クリスタル、グローバリー 知名度が上がった企業に相次ぐ不祥事
2005年08月02日
私が人材派遣のクリスタルグループの存在を知ったきっかけは、エレベーターの中で大勢の人間が「クリスタル」と合唱しているテレビCMでした(アピオス、クリスタルなど、ブランド名しか訴求しないテレビCMの効果)。最近はCMも見なくなって、それ以来全く忘れてしまっていたクリスタルですが、今週発売の週刊ダイヤモンドに記事が出ました。極めて不名誉な内容の記事です。あんなCMさえやらなければ見逃してあげていたのに、とんだマイナスのCM効果となってしまいました。 情報源は、『前代未聞の行政処分が下った人材ビジネス最大手の不祥事』(週刊ダイヤモンド 2005年8月6日号 20ページ)です。
人材派遣・業務請負業界では、前代未聞の行政処分である。7月末、愛知労働局がクリスタルグループの中核企業に対して、事業停止命令と事業改善命令を発動したのだ。人材派遣業者に対して同時に2つの行政処分が下るのは初のケースとなる。
クリスタルグループは人材派遣・業務請負業界の事実上の最大手。株式未公開ゆえに経営状況は不透明だが、同社のホームページによれば、全国247のグループ会社を抱え、グループ合計売上高は5387億円、従業員は13万5000人に達する。自ら「世界トップファイブの人材ビジネス会社」とうたう巨大企業だ。
人材派遣といえば、パソナ、スタッフサービス、テンプスタッフあたりが有名です。それらよりもクリスタルの方が規模的には大きいとは意外です。おそらく私に馴染みのない事務系人材派遣以外の分野、つまり現業系のスタッフのシェアが高いのでしょう。今回の不祥事も現業系(いわゆるガテン系)の派遣に関するものでした。
行政処分に至る経緯はこうだ。クリスタルグループの1社であるクリスタルプロダクツなる会社が、静岡県内の冷蔵倉庫会社に労働者を派遣し、運転資格がないにもかかわらずフォークリフトの運転業務に就かせた。昨年9月、その労働者がフォークリフトの運転作業中に荷崩れを起こし、下敷きとなって死亡した。クリスタルプロダクツは書類送検され、今年5月9日に労働安全衛生法違反で罰金20万円の略式命令が下された。
派遣法によれば、刑が確定した時点で、一定の手続きを経て派遣許可は取り消される。ところが、略式命令の一週間前の5月2日、クリスタルプロダクツは、同じクリスタルグループのシースタイルに吸収合併されたため、派遣許可の取り消し処分を免れた。こうした「行政処分逃れ」の事実を重く見た労働局は、存続会社となったシースタイルに対し、事業停止命令を下したわけだ。ちなみに、事業停止命令は非常に厳しい措置で、過去1件しかない。
無資格者を派遣して、それが発覚すれば行政処分回避のために合併を工作したところから考えると、確信犯的に違法行為を働いているアクドイ会社です。さらに死亡した労働者を派遣したクリスタルプロダクツの沼津営業所は、労働者派遣を行なうための届け出すらしていなかったことも、明らかになっています。これほど遵法精神がない前近代的な会社は、珍しいと言ってもいいでしょう。
そのようなアウトローな会社が、テレビCMを使って企業イメージのアップを図ろうとしても所詮無駄でしかありません。金と時間を投じて築いてきた企業イメージが、1つの不祥事によってもろくも崩れ去ってしまった例は、数多くあります。次に紹介する話も似たようなものです(商取法違反:「グローバリー」本支社を捜索 愛知県警)。
国に対して取引に関する虚偽の報告をしたなどとして、愛知県警生活経済課などは15日、商品先物取引大手「グローバリー」(山田保弘社長)の名古屋市東区にある本社と、東京、大阪、札幌の3支社を商品取引所法違反容疑(虚偽報告など)で家宅捜索した。同社を巡っては、顧客に「取引を手じまい出来ない」などとうそを言って取引を続け、手数料を稼ぐなど強引な手法が問題になった。
調べでは、グローバリーは04年11月22日、経済産業省と農水省が取引の内容に関して出した報告徴収命令に対し、虚偽の報告をした疑いが持たれている。社員の親族名義で取引を行って上げた利益を、顧客とのトラブル解決金に充てた疑いがあり、実際は自己取引に当たるにもかかわらず、顧客の取引と偽った帳簿を提出するなどしていた。
また、03年7月と04年4月ごろ、手数料を稼ぐために、取引の終了を申し出た複数の顧客に対して終了できないとうそをつき、取引を続行した疑いも持たれている。
同社の悪辣な勧誘手口と取引実態に関しては、『商品先物取引大手に営業停止3カ月-「客食い散らし」に制裁! グローバリーの崖っ縁』(週刊東洋経済 2005年7月30日号 52~54ページ)にも詳しく載っています。
グローバリーはクリスタルと違って上場企業です。しかし上場企業とは言っても、名証2部の商品先物取引業者でしかありません。普通であれば、その程度の会社の名前を知っている人は少ないはずです。グローバリーの社名が知られているのは、アテネ五輪女子マラソンで金メダルを取った野口みずき選手が所属している会社だからです。
野口選手の活躍によって、知名度だけは全国区になった会社です。これもイメージだけが先行して、企業の体質は昔ながらの悪質商品先物取引業界の典型そのものです。今の世の中、金さえあればテレビCMや、スポーツ選手のパトロンになることは可能です。逆に言えば、そういった手法だけで有名になっただけの企業と取引を開始する場合は、事前に業務実態を十分に調べることが必要でしょう。
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