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孫社長に比べれば三木谷社長のキャリアは平凡に見えるかもしれないが...

2005年08月06日

最近のIT企業の社長は、ブログや書籍を通して自らの考えを伝えることに一様に積極的です。ライブドアの堀江貴文氏、サイバーエージェントの藤田晋氏、GMOインターネットの熊谷正寿氏あたりが、このタイプの社長の代表格でしょう。社長ブログや社長本を読めば、これらの社長の生き様もある程度把握することができます。

一方、同じIT企業の社長といっても、自らを語ることをよしとしない社長もいます。こちらの代表が楽天の三木谷浩史社長です。その三木谷社長の人物像に迫ろうとした『“教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実』を著したのが、ジャーナリストの児玉博氏です。

児玉氏は『幻想曲 孫正義とソフトバンクの過去・今・未来』で、もはやIT業界を超えた大経営者となったソフトバンクの孫正義社長の生き様を独自の視点から分析しています。その児玉氏が、日経ビジネスのインタビューで、孫氏と三木谷氏の生い立ちの違いについて語っています。 情報源は、『起業家は平凡を目指す』(日経ビジネス 2005年8月8日-15日号 75ページ)です。

在日韓国人3世として生を受け、佐賀県鳥栖市の「無番地」から成り上がった孫社長と、ベンチャー起業家でありながら、どこかエスタブリッシュメントの雰囲気を漂わせる三木谷社長。この2人の生き方はコインの裏表のように対照的です。

孫社長の半生は波瀾万丈であり、強い物語性があります。だが、それゆえに、孫社長の生き方をほかの人が真似することはできない。「経営者」という以前に、「革命家」である彼の足跡は、後に続く人々のロールモデルにはなり得ない。

──逆に、三木谷社長はロールモデルになり得る、と。

父親が有名な経済学者というのは特殊ですが、地方の公立高校を卒業し、1浪後に一橋大学に入学、そして日本興業銀行に入行する──という彼のキャリアは。「1億総中流」と言われた日本人の常識から外れたものではない。

また、三木谷社長が旧日本興業銀行を辞め、楽天を創業した背景には、90年代の構造改革や金融改革、IT革命がありました。三木谷社長やその後に続く起業家は、制度改革の落とし子。ある意味では、孫社長が破壊した秩序の後を歩んでいる。

もちろん、三木谷社長も孫社長に劣らぬ経営者です。ただ、孫社長に比べれば、三木谷社長の人生の方が平凡なだけに実現可能の見える。雑誌「小学六年生」が三木谷社長を特集したのはその象徴ではないでしょうか。起業家を目指す子供たちのモデルは破壊者、孫社長ではなく、三木谷社長なのです。孫社長の役回りには皮肉なものを感じますね。

確かに孫氏のバックグラウンドに比べれば、三木谷氏のキャリアは平凡そうに見えて、迫力に欠ける印象を与えるのも事実でしょう。平凡に見えるのは、三木谷氏のキャリアが他人にも理解しやすいからです。また、三木谷氏は言動も至極まともなので、ライバルのホリエモンと比較して、マスコミネタになる機会も少なくなります。

しかし、マスコミウケがいまひとつだとしても、他人から理解されやすいということは、ビジネスの世界では大きな長所であることに違いありません。他人にとってわかりやすいことは、安心感につながり、ビジネスパートーナーとしての信頼感を与えることになるからです。例えば、堀江社長が提唱していたネットとテレビとの連動についても、楽天は着々と布石を打っています。 情報源は、フジテレビが楽天に浮気?--番組とネット販売を連動した初コラボです。

楽天とフジテレビジョンは8月4日、テレビ番組とインターネットをリンクさせた初のコラボレーション企画を発表した。

8月29日深夜に放送するバラエティ番組「贈来門!しあわせ本舗」の公式サイトをフジテレビと楽天でそれぞれ8月4日から開設すると共に、楽天広場に専用のブログサイト「プレゼント座談会」も開設した。

楽天とフジテレビは、「2004年末から連動企画を検討してきたが、ようやく実現に至った」とし、「今回の単発番組を始めとして、今後もテレビとネットの融合の可能性に向けて両社で取り組んでいきたい」としている。

この一方で、注目を集めたフジテレビとライブドアの騒動の後、2005年5月から同2社は業務提携委員会で話を進めており、アイデアベースではいろいろと出ているようだが、具体的な提携や協力して実現した企画などはまだ1つもない

フジテレビが7月15日から開始した有料のオンデマンド動画配信サービス「フジテレビ On Demand」でも、ライブドアは影を潜めており、「ネットとテレビの連動」や「フジテレビとの協力」という意味で、ライブドアは楽天に先を越されたかたちだ。

堀江社長も25時間テレビに出演したりして、フジテレビと関係が親密であることを対外的に示しています(ホリエモンが25時間テレビで走ったのは、ライブドアの知名度アップのため?)。しかし、これはフジテレビが人気者の堀江社長をタレントして出演させただけの話でしょう。スポット的に視聴率アップを狙ったフジの作戦にほかなりません。

一方、ビジネスパートナーとしてフジテレビが選んだのが、三木谷社長の楽天です。長期的な連携強化のベースとなる信頼感という点では、三木谷氏の方に軍配があがるからです。 フジテレビもちゃんとその点を見極めて、両者を使いわけているわけです。したたかにも見えるフジのやり方も、ビジネス戦略としてはしごく当然の発想でしょう。

最後に冒頭の話に戻ります。社長ブログや社長本を書いている人の場合は、孫氏や三木谷氏のように第三者のジャーナリストが掘り下げた記事を書くケースを少ないようです。あっても、せいぜい週刊誌の特集どまりで、1人だけで1冊の本ができるほどの内容の濃いものはありません。その理由には、これらの社長が自分の意見を積極的に発表しているので、第三者の著作を必要としないということも、もちろん考えられます。

社長ブログや社長本に積極的に取り組むこと自体を否定するつもりはありません。しかし、ジャーナリストが1冊の本を書きたくなるようになって初めて、一流の経営者の仲間入りという見方もできるように思います。今の時代にはこういう考え方は古いのかも知れませんが...

例えば、先ごろ亡くなったヤマト運輸創業者の小倉昌男氏は、出版社からの再三にわたる要請を固辞した後に、やっと最初の本を書いたという逸話を聞いたことがあります。まあ、露出度が増えればそれだけレア感がなくなるというのは、経営者も例外にはならないということだけの話かもしれませんが...


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