財界の重鎮に叱られた三木谷社長が、将来叱る側に回る可能性は大
2005年10月18日
ホリエモンに比べて、財界人の覚えもめでたく、老人キラーとの異名も持つ楽天の三木谷社長が、TBS問題では財界のご意見番を怒らせました。 情報源は、「三木谷社長はウソつき」諸井氏が激怒です。
楽天がTBSに経営統合を提案した問題で、TBS「企業価値評価特別委員会」の諸井虔(けん)委員長(77)が、楽天の三木谷浩史社長(40)に激怒した。17日のテレビ朝日「スーパーモーニング」の取材に「彼はうそをついた。話が全然違う」と不快感を示した。
諸井氏によると、今月3日に三木谷氏と会談。「業務提携はいいが、株を買っての支配は避けるように」とクギを刺された三木谷氏は「それはしません」と明言したという。しかし、三木谷氏は13日に株大量取得を発表。諸井氏は「やりませんと言って、やった。企業支配じゃないか。買収防衛策として新株予約権発行も辞さない」と強硬な姿勢を鮮明にした。
諸井氏は15日に「合併に比べてマイルドなやり方。筋は悪くない」と楽天の提案を前向きに評価していた。しかし、16日朝に三木谷氏がテレビで「(TBS株を)買わないとは言っていない」と発言したため、反発を強めたもようだ。
諸井虔氏とは、太平洋セメントの相談役で、TBSの社外取締役でもある財界の重鎮です。一般の人には、毎週日曜日の朝TBSテレビで放送している関口宏の「サンデーモーニング」に、コメンテーターとして出演していた上品な雰囲気のお爺さんといった方が、馴染みがあるかもしれません。番組出演者が社外取締役に就任することには、利害相反の問題はないのか、という疑問はありますが、今回は突っ込むのはやめにしておきます。
サンデーモーニングの看板コーナーの1つが、「ご意見番スポーツ」です。大沢啓二(通称親分)と張本勲(張さん)の両氏が、『喝!』と叫びながら、やたらと怒りまくる辛口のコーナーです。この両氏に比べれば、テレビでの諸井氏は、温厚とした紳士そのもので、怒ることはほとんどありません。
しかし、諸井氏がマスコミを前にして怒りを露わにするのは、三木谷氏の件が初めてではありません。今年の3月には諸井氏は、西武グループ経営改革委員会の委員長を務めていました。
事件は、コクドを西武鉄道に吸収合併させた後に、西武鉄道が増資するという改革案を発表した記者会見で起こりました。諸井氏の説明に対して、記者側は堤義明氏をどうやって説得するつもりなのかと、質問を投げかけました。 情報源は、西武“再建案”に暗雲、根拠希薄で訴訟リスク高まるです。
諸井氏は委員長就任時に義明氏の「白紙委任状」を取りつけていたことを明らかにした。「改革委員会の提案を了承し、実現に努める」という内容で、本人の署名もあるという。この存在が、大株主の権利を希薄化する案を、最終的な承諾も得ずに突きつけることができる論拠とも言える。
にわかに重要性が高まる「白紙委任状」。だが、最終報告の会見で記者がその開示を求めると、普段は温厚な諸井氏が、声を荒らげて激高した。
「オレがそう書いてあると言ってるのに、何で信用できんのだね。オレは出したくないと言っているんだよ。君らだって、私信みたいなものを何でも出せと言われたら嫌だろう」
静まり返る会見場。だが、報道陣の不信感が高まった瞬間でもあった
この諸井氏の発言に対して批判的なのが、これまたいつも怒っている村上ファンドの村上世彰氏です。
「それは火事場泥棒でしょう」。西武鉄道買収を提案しているM&Aコンサルティングの村上世彰社長は、諸井氏の発言をそう評する。
義明氏逮捕といった非常事態に乗じて、根拠も示さずに西武グループを奪う…。それは、法治国家では許されない事態であり、当然の結果として、株主代表訴訟など、次々と法廷闘争が打たれると読む。村上氏も増資の差し止め請求を視野に入れている。
もともと村上氏は改革委員会の再建策には、大株主の立場から反対していました。村上氏以外の多くの株主も反対に加わったため、経営改革委員会の再建策は、結局お蔵入りの運命をたどります(西武グループ 持ち株会社で再建 中核3社の合併見送り)。
合併の代わりに出てきたのが、持ち株会社化によるコクドと西武鉄道の経営統合案です。わかりやく言えば、ネット企業とテレビ局の経営統合案が、合併型(ライブドアvsフジテレビ)から、持ち株会社型(楽天vsTBS)に変わったようなものです。この案でも西武鉄道の増資を前提しているところは同じです。
そこで、大株主の村上氏はまたしても大反対です(村上ファンドが提訴の構え 西武鉄道の増資に反対)。村上氏が強硬に反対していても、外資系ファンドの中にはこのプランに乗ってくる企業もあります。本日、米国系ファンドが増資を引き受ける予定が明らかになりました(米投資ファンドサーベラス、西武鉄道筆頭株主に)。
この話を聞いて、村上氏が怒るのかどうかはよくわかりません。ファンド同士で内々に話がついているのかもしれません。阪神電鉄、TBSに加えて、西武問題でも、村上氏の今後の動きからは目が離せません。
話を諸井虔氏に戻します。TBSの企業価値評価特別委員会や、西武グループ経営改革委員会といった、世間の注目度の高い重要な委員会の長を諸井氏が任されているのは、同氏の公平中立性と、経営者としての見識が高く評価されているからです。諸井氏が余人をもって代え難い人材であることの証拠でしょう。
諸井氏のように「あの人に任せておけば大丈夫」と、経済界、政界、官界が納得するような人材は、本当に他にはいないのでしょうか? 私は、楽天の三木谷社長が、将来的には現在の諸井氏に近い評価を受ける人材になると予想していました。したがって、冒頭の事件は、「現在の」財界ご意見番が「未来の」財界ご意見番を叱ったというのが、私の解釈です。
それでは、TBSの株を極秘裏に取得したことにより、三木谷氏の財界ご意見番への道が遠のくことになったのでしょうか? 私は、決してそうは思いません。現在は清廉潔白でスキャンダルには無縁にも見える諸井氏にも、1980年代後半には財界活動を自粛していた時期がありました。
当時、政界、官界、財界を巻き込んだ一大疑獄事件となったリクルート事件です。リクルートコスモスの未公開株を5000株受け取ったことで、諸井氏は経済同友会の副代表幹事の職を辞任しています。当時の事情からして、諸井氏本人に大きな悪意があったとは考えられませんが、経済人として脇が甘いと責められても当然でしょう。
同じく未公開株を受け取った牛尾治朗氏も、同友会の副代表幹事を辞職しましたが、後に代表幹事に返り咲いています。実力さえあれば、財界で復権するのはそれほど難しいことではなく、名士の地位も傷つかなかったということでしょう。
10年後の三木谷氏は財界の重鎮として、若手企業家を叱責する立場に回っていると予想するのが、今回の結論です。ホリエモン後追いパターンを考えると、政治家になっている可能性も否定できませんが... いずれにせよ、三木谷氏はこの程度のことで、全てを失うことはないでしょう。
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