ボボズ(BOBOS)マーケティングのコンセプトは少子化問題の救世主となるか?
2005年11月28日
先週金曜日の深夜に放送された朝まで生テレビ!のテーマは、少子化問題です。番組では、上智大学外国語学部フランス語学科教授のミュリエル・ジョリヴェ氏も、パネリストの一人として出演していました。このため、政府の手厚い手当てや休暇制度の充実により、フランスが出生率の回復に成功した話題が紹介されるケースがありました。
フランスの出生率の回復には、育児に価値観を再発見した「BOBO(ボボ)」と呼ばれる新しいタイプの消費者が登場したことも関係しています。 情報源は『フランス「ボボ」が教える少子化対策』(2005年10月28 日経流通新聞MJ 4面)です。
「BOBO(ボボ)」と呼ばれるニュータイプの消費者が子育てに参入し始めたことだ。ボボとはブルジョア・ボヘミアンの略語で、ブルジョア(金持ち)になったボヘミアン(自由人)や、ボヘミアン的スタイルのブルジョアを指す。20代後半から30代の成功したクリエーター、ネクタイを締めない起業家を想像すればいい。
金ぴかの装身具は嫌うがスニーカーには出費を惜しまない彼らがグルメやファッションなど一通りの遊びを終え、子育て(という創作活動)の楽しさに目覚めたという。 キーワードはおしゃれ、知的、ナチュラル。「健康に(またはセンスが)良いが価格も高い」子ども向け商品やトレンドスポットを生み、支える。
彼らが「子どものいる生活の楽しさ」を享受する様子を見た若者も積極的に子どもを作る。非婚カップルの出産も多いことから、伝統的価値観の復活よりボボのような新しいライフスタイルが出生率を押し上げているとの見方も生まれているようだ。
見栄のためにブランド品に浪費することよりも、自分がこだわる実用品に大金を投じるといった、ボボの価値基準を例示すると、次のようになります。
好きなもの 嫌いなもの 子ども シャンゼリゼ通り オーガニックフード 金のネックレス エスニックフード 純フランス料理 ボサノバ ブランド服 ワールドミュージック MTV カフェのテラス席 ハリウッド映画 リベラシオン(新聞) マクドナルド MUJI ほとんどのテレビ局
現在日本で注目を集めている、ライフスタイル提唱型のマーケティング・キーワードは、 健康と環境に優しいライフスタイルを表す LOHAS(Lifestyles of Health And Sustainability、日本語ではロハス、またはローハス)です(LOHASの登録商標からライセンス収入を目論むのは「のまネコ」の二の舞?)。
ロハスに比べれば、ボボスがマスコミで取り上げられる機会は、ほとんどないと言っていいでしょう。しかし、ボボズのコンセプトも最初に日本に紹介されたタイミングで、ロハスに大きく遅れをとったわけではありません。情報源は、『日本版BOBOSの登場――柔らか頭の新富裕層』(2005年11月25日 日経流通新聞MJ 4面)です。
フランスでBOBOの名が普及したのは01年。最近もモロッコ式サンダルがBOBOS族の支持でヒットしたという。韓国でも02年時点ですでに普及。日本でも同書の邦訳が02年「ボボズ」の題で出版され、書評でかなり話題になったが、一般に広まるまでには至らなかった。
邦訳は少し早過ぎたかもしれない。帯の宣伝文句は「仕事は遊びで遊びが仕事 気がついたら億万長者」。例はアップルコンピュータの創業者スティーブ・ジョブズ氏。しかし当時の日本のIT成功者は孫正義氏、成毛真氏、鈴木幸一氏などネクタイを締めたビジネスマン。若者層は成功者以前の段階。いずれもジョブズ氏と重ならなかった。イメージリーダーが不在では新語も広まらない。
ところが最近になって、ようやくボボスもマーケティング・キーワードとして火がつき始めました。
空気の変化を反映してか、昨年から今年にかけ、ビジネスやマーケティングの現場で「BOBOS」という言葉を目にする機会が増えた。昨年春、東京・品川の駅ビル内に開店した「BOBOS」は米ボボズ族のスタイルや健康志向をテーマにしたレストラン。今年春、東京・銀座の松坂屋に開店した新タイプの家具店も、マーケッターの間で「BOBOS的消費者狙い」かと話題になっている。
米国のチェスター・ドーソン著「レクサス」(04年、邦訳は今年出版)第2章の題はずばり「ボボズを探せ」。トヨタ自動車が米国でレクサスブランドを立ち上げる時、アメ車を偏愛する伝統的なカネ持ちでもなく、自らのカネ持ちぶりを顕示するためBMWを選ぶヤッピーでもない、「頭の柔らかい」第3の富裕層、すなわち「後にBOBOSと呼ばれる人々」をターゲットに定めたことが「成功の土台」だと分析する。
iPod、iTunes の爆発的なヒットに加え、スタンフォード大学での感動的なスピーチ"Stay Hungry. Stay Foolish"で、スティーブ・ジョブズの人気が日本でも盛り上がりつつあります(天才ビル・ゲイツがスティーブ・ジョブズのようなカリスマになれない理由)。また、レクサスの差別化マーケティングも、その成否が注目されています。ボボズ・マーケティングが日本で定着する可能性もゼロではないでしょう。
話を冒頭の少子化問題に戻します。果たして、ボボズのライフスタイルがマスコミで取り上げられる機会が増えれば、日本でも育児を楽しもうという意識改革が起こるのでしょうか? 確かにボボズはごく少数の富裕層に対して、子育ての喜びを再考するきっかけを与えるかもしれません。
しかし、現在の日本社会では、持てる層と持たざる層との二極分化が進んでいます。この現象を如実に物語るのが今年のベストセラー書籍です。今年の前半に売れたのが、年収1億円以上の富裕層の実態を調査した『日本のお金持ち研究』です。一方、現在売れているのが、年収300万円で結婚もできない若者の生態を述べる『下流社会 新たな階層集団の出現』です。
やはりフランスで実施されているような支援策が充実しないと、日本全体の少子化問題は解消しないこと明らかでしょう。
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