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スーパー隷属体質からの脱却に成功した豆腐ブランド 三代目茂蔵、男前豆腐

2005年09月05日

セブンイレブンが先陣を切って、コンビニ定価販売の掟を破りました(セブンイレブンの飲料値下げ戦略が、MBO後のポッカに与える影響)。この影響を受けるのは、セブンイレブンから直接仕入れ価格の引き下げを要求されている飲料メーカーだけには、とどまりません。セブンの引き下げ要求は、他の加工食品にも拡大するのではないかと、食品業界各社は既に戦々恐々といった状況にあります。 情報源は、『コンビニ飲料「定価の聖域」崩壊――売れ筋標的、追随強いる、他品目に波及も』(2005年9月5日 日経産業新聞 24面)です。

不安ムードは食品業界全体に広がる。ある大手即席めんメーカーは「飲料だけで終わるはずがない」と値下げの広がりを警戒。アサヒビールの岡田正昭専務も「事態を注視する必要がある」と語る。セブン―イレブンが加工食品の値下げを検討していることも明らかになり、セブン―イレブンショックの波紋は大きく広がりつつある。

他のコンビニが追随値下げに動くことも十分考えられ、メーカーからは早くも「商品の納入や開発の面でメーカーの負担を減らすようコンビニに求めていくべき」といった声まであがり始めた。コンビニからの値下げ要求はどこに着地するのか。コンビニとの蜜月関係が崩れるきっかけになっていくのか。食品メーカーにとって試練の秋が始まった。

チャネルパワーにモノを言わせたコンビニ側の出方を見守っているというのが、食品メーカー各社の状況でしょう。大手スーパーやコンビニの思惑一つで左右されるのが、食品メーカーの経営戦略です。いまや業界構造は、流通側が王様でメーカー側が奴隷という関係にあるとは、言い過ぎでしょうか。

しかし、このような大手スーパーへの服従関係を断つために、直販に乗り出して、大成功を収めた食品製造会社があります。天然にがりだけで造った絹ごし豆腐で急成長し、東証マザースに上場するまでになった、「三代目茂蔵」ブランドの篠崎屋です。篠崎屋社長の樽見茂氏(42歳)は、スーパーからの撤退の理由について、次のように語っています。 情報源は、『天然にがりの絹ごし豆腐で風起こす』(朝日新聞 2005年9月3日 b1~2)です。

── 00年10月にスーパー向け卸から撤退しましたが、当時の売り上げ約8億円のうち8割はスーパー。大きな賭けでした。

樽見 スーパーの増産要求に応えて売り上げを伸ばしてきましたが、それは設備投資や工場の建設を続けることを意味します。つまり借金はなくならないし、自由な経営はできない。自分の人生をこれ以上スーパーに預けるのは耐えられなかった。

だから、製造直販するしかないと思ったのです。またこの年の夏、食中毒事件で雪印乳業の牛乳が各地のスーパーから一斉に消えたのを目の当たりにして、あの雪印さえ切られるのだから、スーパーに依存する経営は危険だと思い知った。スーパーの担当者は2年に1回は代わる。うちもいつ切られるか分からない、と。

── スーパーからの撤退を意識されたのはいつごろですか

樽見 庄和工場(埼玉県)を建設するかどうか迷った時期だから、97年ごろかな。当たり前のように納入業者にリベートを要求するスーパーの姿勢にも嫌気がさしていました。リベートは卸総額によって3~7%で、売り上げが伸びるほど利益率は低下する。

お歳暮の時期など、数の子2キロ入りを4箱とか、クリスマスケーキを50個とか、合計10万円ぐらいの商品も買わされました

その後、乗り出したのが自社工場での製造直販です。現在樽見社長は、M&Aを積極的に展開し、すでに食品卸会社や惣菜メーカー、コンビニチェーンなど5社を傘下に収めました。来期の連結売上高も、今期の7倍以上の200億円を見込んでいます。その樽見社長は、スーパー、コンビニとの関係についても、超強気そのものです。

工場直販所は、東北から九州まであり、毎日1店舗ずつ増えている勘定ですから、下手なコンビニチェーンより大きくなります。スーパーは、メーカーから仕入れて売るしかない。僕らはメーカーだから、どちらが強いかといえば、間違いなくうちの方が強いですよ。

将来ビジョンを問われて、「孫正義がIT財閥なら、僕は食品財閥を目指したい」と答える樽見社長は、夢もまた気宇壮大です。

スーパーへの服従関係からの脱却を目指して直販というやり方を取ったのが、「三代目茂蔵」の篠崎屋です。しかし、スーパーとの関係を対等にするには、別の方法もあります。それは競合他社と完全に差別化できるブランドを確立することです。この方法で、いまやスーパーから引く手あまたとなっているのが、三和豆友食品で、偶然にもまた豆腐メーカーです。 情報源は、『奇抜な名前で豆腐ヒット』(2005年9月5日 日本経済新聞 朝刊 17面)です。

「男前豆腐」「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」。奇抜な名前の豆腐が、百貨店やスーパーの売り場で人気を集めている。1丁300円を超える高価格にもかかわらず、今年夏に発売した百貨店では1日あたり通常の5倍も売れたという。仕掛けたのは三和豆友食品(茨城県三和町)常務の伊藤信吾さん(37)だ。

「とにかく食べてほしかった」。インパクトを重視する戦略は、伊藤さんの切実な思いから生まれた。いくらおいしい豆腐を作っても、手にとってもらえなければ仕方がない。だったら思い切り目立つしかない。そこで一風変わった名前や目を引くパッケージで売り出すことにした。

「男前豆腐」は豆腐を不織布でくるみ、容器の底に水を切る仕切りを作った。水もしたたるいい男というのが名前の由来だが、水を自然に切ることで濃厚な味わいが実現した。機械で作っていた製造工程の一部を手作業に戻すなど「あくまでも味は本物志向」と胸を張る。

高級豆腐といえば熟年層という常識も覆した。同社のホームページを開くといきなり「豆腐、食ってるかい?」。自作自演のテーマソングなど豆腐メーカーとは思えない派手な作りがブログで話題を呼んだ。ブログは毎日チェックし、商品開発の参考にしているという。

ヒットを機に男前豆腐店という新会社を設立、8月末には京都府八木町の工場を購入して本社を移した。父が三和豆友食品を興してから15年。いよいよ自分の城を持つ。「父からは好きなようにやれと言われています」と笑う。

上で紹介しているホームページ、三和豆友食品男前豆腐店は、一見の価値はあります。そのポップなデザインには、これが豆腐屋のサイトかと驚く人も多いでしょう。

今回紹介したユニークな会社がともに豆腐屋であったのは、偶然かもしれません。また、両社の業績が好調なのは、健康志向ブームといった追い風が大豆製品全体に吹いている影響も、多分にあるのでしょう。

大手流通資本からの要求に屈しているだけでは、食品メーカーの弱い立場は、いつまでたっても改善されません。特に豆腐のような昔ながらの商品で差別化の難しいものは、何の工夫もなければスーパー側に好き勝手にされる可能性も大きいでしょう。

今回の事例は、一見差別化の難しそうな成熟商品のマーケットこそ、経営者が発想転換すれば、成功の果実も大きいということを如実に物語っているように思います。


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