おさまらないマクドナルド賃金不払い問題 今度は店長の残業代が槍玉に
2005年09月08日
日本マクドナルドがアルバイトの賃金を支払っていなかった問題について、前回投稿しました(従業員賃金不払い、FC店舗廃業、原田体制の日本マクドナルドに不満続出)。この問題は、2年前までにさかのぼって、約10億円に及ぶ金額をマクドナルド側が支払うことで、決着を迎えたようです。
今度は、店長の残業代が不払いである問題も浮上してきました。マクドナルドの経営に与える影響の大きさは、アルバイト問題の比ではありません。 情報源は、『スクープ 日本マクドナルドに新事実-賃金不払いさらに100億円か』(2005年9月10日 週刊東洋経済 18~19面)です。
今回、新たに判明した賃金不払い疑惑は、アルバイトや一般社員とは別の話。約1500人の直営店店長のサービス残業(賃金不払い残業)をめぐる問題である。
同社店長の残業時間は、「少なく見積もっても月平均70時間程度」(現役店長)。この実態に即して店長1500人分の「本来の残業代」を試算すると、過去にさかのぼって給料を請求できる最長の2年分に限定しても、時間外労働の割り増し分を掛け合わせた総額は100億円に迫る。
しかし、日本マクドナルドでは、店長に残業代が支払われていない。店長は「一国一城の主である管理職」(同社幹部)であり、労働基準法で時間外労働に適正な賃金を支払わなければならないと定める、第37条の適用を除外される41条2号の「管理監督者」だとしているためだ。
これに異を唱えたのが、労働組合の東京管理職ユニオン。月100時間超の過酷な労働環境の改善を求め、ユニオンに駆け込んだ現役店長の相談を受け、日本マクドナルドに団体交渉を要求。6月末に第1回が開催され、これまで5回の交渉を重ねている。
ユニオンが主張しているのは、マクドナルドの店長は「管理監督者」ではなく、一般労働者であるという点。これが認められれば、日本マクドナルドは、これまで不払いだった店長のサービス残業代を支払わなければならなくなる。
和解にせよ、判決にせよ、マクドナルドが主張する「店長は管理監督者」が認められなければ、サービス残業問題で過去最高水準の支払い額となるのは必至。商品戦略で失敗し、業績回復に急ブレーキがかかった同社にとっては大ダメージだ。原田泳幸社長の責任問題にもつながりかねない。前回同様、他の外食大手をはじめ、サービス業全般に波及する可能性も出てくる。
マクドナルドは店長に時間外労働がないと主張しているわけではありません。店長は労働基準法で残業代の支払いの適用除外となっている「管理監督者」なので、残業代を支払う必要がない、と主張しています。一方、東京管理職ユニオンは、一般労働者にすぎない店長も、残業代の支払い対象であるべきと考えています。したがって、争点は「管理監督者」の解釈にあります。この点に関して、記事では次のように説明しています。
日本では係長、課長など一定以上の職制にある社員を管理職と呼ぶため誤解されがちだが、労基法上の管理監督者とは「係長、課長などの身分ではなく、経営者と一体的立場にある役職。名称にとらわれず実態に即して判断すべきだ」と法政大学の浜村彰教授(労働法)は指摘する。「いわゆる『管理職』に残業代がつかない、というのは、誤った俗説」と労働問題に詳しい棗(なつめ)一郎弁護士も解説する。
近年の裁判例でも管理監督者とは、〔1〕経営者と一体的立場にあるといえるほどの職務の内容、権限、責任、〔2〕出退勤についての自由度、〔3〕地位にふさわしい処遇、という枠組みで判断される。いわゆる管理職の大半は「管理監督者」に該当しない、とされている。たとえば、マクドナルドと似た業態であるファミリーレストランの店長やカラオケ店の店長は、労働時間を管理されている点で「管理監督者」と認められず、残業代の支払いが命じられている。
この「日本の管理職の大半は「管理監督者」に該当しない」という説明が正しいとすれば、日本の管理職の大半に残業代が支払われるべきということになります。そうであれば、問題は日本マグドナルドに限った話ではないでしょう。前回のアルバイト残業代の未払いに続き、マクドナルドだけがスケープゴートにされているような感じもします。
さらに、もう1つマクドナルド特有の事情について考えてみました。それは、同社が米国に本社を置く外資系企業だということです。外資系企業の給与体系も日本風にアレンジし直している会社も多くなりましたが、ベースとなる考え方を変えていないところも、まだあるようです。人事専門のコンサルティング会社、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングでは、一般的傾向として次のような指摘をしています(外資系企業における労働時間管理の特徴)。
外資系企業における報酬制度の特徴として、年俸制があげられます。そして、多くの企業では、年俸制の名の下に非管理職であっても裁量労働制等の導入が無いまま、残業手当の支給がなされていないことが多く見られます。
特にアメリカに本社に置く企業の場合、アメリカにおけるExempt(残業手当非対象者)とNon-Exempt(残業手当対象者)の概念をそのまま持ち込み、ホワイトカラーは全てExemptであるという認識を持ち、上記のような取り扱いがなされているケースもあります。
会社側の意識としては、「労働基準法違反」、「残業手当不払い」という意識はないのですが、結果としてそのような結果に陥っております。
Exemptは、本家の米国の労働基準法で使われている概念です。具体的には、管理職エグゼンプト(executive exempt)、運営職エグゼンプト(administrative exempt)、専門職エグゼンプト(professional exempt)があり、各々その要件が明確に定義されています(諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間規制の適用除外)。
米国では厳密に運用されているこのExemptの概念を、日本では極めて大雑把な形で適用しているのが実情です。日本で採用されるホワイトカラーのほとんどを、専門職Exemptにしてしまうのです。したがって、残業代の支払い対象とはなりません。新入社員といえども、専門職である以上、残業代は支払われないことになります。
それでは、残業代が支払われないのに、なぜ米国系外資の社員は、文句を言わないのでしょうか? それは基本給が高いからです。新入社員であっても、最初から専門職としてのプレミアム分が支払われます。これが、特に若い年代において外資系企業の社員の給与が、日本企業の社員を上回ることの多い理由です。
この外資系企業での慣行を踏まえた上で、先の日本マクドナルドの問題に戻ります。東洋経済の記事には、マクドナルド店長の給与実態に関して次のような記述があります。
黄金期には年間14カ月分のボーナスが支払われたというが、それも今は昔。近年の業績低迷の影響で、40代現役店長の年収が、数年前のピークの900万円台から600万円台に下がった例もある。店長の労働条件は厳しい。
Exemptとして高い給与が支払われていた時代には表面化しなかったものが、給与が下がったので急にNon-Exemptとしての実態を訴えて、残業代の支払いを要求し始めたようにもとれます。そう決めつけてしまうのは、マックの店長に失礼でしょうか?
最後に個人的、かつ乱暴な意見を述べます。私は、ホワトカラーに限っては残業代はなくした方がいいと思います。諸外国に比べてホワイトカラーの生産性の低いのが日本です。残業代をなくせば、もう少し効率的な仕事のやり方を真剣に考えるようになるはずです。まあ、これもそう単純な話ではないことは、わかってはいますが...
【おまけ】
マクドナルドのプロモーションに、ハンバーガーを主食としているマーク・クルーンを使ってはどうか、といった趣旨のいい加減な投稿をしたことがあります(マクドナルド業績回復の鍵は日本球界最速男マーク・クルーンが握る?)。
今週の週刊ポスト(54ページ)によれば、クルーン選手のパワーの秘密は、パパイヤを原料にしたサプリメント『オーベンザイムN』にあるそうです。
これを飲めば、不足する酵素が体内で生産されるらしいです。
ハンバーガーの方は、やはり悪玉のままでした。
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