残業代支払い請求訴訟を起こすマクドナルド現役店長の過酷な労働実態
2005年10月23日
マクドナルドの現役店長が残業代の支払いを求めて、11月に日本マクドナルド相手に訴訟を起こすことになりました。この訴訟に踏み切った現役店長が、埼玉県北部の幹線道路沿いの店に勤務する高野広志氏(44歳)であることが、今週発売の日経ビジネスで明らかになりました。記事には、壮絶を極める高野店長の労働実態が掲載されています。 情報源は、『ハンバーガー店"管理職店長"1日15時間労働で「死を思う」(日経ビジネス 2005年10月24日号 34~35ページ)です。
- 4:10 起床
- 4:40 出勤
- 6:30 開店準備
金庫のカネを取り出し、レジへ出す。店長以外の従業員はアルバイト1人。- 7:00 接客
開店準備をした2人で接客。- 10:00 昼食・休憩
「時間帯責任者」と呼ばれるアルバイトが入らなければ、店の裏で弁当を食べながら待機。- 11:00 接客
14時までのピークの時間帯は4人のアルバイトを使い、店員に指示を出す。人手が足りない時は店長自らが接客することも。- 18:00 夕食・休憩
昼休みと同様。- 19:00 接客
閉店までアルバイト3人。- 23:00 閉店作業
その日の売上の確認、店内掃除、調理用機械の点検。- 1:00 帰宅
閉店作業に時間がかかった日は帰宅が2時過ぎになることも。眠る時間を確保するため、店舗に泊まるケースも少なくなかった。
高野店長の行動パターンは、昨年末から今年の初めにかけての、最も労働時間が長かった時期でのことで、現在の店舗の1つ前の店舗に勤務していた時のことです。当時は月100時間を超える時間外労働で疲れが溜まり、ぎっくり腰になって、店から病院に運ばれたこともありました。また、今年の5月には、手に痺れを感じるようになり、「軽い脳梗塞」との診断も医者から受けています。
この店長のスケジュールを見る限り、店舗の人員が足りていないことは明らかでしょう。こんな状態が続くのであれば、「なぜ増員しないのか?」というが当然の疑問です。高野店長が増員を決断できなかったのには、本部との間に結んだ利益目標が関係しています。
日本マクドナルドでは毎年、店長とエリアマネージャーとの話し合いで、店舗毎の業績目標を設定します。この目標はいったん取り決めると、「よほどの理由がない限り取り下げられない」(高野氏)といった種類の目標で、いわゆるコミットメントに近いものでしょう。このコミットメントを守ろうとして、高野店長は、コストアップの要因となるアルバイトの増員ができなかったのです。
これまでマクドナルドの残業問題の争点は、「店長が労働基準法で残業代の支払いの適用除外となっている管理監督者」かどうかの判断にあると言われてきました。これに加えて裁判では、高野店長の労働実態がマクドナルドの標準的な店長の実態なのか、それとも一部の特殊な例でしかないのかも、争点になってきそうです。
店舗の労務管理に関しては、日本マクドナルドの原田泳幸CEOは次のように答えています。
「今後は現場の状況を本部が、より正確に把握できるようにする。だが、成果を上げられない人までもフォローするつもりはない」と言う。
この問題の原因を成果主義に求めるのは誤りでしょう。標準的な能力の人間であれば、標準的な成果が達成できる環境がなければ、成果主義の前提が崩れてしまいます。どうも今回は、その大前提が成立していないように思えます。使用者側が環境を整備していない状態で、労働者のみに成果を要求するのは、成果主義に名を借りた労働強化策でしかありません。
高野店長が標準的な店長よりも能力が劣ることを証明するのが、日本マクドナルド側の裁判戦術になりそうです。しかし、公判の模様がマスコミで伝えられれば、マクドナルドのイメージがダウンすることは間違いありません。また、このような店舗内の過酷な労働実態が一般に知れることになれば、マクドナルド製品の安全性に疑問を感じる消費者も出てくるでしょう。食品を扱う業種では、過剰労働が衛生問題を引き起こす危険性も決して低くありません。こう考えると、当分マクドナルドの業績は好転するような気がしなくなります。
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