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AOLとグーグルの提携とソフトバンクの等距離戦略に見るメディアを巡る攻防

2005年12月22日

一時はマイクロソフトとの業務提携に進むのではと伝えられたAOLは、一転してグーグルを選ぶことになりました。現在でもグーグルの検索連動型広告収入の10%は、AOLサイトからもたらされています。単純に考えれば、現状のビジネス関係の継続が優先された結果にも見えます。情報源は、AOL争奪戦、グーグルに軍配か--株式の5%を取得、提携継続へです。

The Wall Street Journal Onlineの米国時間16日付けの記事によると、AOL(本社:バージニア州ダレス)は、現在進めているGoogleとの交渉の一環として、Googleが提供する検索広告に加え、Googleの技術を利用した新たな広告も販売できるようになるという。

この記事では、匿名の情報筋の話として、この契約が成立した場合、Google側でも検索結果の広告リンクでAOLのウェブサイトを宣伝できるようになるとしている。この契約は同21日に開かれるTime Warnerの取締役会後に最終承認されるという。

グーグル、マイクロソフトの両社にとって魅力だったのは、AOLのポータルサイトとしての集客力(reach)です。ISP事業ではダイヤルアップからブロードバンドへの変化の波に乗り遅れたのがAOLですが、その集客力は今なお健在です。先頃ニールセン・ネットレイティングスが発表した、主要ウェブサイトの11月の米国内利用者数は、このように数字になっています(Nielsen//NetRatings Reports the Fastest Growing Web Sites Year-Over-Year Among Top Internet Properties: Apple, Google and Amazon Take the Lead)。



AOLの月間ユニークユーザ数は74百万人で、全サイト中第5位です。しかし、AOLが他のサイトを圧倒しているのは、6時間を超える平均月間サイト滞留時間の長さにあります。2位のヤフーの滞留時間でも、この半分の3時間しかありません。上位10社の中で、ユーザを留める力のあるメディアと呼べるのは、AOLとヤフーだけと言ってもいいでしょう。

一方AOLと提携するグーグルは、ユニークユーザ数は対前年比で29%アップと大きな伸びを見せているものの、滞留時間は1時間未満です。グーグルもニュースや地図等の新しいコンテンツの充実を図っています。しかし、その基本機能は検索であることには変わりありません。ユーザは目的の情報が得られれば、グーグルに留まることなく他のサイトへ流れていくので、必然的に長いサイト滞留時間は期待できません。

しかし、現在のグーグルのビジネスモデルが、検索連動型広告をベースにしていることを考えると、サイト滞留時間が短いことは、必ずしも悪いとは言い切れない面もあります。ユーザが検索結果として表示された連動広告をクリックして、グーグルのサイトから離れることによって成立するビジネスモデルだからです。

最初に紹介した記事の中で注目したは、「Googleの技術を利用した新たな広告」というところです。AOLのサイト滞留時間の長さを活かした、新たな広告手法が誕生する可能性を示唆しているようにもとれるからです。もし、新しい広告手法が実現すれば、AOLとグーグルの提携は大きな意味を持つことになるでしょう。

ところでこのAOLとグーグルの提携に関しては、すでに賛否両論が巻き起こっています。まずは肯定的に評価する意見の方から紹介します。情報源は、Google with AOL should beat MSN and Yahoo ?です。

Microsoft、Yahooも、Web1.0時代の”恐竜”的な存在だったAOLとの提携を模索していたが、結局AOLはGoogleとの縁談を選んだというわけだ。Yahoo もMSNもメディア的なアプローチで拡大してきたポータルであり、AOLとは業態が近く重なるところが多い。

Googleはその点、検索エンジンと広告配信システムというテクノロジー面での優位を持って急成長してきたサービスだから、AOLの事業とだぶるところが少なく(両社が)提携することによって得られるシナジーは、GoogleにとってもAOLにとっても大きい。

確かにマイクロソフトはメディア的なアプローチを志向してきたことは事実でしょう。しかし、マイクロソフトのサイト滞留時間がグーグル以下であることは、ユーザにはメディアとして見なされてはいないことの証拠ではないでしょうか。したがって真のメディアになるために、マイクロソフトにはAOLが必要であったはずです。現状としては両者の業態が重なるマイナス面は少ないように思えます。

メディアとしての地位を確立しているヤフーが、早々とAOL争奪戦から撤退した理由も理解できます。グーグル、マイクロソフトのライバルに比べれば、AOLのコンテンツを追加してメディア化を促進する必要性が、ヤフーには少なかったからです。

次は反対意見を紹介します。タイムワーナー大株主、AOLとグーグルの提携に異議です。

Time Warnerの株主で億万長者のCarl Icahnは米国時間19日、同社の取締役会に対し「悲惨な結果を招く、目先だけの判断」を下さぬよう警告した。

IcahnはTime Warnerの取締役会にあてた公開書簡のなかで、「私も株主全員と同意見で、長期的な価値を生み出すTime WarnerおよびAOLの提携には反対ではない。

しかし、Googleとの提携は、(InterActiveCorpや)eBay、Yahoo、あるいはMicrosoftなどの企業との合併を含むあらゆる提携を困難にする、もしくは実質的に妨げるものになるかもしれない。もしそうならば、Time Warnerの取締役会が今まさに破滅を招く判断を下そうとしていることになり、私はこれを強く懸念している」と述べている。

同氏は、先ごろGoldman Sachsが公表したレポートを引き合いに出しながら、AOLにとっては徐々にメリットをもたらすeBayやInterActiveCorpとの提携が最良の選択肢であり、一方MicrosoftのMSNやGoogleは最悪の提携相手だと述べている。

アイカーン氏はグーグルとの提携に反対していますが、提携先がヤフーやマイクロソフトであっても同じように反対したのではないでしょうか? 要するに、この3社との間に等距離に近い形をとっていた方が、長期的な戦略の自由度を確保できるという主張だと思います。

同氏が提携先として薦めるイーベイは、オークションビジネスだけでは成長の限界が見え始めています。イーベイが、ほとんど相乗効果の期待できないスカイプを買収したのは、その焦燥感の現れと見て取れます。そのようなイーベイであれば、グーグルよりも有利な条件を引き出せる可能性があったはずだと、株主が考えたとしても不思議ではありません。

等距離戦略という言葉で思い出したのが、先頃ソフトバンクが発表した「Yahoo!動画」の新たなビジネス展開です。 情報源は、ソフトバンク、動画配信を本格化 テレビ各局も参加検討です。

既にドラマなどでコンテンツパートナーとなっているテレビ朝日のほか、NHKがドキュメンタリー番組の配信を開始した。日本テレビ放送網、東京放送(TBS)、フジテレビジョン、テレビ東京とも具体的なコンテンツ選びや提供形態、開始時期について協議を進める。

無料コンテンツの収益源は、動画の冒頭などに挿入する広告だ。コンテンツの視聴数に応じ、コンテンツパートナーと広告収入をシェアする仕組みだ。

広告は電通、博報堂DYメディアパートナーズ、アサツーディ・ケイ、サイバー・コミュニケーションズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムら大手が協力し、視聴者属性に応じたCM配信や効果の測定を行う。当初は資生堂やファーストリテイリングなど60社以上の国内企業が広告出稿した。

コンテンツ提供側、広告代理店側とも、その参加者の多彩な顔ぶれを見ると、ソフトバンクの底力の大きさを感じます。フジテレビを欲しがったライブドア、TBSと交渉を開始した楽天との戦略の違いを、ソフトバンクの孫正義社長は、次のように語っています。 情報源は、ソフトバンク、動画配信を本格化 テレビ各局も参加検討です。

ネット動画配信の本格展開を12月19日発表したソフトバンクの孫正義社長は、会見で「特定のテレビ局を支配するといったことがはやっているが、 1社とのみ深く関わるのはいいことではないと思っている」と述べ、テレビ局の経営権取得などを行う考えがないことを改めて強調した。

孫社長はYahoo!動画を配信ポータルサイトとして位置付け、「自らコンテンツを作るより、パートナーの手伝いをすることでプラットフォームの役割を果たしたい」と話し、コンテンツ企業各社が配信プラットフォームとして活用できる場として育てたい考えだ。

等距離戦略という道を選ばずに、あえてグーグルとの提携を決断したのがAOLです。両者の提携の成否は、グーグルが開発中の新たな広告展開にかかっていると考えたいと思います。何も新しいことが始まらなければ、AOLはただ一番勢いのあるパートナーを選んだと言う話だけに終わってしまい、あまり面白くもありませんし。



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