グローバルダイニング新川義弘 元COO氏の退任は創業社長のNo.2の宿命か?
2005年07月27日
外食業関係者に人気のブログ「シンカワさんのサービスマン日記」の元グローバルダイニング(GD)社の新川義弘(しんかわよしひろ)氏のインタビュー記事が日経流通新聞に掲載されました。2002年の日米首脳会議が「権八」で行なわれた際に、ブッシュ大統領にサービスしたのが新川氏で、「サービスマンの神様」とも呼ばれています。
GD社の長谷川耕造社長の右腕として知られた新川COOの突然の退社は、業界関係社には意外と受けとめられたようです。なお同氏がGD社を退任した6月末が、ブログへの最終投稿日となりました。
情報源は、『グローバルダイニング新川義弘 前COOに聞く――人材育成巡り社長と溝』(2005年7月25日 日経流通新聞MJ 23面)です。
新川氏略歴 (昭57年)福島商業高卒、新宿東京会館(現ダイナック)入社。84年長谷川実業(現グローバルダイニング)に移り、88年取締役に就任した。日米首脳が会食した「権八」のほか、「モンスーンカフェ」などグローバルダイニングの店舗運営を統括した。ローリング・ストーンズのミック・ジャガーを接客したこともある。
――6月にグローバルダイニングを退任した。
「ベンチャー企業に生きる人間の選択は創業者の後を継ぐか、専門職を極めるか、さもなければ次の道を探る、という3通り。私は42歳。40代後半になると起業精神は急激に薄れる。グローバルダイニングでは数年後に社長になれたとしても、結局は長谷川耕造社長の会社。青臭いかもしれないが、真っ白なキャンバスに絵を描いてみたかった」
起業への熱い思いと、偉大な創業者が作った会社を引き継くことの「不自由さ」が、退任の理由です。これは、創業社長に仕えるNo.2が抱く共通の葛藤、いわば「No.2のジレンマ」だと思います。玉塚元一社長を解任して自ら社長に復帰する人事を発表した柳井正会長のファーストリテイリング(FR)も、事情は同じでしょう。
そのFRでも全く同じような話があったからです。澤田貴司副社長(当時、現キアコン社長)が、柳井正会長からの社長就任要請を断った理由として、次のように語っています(『カネボウ小城氏、キアコン澤田氏 No.2からトップへの選択は似て非なるもの』)。
「ユニクロはやはり柳井さんの会社。自分が社長になっても、柳井さんはいろいろと心配して口出しするだろう。これは自然なことだけれども、自分は嫌な顔をするだろうし、それを見た社員に悪影響を与える」。もう1つ、起業に対する思いも社長受諾を躊躇させた。「米スターバックス創業者のハワード・シュルツ氏らに憧れていた。ユニクロの社長を引き受けたら、起業は諦めなければいけないとも思った」。
結局、澤田氏は、手を伸ばせば届くところにある急成長企業のイスを蹴ってまで、ゼロからの出発を選んだ。「自分がやりたいようにやりたい」。澤田氏自身の気持ちの中で妥協するわけにはいかなかったのだろう。独立した今、一番楽しいのは「すべて自分で決定できる醍醐味」と澤田氏。
ユニクロ社長の椅子を蹴ってキアコンを創業した澤田氏とは違って、新川氏は起業の道を選びませんでした。そのあたりの事情にはこう答えています。
――だが起業せずにリンク・ワンに転身する。
「外食の人材教育に関心があった。グローバルダイニングには19歳で皿洗いから入り、25歳で役員になって、COOまでやらせてもらえた。外食に関することはほぼすべてやったつもり。この経験を伝えることは意義があると思った。しかし、自分には教育ビジネスのノウハウはない。ある時リンク・ワンの役員と一緒の席になり、外食の人材を育成する『フードビジネスアカデミー』(仮称)を設立する構想を聞き、お世話になることにした」
やはり長谷川社長との間には、大きな意見の食い違いがあったようです。
――グローバルダイニングで人材教育はできなかったのか。
「あそこは徹底した実力主義。やればやっただけの仕事とお金をもらえる。ところが最近は成長して一つ上の仕事を任された人が壁にぶつかって、そのまま辞めてしまうことが多くなった」「長谷川社長は人材がいなければ外から能力のある人を連れてくればよいという考え方で、教育にはお金をかけない。私は甘いのかもしれないが企業は人だと考えている。必要以上に人材が辞めるようになり、このままでは弾が尽きてしまうと感じた。長谷川社長とはこの点で食い違うことが多かった」
グローバルダイニングの強さの基本である「完全実力主義」に正面から意を唱えています。No.2とはいえ、自分の実績に自信があるからこその発言でしょう。
――長谷川社長にはどう話したのか。
「5月17日の朝、30分時間をくださいと切り出した。『会社を辞めたい』と伝えたら、しばらく意味がわからないといったように驚かれ、しばらく沈黙が続いた。21年間一緒にいて何度もケンカもしたけれど、このときほどつらい時はなかった。やがて『新ちゃん、不満があったの?』と。慰留してもらったが、最後は『新ちゃんが決めたのなら仕方がない』と握手して別れた」
最終的にはしこりを残すことなく退社しています。これは新川氏が人材育成というGD社とは別の分野を選んだことが無関係であるとは思えません。もし、同氏がGD社の競争相手のなるような新たなレストランを立ちあげるとしたら、こうすんなりとはいかなかったのではないでしょうか?
本当は自分のビジョンを実現するために、新しい店舗をオープンしてくれた方が面白いことになったはずです。長谷川氏の「完全実力主義」と新川氏の「人材教育主義」のどちらが正しいかを、実際の店舗オペレーションを通じて証明して欲しかったのですが....
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