楽天有力出店者ケンコーコムが米アマゾンに商品供給 楽天ECビジネス限界説
2005年11月05日
TBSとの経営統合により、世界に通用するECとメディアの連合体を目指しているのが、楽天の三木谷浩史社長です。しかし、楽天創業以来のコア・ビジネスであるEC分野では、最近はあまり芳しい話が聞かれなくなりました。健康関連製品の通信販売に特化した、東証マザーズ上場企業が、ケンコーコムです。中小企業が大部分を占める楽天市場の出店者の中で、2000年に楽天支店を開設したケンコーコムは、楽天のECビジネスの屋台骨を支えてきた企業の1つです。
三木谷社長の夢である世界進出の際には、ケンコーコムも国際版楽天市場の主力テナントとしての役割を、期待されていたのではないでしょうか。そのケンコーコムが世界進出のパートナーとして、アマゾン米国本社を選びました。 情報源は、『ケンコーコム、アマゾンに商品供給――小分け梱包も受託』(2005年11月4日 日経産業新聞 2面)です。
健康食品などの通信販売サイトを運営するケンコーコムは2日、米通販サイト大手アマゾン・ドット・コムの子会社にスポーツ関連製品を卸売り供給する契約を結んだと発表した。対象商品はサプリメントなど食品類やスポーツ器具など。ケンコーコムは自社の物流センター(福岡県飯塚市)を活用し、供給する商品の小分け梱包・出荷も受託する。
アマゾンによる通販事業の物流面などを担う子会社、米アマゾン・ドット・コム・インターナショナル・セールス社(ワシントン州)と同日付で契約した。対象商品の詳細は今後詰め、年内にも供給を始める。
アマゾンとの非排他的商品供給契約に関して、ケンコーコム社長の後藤玄利(ごとうげんり)氏は、自らのブログ『健康とECのBlog』の中で、こう述べています。
2005/11/02
アマゾンとの契約締結先ほど、アマゾンとのフルフィルメントサービス契約を締結した。詳細はまだ決まっていないが、これからの展開を楽しみにしている。契約までのやりとりの中で、アマゾンの考え方や価値観に共感を覚えることが多かった。彼らは「Customer Centric」という概念を大きな基軸に据えている。ケンコーコムも「お客さまの気持ちになって考える」ということを第一にしているので、ベクトルをあわせやすいと感じている。アマゾンとの取り組みはこれからがスタートだが、お客さまに喜んでいただけるよう、しっかりとサービスを提供していきたい。
このコメントの中で注目したいのは、「アマゾンの考え方や価値観に共感を覚えることが多かった」という部分です。それでは、後藤玄利社長は楽天の考え方には、もはや共感を覚えなくなったのでしょうか? 実のところ、ケンコーコムと楽天との距離感は、開きつつあるようです。
8月に楽天サイトから顧客情報が漏洩する事件が起こりました。対応策として打ち出されたのが、クレジットカード情報を出店者に渡さずに、楽天が一括管理する方法への変更です(加盟店の反発必至 楽天の新決済システムは楽天トラベル値上げ撤回の二の舞?)。その制度変更の反対の急先鋒に立ったのが、他ならぬ後藤社長でした。 情報源は、『カード番号、情報流出対策、楽天が直接管理――出店側から批判』(2005年8月2日 日本経済新聞 朝刊 11ページ)です。
楽天市場の有力出店者であるケンコーコムの後藤玄利社長は1日、日本経済新聞の取材で、「楽天が代行する決済業務が増え、手数料収入の増加につながる。だが、カード会社と独自に低い決済手数料率を取り決めていた出店企業の費用負担は増える場合がある」と楽天の対応を批判した。
また後藤社長は、楽天市場の将来性に関しても、「手数料を上げることで成長を維持してきたが、これ以上上げるのは難しいだろう」と、懐疑的な意見を公言しています(『市場の期待に焦る楽天、裏切られたTBS 深まる溝、徹底抗戦の様相』(2005年10月24日 日経ビジネス 8~9ページ)。さらに同誌には、楽天トラベルに対する厳しい見方も掲載されています。
楽天は9月、空室を提供するホテルや旅館から受け取る手数料を一律6%から、7~9%に上げた。さらに楽天には、宿泊費をどこよりも安く出すよう最低料金保証を求めた。
これに反旗を翻したのが、業界団体大手の全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連)だ。6月には、ライバルのライブドア系宿泊予約サイト運営会社、ベストリザーブと業務提携した。
全旅連の針谷了常務理事はこう見る。「急成長のように見えても彼らの常識ではダメなのだろう。常に利益だけが(評価の)軸となり、(現状に)焦っているのではないか」。
話を冒頭のケンコーコムと米アマゾンの商品提供契約に戻します。詳細は不明なのですが、現状の契約では、ケンコーコムが amazon.com に商品を提供するということで、日本の amazon.co.jp は含まれていないと思われます。しかし、両者の協業が期待通りの成果を上げることになれば、日本のアマゾンでもケンコーコム商品を扱う展開になることも、当然予想できます。
現在、ケンコーコムは自社サイトと楽天支店で通販サイトを開設しています。これにアマゾンが加わることになれば、その代わりに楽天支店からの撤退という可能性も、決して低くはないでしょう。同社の後藤社長が、最近の楽天のビジネス姿勢に疑問を感じているのであれば、その可能性は結構高いかもしれません。
この「楽天よりアマゾン」という選択は、ケンコーコムだけではありません。楽天が経営統合を迫っている当のTBSも、すでにアマゾンとの協業を開始しています。情報源は、『楽天は既に落選? TBSがアマゾンと組んだ真の理由』(2005年10月31日 日経ビジネス 9ページ)です。
新サービスを行うのは、TBSの土曜の人気情報番組「王様のブランチ」。番組内で紹介する本やDVDなどの情報を、地上デジタルデータ放送で画面に表示。視聴者はアマゾンのサイトと連動した画面を見ながら、リモコンで商品の検索、注文や購入ができる。
注目すべき試みが、「番組マイレージサービス」だ。番組を見ると、時間数に応じてマイルがたまるもので、特にCMを見るとボーナスマイルがつく。ためたマイルは景品に交換でき、将来はネット通販会社の商品購入にも使えるようにするよう検討する。
テレビの集客力を生かし、アマゾン側は販売増が、TBS側は手数料収入が見込める。さらにポイント制の導入で視聴者を囲い込み、広告主が嫌がるCMの飛ばし見を避ける――。そんな一挙両得の狙いがある。
期間はまず11月16日から1カ月。対象世帯数もまだ限られた実験的な扱いだが、うまくいけば番組を広げるほか、事業化を検討するという。
この新サービスは、今年の1月からTBS、電通、アマゾンの3社共同で検討してきたもので、楽天への対抗策として急に捻り出したものではないそうです。それでは、なぜECパートナーとしてアマゾンが選ばれたのでしょうか?
「実は楽天も含めて様々なネット企業を比べたが、アマゾンが最適だった」。同テレビ技術局の原田聡企画開発部長は明かす。
アマゾンが技術情報や商品データを公開しているため、システム開発がしやすかったほか、多数の店舗が併存する楽天のようなモール運営会社よりも、1社で完結し、しかもネット書籍販売トップのアマゾンがベストと判断したようだ。つまり楽天は、販売提携の“適性試験”に落ちたというわけだ。
かねてより楽天の三木谷社長は、楽天市場が実現したモール型のECが、世界で通用するビジネスモデルであると、自信満々に語ってきました。しかし、今回のTBSの選択に見るように、単体で消費者を吸引できる有力コンテンツを持つメディア企業にとっては、モールの吸引力は不要で、シンプルな商品提供型ECの方が好まれます。楽天市場型ECが万能でないことは明らかでしょう。
このことから、ケンコーコムの後藤社長の指摘とは別の面での「楽天市場限界説」が考えられそうです。おそらく三木谷社長も、その強気な言葉とは裏腹に、成長の限界には十分に気づきいているのではないでしょうか? だからこそ、さらなる成長のためには、メディア企業を傘下に収めるのが必要だと考えたのでしょう。
しかし、この三木谷社長の焦りが、やや強引とも思える楽天市場での手数料アップ策となり、逆に既存の出店者からの反発を招くことになりました。完全な悪循環に陥ってしまったようです。メディア企業買収にうつつを抜かしている間に、足元のECビジネスが崩壊するといった愚は避けるべきでしょう。
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コメント
はじめまして。田代と申します。
ケンコーコムの役員に知り合いがいることもあって、以前同社の記事を書きましたので、TBさせて戴きました。
とても興味深い内容で、勉強になりました。
応援クリックさせて戴きました。
今後とも宜しくお願い致します。
Posted by: 田代 | 2005年11月05日 07:16