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名門マンUすら赤字転落の危機を迎えるスポーツビジネスは所詮チーム成績次第

2005年12月01日

TBSvs楽天問題が一応の決着を見ましたが、同時期に登場した阪神電鉄vs村上ファンドの方は、このところ目だった動きが見られません。村上世彰代表もマスコミを通して発言する機会も減っているようです。興味対象は新日本無線のTOBに移ってしまったのでしょうか? 

そんな中で発表された阪神電鉄の決算は、絶好調でした。 情報源は、『阪神、最高の決算に――今期「安定配当を継続」』(2005年11月23日 日本経済新聞 朝刊 9面)です。

阪神電気鉄道は22日、2006年3月期の連結純利益が前期比22%増の60億円になる見通しと発表した。従来予想は42億円。保有するプロ野球球団「阪神タイガース」のセ・リーグ優勝に伴い野球関連の事業が好調で、売上高と利益は過去最高となる。

連結売上高は5%増の3,150億円となりそう。タイガースのグッズ販売や子会社の阪神百貨店が実施した優勝記念セールなど野球関連の売上高は37%増の291億円となる。沿線の宅地開発が寄与し、鉄道収入も0.3%増える。

阪神電鉄の好決算は、やはりタイガースのセ・リーグ優勝の恩恵を受けた結果であることがわかります。この影には、阪神球団の地味なファン拡大へ向けての努力も、見逃せません(村上ファンドの親会社株取得で注目を集める阪神球団のマーケティング戦略)。

そうは言っても、スポーツビジネスはやはりチーム成績次第です。成績が振るわなくなれば、一転赤字に陥るリスクを抱えた厳しいものです。 情報源は、『英マンU、赤字転落の危機――欧州サッカーの名門、経営に激震』(2005年11月29日 日経産業新聞 4面)です。

欧州プロサッカー屈指の名門、英マンチェスター・ユナイテッド(マンU)が激震に見舞われている。最大の広告スポンサーの一つである英ボーダフォンから今期限りで契約を打ち切られたからだ。米国人富豪の買収に伴い巨額の借入金負担も抱え、高額の放映権収入をもたらす欧州チャンピオンズリーグ(欧州CL)の結果次第では赤字に転落しかねない。世界で「最も裕福なチーム」とされたマンUだが、スポーツビジネスの難しさをみせた格好だ。

「常勝チーム」とされたマンUだが、今シーズンの成績は低迷、イングランドリーグで首位のチェルシーから勝利ポイントで大きく離されている。さらに今月はファンの間で最も人気が高いロイ・キーン主将が他選手への批判で首脳陣と衝突して退団。英サッカー業界関係者の間では「ボーダフォンがマンUに見切りをつけた」との見方が多い。

加えて問題なのは欧州CLでの不振だ。マンUは12月初め、ポルトガルの有力チームのベンフィカとのアウエーゲームに負ければ、トーナメントに進めず、テレビ放映権料などを含め1,500万ポンドと大きな減収要因となる。

こんなマンUですが、わずか1年ほど前までは、世界最大の年商と利益を誇るプロスポーツビジネスの理想像とされていました。その最強のビジネスモデルに注目したのが、米国の大富豪グレーザー氏です。今年の6月に7億9000万ポンドで同氏に買収されたマンUは、上場廃止となりました。買収以降数ヶ月で、チームのオーナーともども経営形態も一変することになったのです。

チームの業績が悪化した場合、グレーザー氏に多額の融資をしたヘッジファンドが経営に大きな影響を与えかねず、熱狂的なファンの反発も生じかねない。グレーザー氏が買収に意欲を示してから一年余り、マンUはまさに正念場を迎えている。

グレーザー氏がマンUを買収したことと、チーム成績との間には何の因果関係もありませんし、ボーダフォンがスポンサー契約を打ち切った理由も、低迷するチーム成績の影響でしかありません。しかし、すべてのマンUファンがこのように冷静に考えるとも思えません。マンUの歯車が狂い始めた責任を、外国人オーナーのグレーザー氏に求める声も、大きくなってくるのではないでしょうか。

このようにスポーツビジネスは、すべてがチーム成績次第といった性質の強いものです。阪神球団に興味を示している村上氏も、このようなハイリスクな投資には手を出すべきではないでしょう。もし、来期タイガーズが一転して成績不振に陥ったとします。ファン心理としては、その責任の一端を無用な混乱を引き起こした村上氏に求めてくる可能性もあるのではないでしょうか?

但し、村上氏がファンドマネージャーという立場を離れて、純粋に一ファンとしてタイガースのオーナーになりたいという野望を持っているのであれば、話は別です。ただしその場合は、ファンドからではなく、私財を投じての球団買収を考えるべきです。よほどの条件を出さなければ、阪神電鉄とファンも納得しないので、現状では現実的な選択肢とはなりませんが。

大金持ちがプロスポーツチームのオーナーになっても、必ずしも失敗する場合ばかりではありません。パトロン道をまっとうすれば、成功する場合もあります。例えば、プレミアリーグで昨年優勝し、今年も首位を独走しているのがチェルシーです。わずか2年前に当時ボロボロ状態のチームを買ったのが、ロシアの石油王アブラモビッチ氏です(母国ロシアの非難どこ吹く風、金満チェルシー3冠へ)。

アブラモビッチ氏は昨季開幕前の03年7月、巨額な負債を抱えていたチェルシーを負債額を含む約278億円で買収し、さらに209億円を投じて11選手を獲得。外国人である同氏のあまりの金満ぶりに「金でトロフィーは買えない」と批判が集まる中、同氏はその後も着々と世界各国の代表クラスの選手を獲得。わずか2季目の今季、すでに2冠を手に入れた。

「買収後670日間で6億8340万ポンド(約1401億円)を投入」と2日付の英紙サンが報じたが、アブラモビッチ氏は「私は自分で楽しむために金を出しているだけ」と涼しい顔。英国の通信社は「欧州CL優勝はともかく、チェルシーが次のリーグ優勝まで50年間待たなくていいのは確実だ」と打電した。

アブラモビッチ氏は、ビジネスのためにプロサッカーチームを買ったわけではありません。「私は自分で楽しむために金を出しているだけ」とは、パトロン心理そのものです。

関西出身の村上氏がタイガーズのオーナーになりたいのであれば、まずはアブラモビッチ氏のような大富豪になることを目指すべきです。買収に成功した暁には、湯水のように私財を投じてチームを強くすればいいでしょう(まあ、そんなことはないでしょうが)。とにかく必要なのは、ファンドビジネスとしての投資と、自分の趣味とを分けることです。

なお、ボーダフォンは浦和レッズのスポンサーでもあります。こちらの方は今のところ打ち切りという話は聞こえてきません。



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村上ファンドの研究―巨大メディアを狙う「ヒルズ族」の野望
水島 愛一朗


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