返しがマーケティングの視点でとらえた「対抗馬のベネフィット」となる。
つまり、「論理を踏まえた上で、その枠組みを超えたクリエイティブな発想」「日本独特の視点」「顧客の組織風土の尊重」そして「顧客との対立点を侃々諤々の議論の末に昇華させていく粘り強いコミュニケーション力」――といったベネフィットが対抗馬にとっての最高の武器になる。
ボストンコンサルティングが選択したのはまさにこのような「商品設計」であった。ベタープロダクト戦略ではなく、完璧な差別化戦略と言ってよい。そしてこの戦略は、トップブランドとの取引を選択しない顧客のニーズに見事に適合したのだった。
戦略論にはジレンマがあって、優秀な人材が市場を分析すればどうしても同じ機会を見つけやすくなる。戦略とは差別化されていれば有効なのだが、他社も皆同じ戦略を実施していれば結局は混戦になってしまう。
マッキンゼーと同じような戦略を提言するコンサルティングファームよりも、マッキンゼー的ではないアイデアが出てくるファームを雇った方がよい。ある業界でマッキンゼーがコンサルティングを行うと、その業界の他の大企業トップはそう考えるようになる。
その結果、日本のコンサルティング市場で何が起こったか。
ボストンコンサルティングが他の2番手ファームたちの潜在顧客をどんどん奪っていったのである。マッキンゼーの対極に自分たちを位置づけたことで、マッキンゼー以外のすべての競争相手からビジネスチャンスを獲得できたのだ。
こうして、1987年に1強多弱型だった日本の戦略系コンサルティングファーム市場は、1990年代の後半には2強型市場へと構造を変えていくことになった。
上の話をまとめると、2番手(チャレンジャー)の戦略の要諦は次のようになると思います。
- 最初はリーダーとの直接対決は避けるのが基本。
- とりあえず、2番手グループの中でのトップを目指す。ターゲットはリーダーの既存顧客ではなく、リーダーに不満があるため2番手グループを選択している(しそうな)層に絞る。
- リーダーが訴求しない顧客にとっての価値を差別化要因とする。
- 2番手グループのトップの地位を確保した後は、満を持してリーダーに全面対決を挑む。今度はリーダーと同じ土俵で戦うことになるので、訴求価値にもリーダーと同じものを含めるように変更する。
戦略コンサルティングファームだけあって、理にかなった戦略です。 少しの論理的思考力と迅速な行動力さえあれば、インターネットは宝の山かもしれないでも述べましたが、大事なのは考えた結果をいかにして実行に移すかにあります。それでは、BCGはこの戦略をどのように実行していったのでしょうか? 情報源は、『強引な電話――カプコン社長辻本憲三氏』(2005年4月21日 日本経済新聞 朝刊 44面)です。
1本の電話が始まりだった。「ボストンコンサルティンググループの堀紘一です。一度お会いできませんか──」。
1990年、当社が店頭公開をはたして間もないころのこと。仕事に追われていた私は、突然の電話に一度は断ろうと思った。しかし「会ってみなければ分からないでしょう」との言葉に気押されて、お会いすることになった。なかなか強引な人という印象だったが、これがきっかけで94年からコンサルティングをお願いすることになった。
戦略コンサルティングという性格上、重要になるのがトップ・セールスです。この記事だけでは事前に事務レベルである程度の合意があったのかどうかは、定かではありません。しかし、ターゲットとした会社を攻略するために、いきなり堀氏がピンポイントで辻本社長に電話をしたのではないかと想像します。
BCGがカプコンがターゲットに選んだのには、店頭公開直後という事情があったからだと思います。株式を公開することは、企業にとって最もわかりやすい目標の1つです。その目標に向けて全社一丸になって邁進します。その反動として、具体的な目標を達成してしまった公開直後の企業は、ちょっと目標喪失状態に陥るものです。
極端な話では、公開で一気に大金を手に入れた創業者が社業を忘れて、遊興にうつつを抜かすようになってしまい、結局崩壊してしまったという例も珍しくありません。そのような状況に陥る前に、新たな目標となる企業ビジョン構築のために、コンサルティングファームの支援を得たいと考える経営者がいたとしても不思議ではありません。
私が注目したもう1つの点は、経営者に対する心理的な効果です。 株式を公開して戦略コンサルタントから声がかかるようになれば、大企業として一人前という考え方もあります。経営者として戦略コンサルタントから面談を申し込まれれば、まんざら悪い気持ちはしないのではないでしょうか。
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ちょっと余分な話が多い気もしますが、面白く読めました


