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米国MBAへの志願者減少傾向から日本のMBAスクールの将来を占う

2005年09月01日

米国でMBA(経営学修士号)への志願者が減少傾向にあることが明らかになりました。3年連続の減少傾向なので、必ずしも一時的な現象とは考えられません。 果たしてこれをもって、MBA神話の崩壊と理解すべきでしょうか? これが全世界的なトレンドであるとすれば、新設ブームに沸く日本のMBAスクールの状況にも、影響を及ぼすことになるのでしょうか?、 情報源は、『MBA熱冷めた?――米で志願者3年連続減、企業、費用対効果見直し』(2005年8月31日 日本経済新聞 夕刊 1面)です。

米国でビジネスエリートのパスポートとしてもてはやされた経営学修士(MBA)の人気に陰りがみえてきた。ビジネススクール入学の必須試験であるGMATの受験者数は3年連続で減少。日本人の志願者も減っている。企業にMBA取得の費用対効果を見直す動きが広がる一方、人気校に志願者が集まる「二極化」も明らかになってきた。

GMATを実施する米教育団体GMACによると、2005年1―7月期のGMAT受験者数は78134人。93889人だった02年同期より17%減少した。全日制の有力129校を対象におこなった調査では、この九月に新学期が始まる05年度の志願者が前年を上回ったビジネススクールの割合は19%。MBA人気が盛り上がった02年度には84%だった。

志願者減の直接の原因は人口構造の変化で受験者層が薄くなっていることや、同時テロ後のビザ発給の厳格化による留学生の減少。さらにMBAは金融や会計など専攻ごとに知識が細分化され、「環境変化に即応できるリーダーの養成ではなく、中間管理職の量産機関になった」との批判が産業界で高まっている。

医薬大手アボット・ラボラトリーズなどはビジネススクールへの社員派遣と並行して自社内の教育プログラムにより多くの予算を使い始めた。「採用でMBAを特別扱いしない」と言明する企業も増えている。

志願者の減少やビジネススクール間の競争激化をにらみ、経営改革に踏み切る大学が出てきた。南カリフォルニア大が05年度から学生が2カ月ごとに専攻を変更できる仕組みを取り入れ、履修科目も大幅に増やすなど変革を模索し始めた。志願者が増えている夜間部を拡充する例も多い。

まず考えなければならないのは、MBAの本質です。記事中では、「ビジネスエリートのパスポート」と表現され、あたかも特別な資格のように扱われています。しかしMBAは、厳密な意味での資格ではありません。ここで言う資格とは、弁護士、公認会計士のように取得していれば、一定の独占的業務が保障されるものと解釈てください。

MBAは資格ではなく、学歴です。資格であれば保持の有無で線引きされるだけですが、学歴であればその中身も問われるのも当然です。すなわち、どこの大学のMBAを修了したかが問題になってきます。MBA取得者に対する需要が無限大でないとすれば、供給が増えると伴に、出身大学の中身で選別されるようになるのも当たり前でしょう。

2007年には日本でも大学全入時代を迎えます。少子化の進行を受けて、希望すれば誰でも大学に入れるわけです。日本でも大学卒者資格に関して、どこの大学を卒業したかといった、中身の方が重視されるようになるのと全く同じ現象でしょう。

もう1つは、全体と個別の関係です。全体としてMBA志願者数が退潮傾向にあったとしても、トップ10スクールに対する志願状況とは、切り離して考えるべきだと思います。MBAも中身が問われるようになれば、むしろ有名校への志願数は増えているのかもしれません。優秀な志願者が集中すれば、入学競争が激化してくることも予想できます。

MBAと「MBAのコンセプト」も区別すべきでしょう。Master of Business Administration の訳であるMBAは、ビジネスマンとして必要とされる知識や思考法を、短期間に体系的に習得できる修士課程です。短期間で効率的にビジネスマン必須の素養を涵養するといった、MBAのコンセプトに対する需要は、時代がどのように変わったとしても、なくなることはないでしょう。MBAを冠したビジネス書が溢れかえっている書店の状況が、MBAコンセプトに対する人気の根強さの証拠です。

このような考えから、日本でもMBAコースを設置する大学が増加傾向にあります。今や有名大学であれば、MBAコースがあって当然という勢いすらあります。ここまでの話の流れでは、MBAコンセプトに対する需要は不滅なので、それを具現化したカリキュラムを提供する、日本のMBAスクールに対する需要も、不滅ということになります。果たしてこの論理は正しいのでしょうか?

確かに日本のスクールも、カリキュラムとしては欧米の先進校と遜色ない内容を提供するところも少なくありません。しかし、実際の企業の採用担当者がMBAホルダーに求めているのは、カリキュラムを習得した証明だけではないと思います。それに加えて企業側がMBAホルダーに期待しているのは、(1)外国語能力(特に英語力)、(2)不慣れな海外での生活を乗り越えた精神的タフネス、(3)グローバルな環境で磨いた多様な価値観、(4)同窓生との間の人的ネットワーク、などが考えられます。

日本のスクールでも英語で授業を提供するところもあります。しかし日常会話でも英会話を要求される海外スクールと比べれば、ホルダーの英語能力の格差には各段の違いが生じます。また、海外生活に伴うストレスを考えれば、海外スクール出身者の方がタフであることも間違いないでしょう。このように考えると、日本スクールのMBAホルダーが、海外スクールのホルダーと全く同じ評価を受けられないような感じもします。

今回の投稿では、MBAコンセプトに対する需要は不滅なので日本スクールも大丈夫と言ったり、企業側の期待を考えると日本スクールに対する需要は怪しい言ったり、一見して矛盾したかのような内容になりました。本当のことは、日本スクールのMBAホルダーが、活躍した結果で実際に受ける評価を分析しなければわかりません。

実際にMBAを取得しようと考えている人にとって気になるのは、海外のトップ10以下のスクールと、日本のトップスクールに対する評価の差でしょう。日本国内においてどちらの方が高い評価を受けられるのかは、簡単に判断できません。また、起業家を志す人にとっては、他人からの評価はそもそも関係のない話かもしれません。しかし、日本国内で受ける評価とは無関係に、海外のトップ10スクールのMBAホルダーが、世界的に認知され続けることは変わらないと思います 。


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コメント

はじめまして。ドイツ在住のJassiと申します。
大手新聞社のHP等を見るだけではなかなか分からないような日本の現状について色々な角度から深く書かれているので、いつも「そんな背景があるんだー」と思いながらふむふむと読ませてもらっています。
僕自身は環境技術についてドイツの団体や企業等で実践的な経験を積む目的でこちらに滞在しているので、MBAとは直接関係ないのですが、記事の中の「企業側がMBAホルダーに期待しているのは、(1)外国語能力(特に英語力)、(2)不慣れな海外での生活を乗り越えた精神的タフネス、(3)グローバルな環境で磨いた多様な価値観、(4)同窓生との間の人的ネットワーク、などが考えられます」という部分には自分にもあてはまるのではないかなと。この(1)~(4)というのは、別にMBA取得者に限らず海外経験を日本の社会で活かしたいと思っている人にも求められる事項ではないのかなと思って読ませてもらいました。

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