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公職選挙法の「グレーゾーン」を狙わないホリエモンは本気なのか?

2005年08月31日

衆議院総選挙関連の話題に力を入れている企業の1つが、検索エンジンサービスのテクノラティジャパンです。そのテクノラティが、8月15日から29日までの間に日本国内の約70万のブログで投稿された記事を分析した結果を発表しました(テクノラティジャパン、第2回選挙関連ブログ調査)。調査結果の中で目を引いたのが『注目候補者別ブログ記事数推移』です。

注目候補者別に見ると、佐藤ゆかり氏に関するブログがテレビ出演などのあった27日から急増し、同日午前10時時点での記事数は1768件と、前日の 1062件から増加し、小池百合子氏の1474件を上回った。同時点での野田聖子氏についての記事数は2501件だった。

29日午前10時現在の注目候補者別のブログ記事数は、堀江貴文氏(「ホリエモン」AND「出馬」、「堀江貴文」AND「出馬」の検索ヒット数の合計)が6072件、亀井静香氏が4746件、野田聖子氏が2680件、佐藤ゆかり氏が1914件、小池百合子氏が1519件となっている。

私が、ネット上で佐藤候補の人気の拡大を予感し、『人気急上昇中の刺客候補佐藤ゆかり氏のイメージを勝手に分析する』を投稿したのが、26日の午前2時です。その人気が、27日のテレビ出演をきっかけに加速されたのでしょう。ネットで話題が先行して、それをテレビが取り上げるといった典型的な情報伝播パターンとなります。なお、20年前のヘアースタイル以外にこれといった話題のない片山さつき氏は、完全に圏外ですね。

さて本日30日に衆院選挙も公示されました。投票日の9月11日に向けて候補者別の投稿数はどのように変化してくのでしょうか? ここで考えなくてはいけないのは、公職選挙法の存在です。同法によれば、一般の個人や団体によるHP上での特定候補者の紹介や政策分析は、公示前までであれば原則自由です。それが公示後は「合法か違法かハッキリしない」グレーに変わります。

それで本当に個人のブロガーが、特定候補や政党に関する投稿を自粛するようになるのでしょうか? 答えはまずNOでしょうね。私を含めた大多数の人が無視して書き続けることは、間違いないでしょう。そんな気楽なことを言ってられないのが、自民党から招待を受けた有力ブロガー、メルマガ作者の33人です(『自民党が“ブロガー記者会見”』)。

実際に記者会見に出席したのは、ネットエイジの西川潔社長やはてなの近藤淳也社長、グロービスの堀義人社長などの業界関係者が中心で、全くのアマチュアブロガーという人は少ないようです。いずれにせよ、この33人はその影響力の大きさが認められたわけですので、今後は完全に遵法体制に移行して、特定の政党や候補者に関わる論評は控えるでしょうね。

しかし、公職選挙法を最も意識しなければならないのは、候補者本人であることは言うまでもありません。堀江貴文候補を擁するライブドアの対応も徹底しています。ホリエモンの社長日記も8月16日を最後に更新ストップです。その徹底ぶりは一般ユーザのブログにも及んでいます(【重要】公職選挙法に関する対応に関して)。

平成17年9月11日に第44回衆議院議員総選挙が行われますが、特定の候補者、政党に関する表現等につきましては、livedoor利用規約第8条(禁止事項)第1項(9)「選挙運動又はこれに類似する行為、公職選挙法に違反する行為」に抵触する恐れがございますので、弊社にて削除させていただく場合がございます。

ライブドアは以前にも、利用規約違反でユーザのブログを削除したことがあります(ライブドアが利用規程違反の不正ブログを次々と強制削除中!)。今回の公選法がらみで実際に削除されたブログがあるのかどうかは、今のところは不明ですが。

当然候補者としての堀江貴文氏も、現行の公職選挙法の制約に不満タラタラのはずだと推測すると、そんな感じは微塵もありません(ネット使えない選挙運動「困らない」--堀江貴文氏に聞く公選法の問題)。

--公職選挙法によって政治活動や選挙運動がインターネットでほとんどできないという問題があると思います。現在、困ったと感じていることはありますか

困ったと感じたことはないですよ。

--ただ、インターネットが利用できない公職選挙法を改革したいという思いはないですか。

改革するのは当選してからでしょう。(いますぐには)改革できないですから、残念ながら。だってリスクがあるでしょう、改革することには。そのリスクも半端じゃないリスクがあるので、それはできないですよね。

公職選挙法で明確に否定はされてはないのですが、(インターネットの利用は)グレーゾーンなんですね。つまり、取り締まる側の胸先三寸で、いくらでも法解釈をできてしまうので、少なくとも身柄を拘束することぐらいはできちゃうんですよね。公職選挙法違反で逮捕ってことはできるんです。そんなことで逮捕ってことになったら大変なわけです。

それだけの風評リスクだけでも僕は困るわけです。なので、絶対(インターネットを利用することは)できないですよ。

--つまり、あれこれと実施して後で問題となるよりは、何もしないほうがましだということでしょうか。

実施して後で逮捕されてしまったらどうするんですか。僕がただの素浪人だったらいいのですけど、会社の社長であるという責務があるので、それはできないですよね。

いつものホリエモンとは調子が違います。後ろ向きともとれる発言に終始しています。これは単に慎重を期しているだけと考えればいいのでしょうか? さらにインタビューを続けて読むと、ホリエモンに対する疑念は深まりました。

--インターネットで選挙を変えてやろうという意識があったわけではないのですね。

ないですね。だって、変えられないんですもん。

--でも、これから若い世代が成長して、政治への参加意識を持てば公職選挙法も変わってインターネットを選挙活動にうまく使える仕組みができあがっていくと思うのですが。

いや、わかんないですよ。みんな議員にならないと変わらないです。だって、現職議員は自分たちの保身のことしか考えていないわけだし、古臭い選挙をやっているわけです。みんな、小選挙区で地盤があって。いつまでたっても変わらないと思いますよ。

さて、ここからが今回の投稿の本題です。特定候補者への批評になるため、
【公職選挙法に抵触したり、全国のホリエモンファンを敵に回す危険性の高い】
内容です。

ニッポン放送買収の時は、ネットとテレビの融合を繰り返し語っていたホリエモンの口からは、選挙へのネットの利用といった熱い言葉は聞かれません。ニッポン放送の時との大きな違いは、目的を達成するための手段の違いにも見られます。

前回は時間外取引という証券取引法の「グレーゾーン」を利用したのがライブドアでした。当然、ある程度の非難も覚悟の上での決断でしょう。その気になれば、手段を選ばないのがホリエモン流のはずです。今回の選挙に関しては、公職法の「グレーゾーン」を突く動きは全くありません。おとなしいものです。

もう1つは、勝負に負けた時のリスクに対する考え方です。最近はトーンダウンしていますが、ホリエモンの価値判断の基準は、「この世にカネで買えない物はない」という信念をベースにしています。ニッポン放送の時は、実際に大金を投入したわけですから、まさに一世一代の大博打に打って出たと言えるでしょう。

今回の選挙の場合は、金銭的に失うものはホリエモンにとっては大きな額ではありません。状況としては、近鉄球団買収の時の状況に近いように思えます。あの時はホリエモン本人も買収交渉に成功して、実際に金銭的な出費が起こるとは考えていなかったでしょうし。

カネを失うリスクもなく、「グレーゾーン」を突こうともしないホリエモンは、ニッポン放送の時のホリエモンとは全く違います。それはホリエモンを本気にさせる条件が整っていないからでしょう。ハッキリ言えば、私にはホリエモンが衆院選という祭りで踊っているようにしか見えません。

それでは、私が堀江候補に全く期待していないのかというと、そういうわけでもありません。以下の意見は過激な私見です。私はホリエモンがこのままおとなしく公職選挙法を守り通して当選することには、期待していません。ホリエモンには、きれいな善玉(Babyface)の役割は似合いません。期待するのは、完全な悪玉(Heel)とは言いませんが、体制の矛盾点に歯向かって行く姿です。

思い切って公選法の「グレーゾーン」にチャレンジしてもらいたいわけです。ホリエモンが現行法の問題点をあぶり出してくれれば、選挙制度の改革が加速することも考えられます。将来的にはネットでの政治活動が解禁されると、カネのいらない選挙への道も開けてくる可能性もあり、日本の政治改革に貢献することになります。この結果、もし堀江候補が公選法違反で逮捕されることになっても、拍手を惜しまない人も出てくるでしょう。

もし、堀江氏が政治活動に本気であったとしたら、1人で衆院選に立候補することはあまり意味のあるものとは思えません。首尾よく当選を果たして徒手空拳で国会に乗り込んだとしても、1人で実現できることは限られています。狙うべきは、地方自治体の組長の方でしょう。知事や市長になれば、それなりの裁量権があるので、抵抗勢力相手に1人でもかなりの仕事ができます。毀誉褒貶はありますが、石原東京都知事や田中長野県知事、中田横浜市長が、改革を実行したのは事実です。

どうしても国政レベルの改革にこだわるのであれば、私財を投じて政党、もしくは松下政経塾のようなものを創って、自分の理想を実現できる候補者を多数擁立することです。ホリエモン情熱ファンドよりは、よほど意味のあるカネの使い方となるでしょう。


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