加速したかのように見えるネットと放送の融合も内情はお粗末そのもの
2005年08月03日
7月12日にフジテレビがネット配信開始を発表すると、その1週間後には日本テレビが、さらに25日にはテレビ朝日も追随し、一気に放送とネットの融合が加速化するような動きが見られ始めました。こうも矢継ぎ早に発表されると、各社の事業計画にどのような違いがあるのか、戸惑ってしまうところもあるくらいです。局ごとのプランの詳細に関しては、どうなる!テレビ局の映像配信をご覧ください。
各社が堰を切ったようにネット配信への積極姿勢を急に見せるようなった背景には、業界横並び意識が働いていることは確かでしょう。しかし今回はそれだけではなく、行政側の強い働きかけがあったことも明らかになりました。 情報源は、『民放各社ネット参入の背後に総務省vs経済産業省の争い』(週刊ダイヤモンド 2005年8月6日 週刊ダイヤモンド 22ページ)です。
このような動きが続く背景には、総務省から民放各社に対する圧力がある。「総務省から民放トップに対し、ネット配信実現への強い“要請”があり、各社はとりあえず格好をつける必要があった」(業界関係者)。
では総務省はなぜネット配信を急ぐのか。それは、規制改革・民間開放推進会議(宮内義彦議長)の動きを警戒しているためだ。経済産業省の影響下にある同会議では、放送分野の規制緩和を求める意見が強い。総務省としては、同会議主導で放送局免許の開放や、IP(インターネットプロトコル)放送、放送の水平分離(放送と制作の分離)といった議論が行なわれ、主導権が奪われることを避けたい。そこで、現行制度下でもすでに放送と通信の融合が進んでいることをアピールする必要があったのだ。
総務省対経産省の縄張り争いの結果とは、情けない話です。このまま両省の争いが続いたままでは、日本として一貫性のある放送と通信の融合ビジョンがまとまるとも思えません。それでは、省庁間の利害の問題を超えて統一した国家ビジョンを考える場はないのでしょうか?
そのような問題を扱うために存在するのが、両省よりも一段高い位置にある内閣府直轄のIT戦略本部です。しかし、IT戦略本部の方もどうも望み薄のというのが現状です。 情報源は、『IT戦略本部、新メンバーが始動――高い旗印なく薄らぐ存在感』(日経産業新聞 2005年8月2日 24面)です。
5年以内に世界最先端のIT(情報技術)国家になる――。こんなかけ声で2001年に発足した政府の「IT戦略本部」の影がすっかり薄くなった。1日、5月に就任した第三次メンバーによる2度目の会合が開かれたが、発足時の活気はない。
01年の発足時、ブロードバンドのインフラ整備という明確な目標があった。ブロードバンドは普及したが、その後同本部の存在感は薄れていく。01年半ばにはインフラ整備に次ぐ第二弾として、放送会社やNTTの分割を持ち出すが、不発に終わる。設備保有とコンテンツ(情報の内容)制作の機能別に会社を分け、コンテンツの競争を促す狙いがあったが放送各社などの猛反発にあった。
既に2001年の段階で、放送局の抱えるコンテンツ利用法にも手をつけようと考えていたようですが、局側の反発にあってあえなく取り下げになっています。国家の威信をかけて「IT先進国を目指す」という戦略本部の看板が泣けます。
こんなていたらくでは、ますます諸外国との差が開くばかりでしょう。例えば、米国ではまた一歩ネットと放送の融合が進んでいます(米CNN.comと米ABC Newsが、米Yahoo!のニュース・サイトにビデオ・コンテンツを提供)。
米Yahoo!は米国時間8月1日,同社のニュース・サイト「Yahoo! News」へのコンテンツ提供に関して,米CNN.comと米ABC Newsと提携したことを発表した。Yahoo!ユーザーは今年9月より,CNN.comのビデオ・クリップやABC Newsによるオンデマンドのビデオ・コンテンツをYahoo! Newsで無料で閲覧できるようになる。
Yahoo!社Content Operations担当副社長のScott Moore氏は,「ビデオ・コンテンツはインターネットで配信するニュースにおいて,ますます重要な要素になりつつある。CNN.comとABC Newsとの提携は,当社のニュース・サイトのビデオ・コンテンツを拡充するため」と説明する。
日本のヤフーも、民放各社との具体的な交渉に入っているのでしょうか? 政府に期待できない以上、民間トップ企業のリーダーシップに頼るしかありません。それでも駄目なら、お決まりの外圧に登場願うしかないのでしょうか?
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