« 2006年09月 | メイン | 2006年11月 »

伊藤園傘下に加わったタリーズコーヒー松田公太社長の次なる目標は?

2006年10月31日

秋の夜長のコーヒーブランド物語に引き続き、シアトル系のカフェの話題を紹介します。スターバックスに次ぐシアトル系のカフェ「タリーズコーヒー」が、緑茶飲料のマーケットリーダー「伊藤園」の出資を受けて業務提携することになりました。 情報源は、『伊藤園、「タリーズ」株36%取得――コーヒー強化、「渡りに船」』(日経流通新聞MJ 2006年10月27日 19面)です。

緑茶飲料ではシェア29%を握る最大手の伊藤園だが、品ぞろえで大手に劣る同社は「おーいお茶」や「充実野菜」シリーズなど野菜飲料に次ぐ新分野を強化することが長年の課題。とりわけ、自販機販路の構成比が高く安定収益源になりうるコーヒー飲料の強化は至上命題だった。

伊藤園は「具体的な業務提携の申し入れはこれから」(幹部)というが、「タリーズ」ブランドのチルド(冷蔵)コーヒーや豆などをコンビニなどに強い伊藤園の営業網を活用して来年にも販売する予定。両社共に事業拡大をめざす北米市場でも相乗効果を発揮できる見込み。緑茶最大手のノウハウで苦境のクーツを再建することも可能だ。

「『タリーズ』と『おーいお茶』の強者連合が誕生した」(野村証券の沖平吉康アナリスト)と市場の評価もおおむね好意的。発表から一夜明けた25日、伊藤園株は前日比90円高の3,820円で引けた。お互いにメリットを確認できれば、株式の追加取得も検討する構え。コーヒー事業の成長など真価が問われるのはこれからだ。

出遅れているコーヒー分野で有力ブランドを手に入れたい伊藤園と、資本の充実安定化を望むFXGの思惑が一致した今回の業務提携を、株式市場も好感したようです。この記事の解説のように、両社の提携はビジネス戦略上のWIN-WIN関係の構築が目的であった、と考えていいのでしょうか?

しかし、実際にはもっと複雑な事情が隠されていました。情報源は、『スクープ詳報! 伊藤園がタリーズを傘下に 経営権争奪戦の舞台裏』(週刊ダイヤモンド 2006年11月4日 14~15ページ)です。

FXGの業績は売上高120億円だが、約12億円の最終赤字に落ち込んでいる(2006年3月期)。業績が振るわないなか、事業継続のために資金調達が必要となっていた。

業績不振の原因は、「新規事業が足かせ」(関係者)となっていることだ。事業の柱であるコーヒーチェーンの「タリーズコーヒー」は03年3月期の110店舗から順調に拡大し、今では全国に約300店舗を展開している。

その一方で、緑茶中心の和風喫茶店「クーツ・グリーンティー」は4年たった今もわずか11店舗。昨年9月に始めた中華風デザートの専門店「爽好果(シャンライカ)」も2店舗にすぎない。

和風喫茶、中華デザートは、日本のタリーズコーヒーを創業した松田公太FXG社長が、多角化路線の一環として日本独自に店舗展開してきたものです。タリーズコーヒーだけであれば、本来黒字化していたはずのFXGの収益の足を引っ張っているが、これらの新規事業です。FXGが新たな資金調達を必要としているのは、この新規事業のテコ入れのためです。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

面白コンテンツの紹介だけではない動画投稿サイトの変わった使い方

2006年10月29日

この前グーグルのYouTube買収について書いた記事 梅田望夫氏がワン・アンド・オンリーと礼賛するグーグルのブランド問題のアクセス数が、異常に多い日がありました。理由は、超有名な切込隊長BLOGYoutube、アメリカで利用者激減というエントリでリンクしてもらったからです。幸い概ね好意的な内容のコメントでしたが、「なぜ梅田氏が槍玉に挙げられているのか良く分からない」、と突っ込まれてしまいました。

本当は、「梅田氏の『グーグル以外はみんな馬鹿』といった論調には食傷モノ」と言いたかったのですが、小心者ゆえハッキリ切り込むことができなかったのです。ということで、今回も動画投稿サイトの話をします。

紹介するのは、サイバーエージェントが運営する動画投稿サイトの「AmebaVision」です。現在のオススメ動画を見ると、YouTubeに多い日本のテレビ番組やCMの違法コンテンツはありません。日本の広告代理店であるサイバーエージェントが、著作権を侵害しているコンテンツの掲載を許可しないのは当然でしょう。

だとすれば、日本テレビ番組やCMがない動画投稿サイトにどんなコンテンツがあるのか、というのもまた当然の疑問です。しかし、ここでも人気を集めているコンテンツは、外国のテレビ番組やCMの動画です。例えば、次のようなものがその代表例です。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

ブロガーの関心は高いが、依頼記事投稿型アフィリエイトの経験は1割

2006年10月29日

日経BP社が9月に実施した「個人ブロガーの活動実態調査」の結果の一部を以前紹介しました(ますます人気が加熱するドロップシッピングに冷やし玉を入れてみたが...)。45%のブロガーが何らかのアフィリエイトを利用しているが、その3分の2は過去6カ月の収入が「500円未満」という実態、を紹介したのが前回の内容でした。

最近では、従来型のアフィリエイトに加えて、企業からの依頼により特定の製品やサービスについてブログで記事を書くと、報酬がもらえる新しい形のアフィリエイトも登場しています。今回は、この依頼記事投稿型のアフィリエイトに関する調査結果を紹介します。情報源は、個人ブロガーの活動実態調査(後編)です。

企業から製品の評価などをブログ上で取り上げてほしいという執筆の依頼を今までに受けたことがあるかを聞いてみた。すると、「受けたことがある」と答えた回答者が12.8%を占めた。単純に比率として見れば高くはないが、一般にはまだなじみの薄いサービスとしては意外と経験者がいると見ることもできそうだ。

45%のブロガーが何らかのアフィリエイトを経験していることと考え合わせると、依頼記事投稿型の経験率12.8%は、かなり低いことがわかります。それでは、企業に依頼されて記事を書くアフィリエイトに対して、ブロガーは何か特別の抵抗を持っているのでしょうか?

図4 あなたに、企業(製品の製造・販売元や、そのPR代理店など)から「ある製品のことを、あなたのブログで記事として取り上げてください。謝礼はプレゼント致します。」といった執筆の依頼がきたとします。上記のような依頼を受けることに興味はありますか。(1つだけ):回答者数:312

記事の掲載依頼を受けることに興味はありますか 回答者全員に「もし今後記事執筆の依頼をされたら受けるか」を尋ねた結果が図4。
「書いてみたい」と答えた回答者は36.2%に達し、「興味はない」は14.1%にとどまった。
この設問では具体的な依頼内容など詳細な条件については尋ねていないが、それでも9割近くの人が興味を示していることになる。

86%ものブロガーが、依頼記事投稿型のアフィリエイトにも興味を示しています。実際に経験したブロガーの数が少ないのは、単に参加する機会がなかっただけだと考えるべきでしょう。実は、私はサイバーエージェントの子会社のサイバー・バズのサービスを利用しています。参考までに、そのサービスの仕組みを簡単に紹介します。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

市場も消化しきれないヤフーの決算を評価する鍵は社員のボーナスにあり

2006年10月27日

日本のヤフーの半期決算が発表されました。まずは経済紙の代表ということで、発表日翌日の日経新聞の記事を紹介します。情報源は、『ヤフー、純利益25%増、9月中間、広告や手数料など増加』(日本経済新聞 2006年10月24日 朝刊 19面)です。

ヤフーが23日発表した2006年9月中間決算は連結純利益が前年同期比25%増の268億円だった。新規顧客の受注で広告事業が伸びたほか、オークションやショッピング事業で出店数増に伴い手数料収入が増加。7~9月期では純利益が22%増の136億円だった。

米ヤフーはグーグルなどとの競争で苦戦を強いられているが、日本は依然としてシェアが高く増益が続いている。

売上高は26%増の1,004億円、経常利益は31%増の477億円だった。事業別の売上高では、広告事業が43%増の425億円、オークションやショッピングなどを含むビジネスサービス事業が43%増の221億円に拡大した。

対前年同期比で増収増益の結果ですので、常識的には好決算と考えていいでしょう。続けて同じ24日付けの一般紙朝刊の見出しを並べてみます。

  • 『ヤフー売上高、1000億円突破 ネット広告43%増 9月中間、過去最高』(朝日新聞 8面)
  • 『ヤフー、売上高1000億円突破/2006年9月連結中間決算』(読売新聞 8面)
  • 『ヤフー:売上高、初の1000億円台--06年9月中間連結決算』(毎日新聞 10面)
  • 『ヤフー 4~9月期、売上高は1000億円突破』(産経新聞 8面)

いずれの見出しでも、売上高の1,000億円突破が注目されています。さらに主要サイトの見出しです。

最後のCNETの記事を除けば、すべてのメディアが今回の決算をポジティブに評価します。それでは、なぜCNETだけが、ネガティブな表現をしているのでしょうか? 実は、CNETは四半期ベースの実績を、見通しと比べて評価したからです。同じ決算発表の数字でも、比較する対象が異なれば、その評価も異なるということです。

実は、冒頭に紹介した日経新聞の記事にも四半期ベースで分析した部分があります。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

梅田望夫氏がワン・アンド・オンリーと礼賛するグーグルのブランド問題

2006年10月25日

先ほどヤフーとグーグルの2006年第三4半期の決算が発表されました。かつてないほど両社の優勝劣敗が明らかになった決算と言っていいでしょう。一部にはグーグルの急成長も鈍化するとの予想もあっただけに、この結果はグーグルの底力を改めて印象づけるものになりました。情報源は、『グーグル:独り勝ち 7~9月期純益倍増 ヤフーと明暗』です。

米インターネット検索大手のグーグルが19日に発表した7~9月期決算は、純利益が前年同期比92.4%増の7億3300万ドルとほぼ倍増した。一方、ライバルの米ヤフーが前日発表した7~9月期決算は37.5%減の1億5900万ドルにとどまり、明暗を分けた。

グーグルは売上高も70.4%増の26億9000万ドルと好調。検索連動型広告(検索したキーワードに応じた広告)で先行し、広告収入が伸びた。

ヤフーは広告収入が伸び悩み、売上高も18.8%増の15億8000万ドルに終わった。提携戦略の差もグーグルの「独走」を許す要因となった。セメル会長兼最高経営責任者は「満足しておらず、改善に努める」と語り、新たな広告システムの導入を急ぐ考えを示した。

グーグルとヤフーとの差は、動画共有サイト「YouTube」がグーグルに加わったことにより、さらに広がることになるのでしょうか? しかし、爆発的な勢いでユーザ数を伸ばしていた「YouTube」も、ここにきてその勢いも若干弱含みに転換する兆候が現れてきました。情報源は、YouTubeの利用者、米で急減 日本でも横ばいにです。

ネットレイティングスが10月23日に発表した9月のネット利用者動向によると、動画共有サイト「YouTube」の利用者数が、前月と比べて米国で初めて減少し、日本でも横ばいとなっている。

利用者数(家庭からのアクセス)は、米国で1895万5000人と、8月(2298万9000人)より18%減、日本で734万3000人と、8月(731万9000人)からほぼ横ばいだった。

アクセス数の減少が日米同時に起こったのは、単なる偶然と考えるべきなのでしょうか? それとも「YouTube」が大きな転換点を迎えたと判断すべきなのでしょうか? 単なる一時的な成長の踊り場で、グーグル傘下に入った効果もあって「YouTube」のアクセス数は、翌月には反騰を見せてくれるのでしょうか? 10月のアクセス数の発表が今から楽しみです。

また、懸案であったテレビ番組の違法アップロードに関しては、「YouTube」の方でも事後的な対応には努力しています。これもグーグルに買収された影響なのでしょうか? 情報源は、日本の著作権関係23団体・事業者の要請で、YouTubeが約3万の著作権侵害ファイルを削除です。

社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)や社団法人日本映像ソフト協会(JVA)をはじめとする日本の著作権関係の23団体および事業者は10月20日、YouTubeへの要請によって動画投稿サイトYouTubeから著作権侵害ファイルが削除されたと発表した。

これは、YouTube上にテレビ番組をはじめとする膨大な量の日本の著作物が、著作権者、著作隣接権者の許諾がないままに投稿、掲載されている事態を重視し措置を講じたもの。関係権利者は10月2日から6日までの5日間を「YouTube対策強化週間」と定め、YouTubeに対し著作権侵害ファイルを削除するよう要請した。

グーグルによる「YouTube」の買収が発表されたのは、日本時間の10月10日です。したがって、日本の著作権関連者が削除を要請したのはそれ以前のことになるので、買収劇とは直接の関係はないようです。しかし、グーグルという巨大資本の一部となった「YouTube」が、今後は事後的な対応に止まらず、何らかの事前チェック機能を実装する可能性もありえるかもしれません。

ところで、『ウェブ進化論』の著者でミューズ・アソシエイツ社長の梅田望夫氏は、グーグルによる「YouTube」の買収をどのように分析しているのでしょうか? 梅田氏のインタビューが今週発売の週刊ダイヤモンドに掲載されました。情報源は、『ユーチューブ買収に見るグーグルの圧倒的優位と成熟』(週刊ダイヤモンド 2006年10月28日 141ページ)です。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

「Mixi takes all」と意外に強気な一面を見せるミクシィ笠原健治社長

2006年10月24日

前回の投稿ミクシィ笠原健治社長の記事はどれも同じで面白みに欠けるが...に引き続き、ミクシィ(Mixi)の笠原健治社長のインタビュー記事を紹介します。謙虚で堅実なイメージの強い笠原氏ですが、ミクシィの将来性に関する話題では、その発言は揺るぎない自信に溢れた経営者のそれへと変わります。特に現在570万人のミクシィの会員数の目標数値に関しては、かなり強気な数字を想定しています。情報源は、『実名性が商機を生む』(日経ビジネス 2006年10月23日号 64~6ページ)です。

問 これからどういうペースで増えていくと予想されますか。

答 目標は特にお話ししていないんですけれども、2007年3月末にSNSの利用者が1000万人を突破するという総務省の予測と、SNSの86%ぐらいはミクシィを使っているというデータがありますので、単純に来年3月末には900万人近くまで増加している可能性があると思っています。

最終的には、さすがに(ネット人口の全部を網羅する)7000万は無理だと思いますし、18歳以上の半分でもなかなか大変だと思っているので、3分の1ぐらいかなと想定しているんですけど。まぁ、2000万人から3000万人ぐらいですね。

笠原氏が18歳以上のネットユーザ数を引き合いに出しているのは、ミクシィのユーザは現在18歳以上に限定されているからです。日本に上陸すればミクシィの強力なライバルになると見なされている、米国最大のSNS「マイスペース(MySpace)」の利用可能年齢は、もっと幅広く14歳以上に設定されています。このためマイスペースでは、18未満のユーザに関して種々の利用制限を設けています。

迎え撃つミクシィ側は、利用可能年齢を引き下げるという対抗策は、当面予定していないようです。18歳以上の人口だけをターゲットにして、2,000万以上のユーザの獲得を目指すからには、これまでの成長スピードが鈍化することはまったく予想していないことになります。強気ともとれる目標を掲げる理由は、競合サービスの登場がミクシィにとって脅威とはならない、と考えているからです。

問 ヤフーや楽天などもSNSを始め、競合他社がどんどん出てきています。ユーザーが移ってしまうリスクについてはどうお考えですか。

答 基本的には移りにくいと思います。ミクシィの場合、自分の友達が10人いるとすれば、10人中5~6人ぐらいは既にミクシィを使っているという世界なんです。登録して日記を書けば、いきなり5~6人が見てくれて反応をもらえるし、彼らのうちの誰かが日記を更新している。

要は友達がたくさん使っているサービスかどうかというのが重要で、それはオークションなどと同じですよ。結局、ユーザーが多くいるオークションほど、出品する人や落札する人が増えますからね。携帯電話も同じで、やっぱり一定数を超えるとみんなが使っている携帯会社の方が便利になってくるでしょう。

問 収穫逓増の法則が働くと。群雄割拠にはならないサービスなんですね。

答 まあ、そうですね。SNSは独り勝ちしやすいサービス分野だと思っています。

SNSマーケットにおいては「ネットワークの外部性」(Network Externality)が典型的に働く構造にあるので、結局は「勝者独り占め型」(A Winner Takes All)の結果に落ち着くと、笠原氏は考えているわけです。@ITにはネットワークの外部性(ネットワークの外部効果)について、次のような説明があります。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

ミクシィ笠原健治社長の記事はどれも同じで面白みに欠けるが...

2006年10月22日

本日の朝日新聞朝刊別刷「be on Saturday」に、ミクシィ(Mixi)社長の笠原健治氏(30歳)の記事が掲載されました。笠原氏は、最近特にマスコミに登場する機会の増えた若手社長の1人です。私が知っている限りでも、この1週間に発表された笠原社長の発言をまとめた記事には、次のようなものがあります。まさに「ミクシィ/笠原健治ウィーク」という印象を強くしました。

  1. 会員570万人のカリスマ あのミクシィ社長は「PCオンチだった」(読売ウィークリー 10月16日掲載)
  2. 一人にひとつのmixiIDを目指す(WPC TOKYO 基調講演 10月19日講演)
  3. ネットで居心地よく「人の輪」つなげる(朝日新聞 be 10月21日掲載)
  4. 実名性が商機を生む(日経ビジネス 編集長インタビュー 10月23日掲載)

特筆すべきは、従来のIT系やビジネス系のメディアに限らず、朝日、読売といった一般の大手マスコミまでもが、こぞってミクシィと笠原社長のことを取りあげ始めたことです。果たして、これはこの1週間に限った一時的な現象なのでしょうか? それとも、今後も大手マスメディアはミクシィや笠原社長の動向を注目していくのでしょうか?

結論から言えば、これから笠原社長がマスコミに登場する機会が増えるのは間違いないと思います。マスコミが笠原社長に注目する理由は、ミクシィそのものの存在感の大きさにあります。いまや570万人のユーザを抱えるミクシィは、家庭からのアクセス数ではヤフーに次ぐ2位の位置を占めるまでになりました。また、本年9月に上場を果たしたミクシィは、時価総額において先行したIT企業のほとんどを凌駕する勢いがあります。

それとは別にマスコミ側には、笠原社長1人に注目せざるえない事情があると考えられます。ひところの笠原社長は、「はてな」の近藤淳也社長ら1976年前後に生まれたIT社長と一緒に、「ナナロク世才」として十把一絡げに扱われる存在でした。現在では、上場企業となったミクシィの躍進により、笠原社長の存在は頭一つ抜きん出た存在に代わりました。

地味で実直な印象の強い笠原社長に比べれば、面白い会社を標榜するはてなの近藤社長は、マスコミにとって格好の話題を提供してくれる存在でした。しかし、新たなサービスを開発するために、活動拠点をシリコンバレーに移した近藤社長へは、国内のマスコミの取材機会も限られてきます。

また、一般のマスコミにとっては、SNSというミクシィのサービスの方が、はてなの多様なサービスよりも理解しやすいので事前の勉強も不要で、取材対象としては好都合でしょう。なんと言っても未上場のはてなよりは、上場企業の方がニュースバリューも高いでしょうし。

また、ナナロク世代以前のIT系社長として一時マスコミを賑わした経営者も、このところ芳しい話題が少なく、マスコミの関心度は急低下しています。ライブドアの救世主として注目を集めたUSENは、先ほど発表された決算発表では一向に業績好転の兆しが見えず、輝きを失っています。増額修正を発表したミクシィとは対照的な業績です。この結果、イケメン社長のとしてもてはやされた宇野康秀社長の注目度も急落しました。

楽天にいたっては、三木谷社長のインサイダー取引の容疑と社員の大幅退職といった内容の記事を掲載した週刊新潮を、名誉毀損で正式に提訴しています。さらに、TBSとの業務提携が遅々として進まない問題を抱える三木谷社長自身が、取材を忌避しているせいか、マスコミへの登場機会もめっきり減りました。

ソフトバンクの孫正義社長は、最近は元祖ITベンチャーの社長というよりは、もはや通信事業会社の社長です。総務省の免許の下で大人しく事業を営む孫社長の言動には、以前のようにマスコミを喜ばしてくれる希有壮大な話を期待できません。このような状況を考えると、マスコミの注目がミクシィの笠原社長の一極集中するのも、 当然の結果でしょう。

さて、そんな笠原社長の起業の原点として紹介されているのが、小学校時代の水泳にまつわるエピソードです。この話は、読売ウィークリーと朝日新聞beで同じように取りあげられています。ちなみに、朝日の方では、こんな内容になっています。

起業の原点は、小学生時代にさかのぼる。スイミングスクールに通っていたが、進学する予定の公立中学校に水泳部がないことを知り、同級生らと「ないんだったら、自分たちでつくってみようと」思い立った。

「入学後に新しい部を作るのは難しい」と考え、進学先に校長あてに創部を願う手紙を書いた。当時の担任教師が中学校へ手紙を届け、校長に話をしてくれ、水泳部の新設が決まった。

「子供でも、自分から社会に働きかければ認めてもらえるし、現実を変えられるんだなと思った。大きな体験だった」

何となく「ウォーターボーイズ」を彷彿とさせるような話です。水泳部を創設するのに成功した笠原氏は中学、高校、そして腰を痛める大学2年までの10年間、水泳部に所属します。そして、大学3年生になってゼミを通じてIT企業の経営戦略に触発され、起業を志すことになります。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

スケベ心から始めたサービスが3,000万ドルでGoogleに買われる夢物語

2006年10月20日

先週メディアを席巻した話題が、GoogleによるYouTubeの買収でした。設立わずか2年たらずの会社が、株式交換という形にせよ、16億5,000万ドル(約1,965億円)に大化けしたのです。これに関連した話題として、Googleからの3,000万ドルでの買収の提案を断った企業が存在することを見つけました。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の先駆けとされるFriendsterが、その会社です。情報源は、グーグルのオファーを断り、10億ドルをつかみそこねた男の話です。

Friendsterが生まれたのは2002年。NetscapeのエンジニアだったJonathan Abramsという人物が、もともとは失恋の痛手にバネにして、出会い系サービスをつくるという着想を得て始めたものだったという。

Friendsterの創業時にシードマネーの一部を提供したMark J. Pincusという人物が、「簡単にいうと、Jonathanは女の子と知り合いたかったんだ。・・・友達のアドレスブックをブラウズして、ルックスの良い女の子を見つける手段としてFriendsterを始めたと、Jonathanが言うのを聞いたことがある」とコメントしているのが面白い。

根は創業者のスケベ心にあるとはいえ、企業の目的は自分が欲しいサービスを作りたかったのが、起業の理由です。IPOや事業売却による金儲けではないと考えれば、当初の目的は極めて純粋だったわけです。

実際にサービスが始まったのは2003年3月だったが、Friendsterはその後急激にユーザー数を増やしていく。ヴァイラル(口伝え)の力にうまく乗っかったおかげで、マーケティングにはお金をまったく使わなかったにもかかわらず、ユーザー数は約半年で300万人に達した。

Time、 Esquire、Vanity Fair、 Entertainment Weekly、US Weeklyといった有力な新聞・雑誌がFriendsterのことを取り上げ、創業者のAbramsは有名なテレビのトーク番組にまでゲスト出演した(この出演後、Abramsは「Yahoo!の2人の創業者だって、まだ深夜のトーク番組に出たことはない」と自慢していたという)。

マスコミに大きく取りあげられたことにより、一躍セレブの仲間入りを果たした創業者のAbramsは、女性には不自由しない身分になりました。この点では、本来の起業の目的は達成されたのかもしれません。こうして注目を集め始めたFriendsterに対して、Googleが3,000万ドルでの買収オファーを持ちかけます。

このオファーには、3000万ドルの評価という点のほかにも、ある特別な魅力があった。それは、自分のつくったサービスが何千万もの人々の目に触れるという可能性だ(金銭面についていえば、Googleがこの後2004年に株式を公開し、その株価がわずかな間に4倍以上に跳ね上がったことから、仮にAbramsがこの時オファーを受け入れてGoogle株を手にしていれば、いまでは10億ドルを超える資産の持ち主になっている計算になるそうだ)。

当時の3,000万ドルのGoogle株式が、いまでは30倍になって10億ドルの価値があるというのは、あくまでも計算上の話です。もちろん3,000万ドルとして考えても、生まれて1年の企業につく値段としては、破格な金額であることには変わりません。いずれにせよ、Abramsはこの申し出を断ります。将来FriendsterをIPOすることによって、一攫千金を目論んだベンチャーキャピタリスト(VC)の強い働きかけがあったからです。

Kleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)のJohn Doerrをはじめとする、シリコンバレーのVCが、Googleへの売却を思いとどまらせるべく、「株式の一部と引き替えに資金を提供し、また援助もするから、Friendsterを数億ドルもの価値を持つ有力オンラインサービスにしていこう」とAbramsに働きかけた。

「Yahooの創業者らも AOLからのオファーを断ったから、後に(株式公開して)成功した。Microsoftのオファーを断ったGoogleにしても同様。オレたちが面倒を見るから、でっかい会社にしよう」といったところだろう。そして、Abramsのほうもあまり逡巡せずに「独自路線」を選択する決断を下した。

資金提供をしたVCは、Abramsに代わって新たなCEOをFriendsterに就任させます。しかし、新CEOは思った成果を上げられず、その後わずか12ヶ月間で3度のCEOが交代する事態を迎え、同社のマネジメントは混乱を極めます。技術面でもユーザ数の増加に伴うパフォーマンスの悪化、新機能の追加に失敗するなど、Friendsterは急速に当初の輝きを失っていきます。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

男前豆腐伊藤信吾社長のマーケティングの基本は日課のブログチェック

2006年10月18日

男前豆腐関係の話題を探してこのサイトを訪れる人が多いので、今週発売の週刊東洋経済に掲載された関連記事を紹介します。数々のヒット商品を生み出す男前豆腐の伊藤信吾社長の発想の原点は、営業マン時代にあったという話です。情報源は、『営業の知恵袋-“弱者の戦略”とは?-営業力でこんなに伸びた小さな会社のスゴイ営業』(週刊東洋経済 2006年10月21日 58~9ページ)です。

父親の経営する三和豆友に入社したのが24歳のとき。営業マンからのスタートだった。まず目の当たりにしたのは、豆腐が3丁100円という安値で売られる厳しい現実。にがり100%にこだわって作っても「豆腐だから」の一言で、先方の言い値で買いたたかれる。どうすれば他社製品と差別化できるのか――。

そこで生揚げを裸のまま専用容器に並べ、消費者が自分でビニールに入れるなど、独自の販売方法などを考え出した。だが、いくらやっても、結局は値段に戻ってくる。地をはうような営業からたどり着いた結論は、「営業がいくら頑張っても、売れないものは売れない。高くてもいいから、おいしい豆腐が売りたい」だった。

こうして伊藤氏は父親の伊藤健次社長に直訴して、営業に加えて三和豆友の商品開発を手がけることになります。伊藤氏が30歳の時です。その結果、オリジナル商品の「おたま豆腐」、「男前豆腐」を開発します。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

複雑な日本のマインドマップ事情を整理するにはマッピングが必要?

2006年10月17日

根強い人気のあるLife Hacksツールの1つが、英国人のトニー・ブザン氏が開発した図解表現法のマインドマップです。その本家マインドマッパーのブザン氏がマインドマップの本格普及に向け、日本で専門の会社を設立しました。情報源は、マインドマップ生みの親“公認”会社、国内で設立です。

“マインドマップの生みの親”トニー・ブザン氏が公認したという「ブザン・ワールドワイド・ジャパン株式会社(BWJ)」が設立された。代表取締役は神田昌典氏。

会社案内によると、設立日は2006年10月4日。今後はマインドマップに関するセミナー・イベントの開催、通信教育講座の販売、研修講師養成、講師派遣業務を行っていく予定だ。

同社は今後、11月26日に親子向けのセミナー(参加費5250円)とトニー・ブザン氏と神田氏を招いたディナーセミナー(同10万5000円)を行う。また、公認インストラクター(受講費84万円)と、シニア公認インストラクター(同525万円)の養成も予定している。

BWJ社の代表取締役に就任するのは、近著『お金と正義』が販売絶好調の経営コンサルタント神田昌典氏です。トニー・ブザンが兄のバリー・ブザンと一緒に書いた『ザ・マインドマップ』を翻訳したのも神田氏ですので、日本に本格進出する際のパートナーとしては適任でしょう。なお、本書は2005年11月にダイヤモンド社から発売されています。

つまり、これは書籍出版11年を経過してオリジナルのパートナーが再び手を組み、今度はセミナーをスタートするという話、と単純に考えておけばいいのでしょうか? しかし、実際はそれほどシンプルではありません。11年もの期間があれば、日本のマインドマップを巡る事情も大きく変化しています。BWJ社の「インストラクター募集告知」のページには、マインドマップの権利に絡む複雑な事情を示す記述が見られます。

アンソニー・ロビンズ、スティーブン・R・コヴィー博士に並ぶ、知の三大巨人の一人であるトニー・ブザンが、直接、あなたの指導を行います。

このような奇跡的なチャンスが降ってきた理由は、ただいま全世界規模で、トニー・ブザンがグループ再編を進めているからです。マインドマップ(R)については、全世界的に商標・知的所有権の保護・管理体制が整い、ブザン・センターズ・ワールドワイド、PLC【本社ロンドン、CEOキャロライン・ショット  http://www.buzancentresworldwide.com】 が、トニー・ブザン主導のもとに設立されました。

そして、その世界戦略の極めて重要な拠点として、この度、私、神田昌典を代表としまして、ブザン・ワールドワイド・ジャパン株式会社【英語名 BUZAN CENTRES WORLDWIDE JAPAN, KK】が日本に設立されました。当社は、マインドマップ(R)商標および知的所有権を使ったセミナー・講演会等の開催を正式認可された、日本における唯一の機関になります。

BWJ社が正式認可された、日本における唯一の機関と強調しているのは、実は日本国内でマインドマップのセミナーを実施している団体として、「ブザン・ジャパン(BJ)」が存在するからです。BJ社の代表であるがウィリアム・リード氏は、BJ社のサイトでは、次のように紹介されています。

アメリカ、ミズーリ州に生まれる。1972年早稲田大学交換留学生として来日。 日本語、合氣道、書道を同時進行で修得しました。

翻訳・通訳、ジャーナリストを経て、2005年1月、世界で5人目、日本では唯一のブザン・リミテッド公認マスタートレーナー資格を取得し、日本国内でブザンの知的資産を守り普及するための組織としてブザン・ジャパン(本国ブザン公認)を設立しました。

「本家・元祖」といった、国内のマインドマップ・セミナーの正統性を争う問題に発展しそうな話です。さらにBJ社の2005年7月11日のニュースリリースには、こういう記述もあります。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

MBAホルダーには「海外組対国内組」の単純な図式は当てはまらない?

2006年10月13日

以前の投稿で、MBAホルダーを挑発するようなタイトルの書籍『MBAが会社を滅ぼす』のことを紹介しました(1,500万円もかかる米国MBA留学を決断する前に読むべきミンツバーグ)。著者は、『戦略サファリ』『マネジャーの仕事』等の経営学の名著を書いたヘンリー・ミンツバーグ(Henry Mintzberg)、マギル大学教授です。教授は本書の中で、「業績不振の米国企業のエグゼクティブでMBA取得者の比率は90%」といったデータを示しながら、もはや従来型のMBAは時代遅れであるとの主張を展開しています。

マギル教授の指摘を実践したわけではないでしょうが、一昔前に比べると海外のMBAを取得する日本人留学生の数にも、減少傾向が見られます。1990年代の日本では、まさに「海外MBAバブル」と呼ぶに相応しい現象が起こっていました。1991年にペンシルバニア大ウォートン校に留学した本荘修二ジェネラル・アトランティック日本代表は、その頃の状況をこう振り返っています。情報源は、『本当に強い大学 2006-減少する海外MBA、増加する国内MBA-MBAブームの今』(週刊東洋経済 2006年10月14日 64~69ページ)です。

「当時はバブル直後で金融機関からの派遣の数がすごかった。800人中30数人が日本人。その多くは、ほとんど英語を使わずにゴルフばかりしていて、勉強をしっかりしていたのは少数派だった」

その後、日本ブームが去ると全盛期には年間400~600人に上った米国トップ20以上のスクールへの留学生は激減。現在、その数は160人程度まで減ったという。「02年ごろが海外MBA留学者数のピークで、今は当時に比べ10%減くらい」とMBA留学予備校ザ・プリンストン・レビュー・オブ・ジャパンの横山匡会長は言う。

東洋経済の記事では、日本人留学生が減少した理由として次の3つを挙げています。

1つ目が、会社派遣の減少だ。90年代前半は留学生の9割が派遣という年もあったが、現在は50%程度にまで低下。MBA取得後に派遣先の企業を辞める卒業生が続出したこともあり一部企業は派遣枠を絞った。特に、メガバンクの合併により、金融業界からの派遣が減少した。

2つ目の要因が、中国、インド、韓国からの受験者の増加だ。とりわけ中国からの受験者数増加はすさまじく、「ハーバードでも中国からの受験生が相当増えている」と江川雅子ハーバード・ビジネス・スクール日本リサーチセンター長は語る。

そして3つ目が国内MBAの台頭。昨年よりMBAプログラムを開始したグロービス経営大学院の鈴木健一事務局長は、「MOT(技術経営)を含めた広義のMBAホルダーは毎年3,000人くらい生まれているのではないか」と推測する。70年代の慶應大、国際大、神戸大らを皮切りに、専門職大学院制度施行が契機となって03年以降MBAプログラムが急増。その影響を受け、「トップ20以下のスクールを狙う層が国内MBAに流れている」(横山会長)。

海外校に代わって国内MBAが人気化した理由の1つは、まずその費用の安さです。国立大学ならば1年間の学費は50万円程度で済みます。慶應、早稲田などの有力私立校の場合は200万円に増えますが、それでもハーバードの400万円の半額に収まるので、その差は無視することはできません。

国内MBA校が人気化した2つ目の理由は、内容面でも国内MBA校が海外MBA校に急速にキャッチアップしてきたことにあります。今では、海外校と比べても遜色のないカリキュラムを提供できる国内校も、少なくないようです。

グローバル企業で働くのでなければ、海外企業の事例を英語で学ぶより、日本企業の事例を日本語で学んだほうが役に立つ。人脈という点でも、仕事に直結しやすいといえる。

キャリアの点でも、「米国トップ30のスクールよりも一橋大のほうが価値が高い」(横山氏)。実際、編集部が国内主要企業25社に行ったアンケートでも、商社など海外との交渉が必要な会社を除けば、「海外と国内のMBAは同じ評価」と答える企業が約4分の3を占めた。

サッカーの日本代表選手のように、MBAホルダーを「海外組対国内組」といった基準で区別することは、もはや意味を持たないことなのでしょうか? しかし、すべての国内MBA校が高い評価を受けているわけではないことも、また事実です。雨後のタケノコのように増殖した国内MBA校の中には、すでに厳しい評価を受けているところもあり、国内組内部で二極化が進行しています。

『国内MBAスクールガイド』などの著書がある国内MBA専門予備校ウィンドミル・エデュケイションズの飯野一代表取締役は「これから国内MBAの淘汰が始まる可能性が高い」と言う。その理由は明確。

「関東では慶應、一橋、早稲田、関西では神戸などの人気校を除けば、多くの大学が定員割れ。1カ月間準備すれば、ほとんど誰でも合格できる」からだ。つまり、供給(学校)の拡大に、需要(生徒)が追いついていないのだ。

2007年に訪れると言われている大学全入時代より一年前倒しで、選り好みさえしなければ誰でも入学できる「MBA全入時代」が実現しているのです。したがって、国内MBAの場合では「どこの」学校を選ぶかが、極めて重要な選択になってきます。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

51歳での死を公言するテレウェイヴ齋藤真織社長と大幅下落した株価

2006年10月12日

米国株式が連日高値を更新する中、日本の新興株式市場は下落基調から抜け出せない状況が続いています。11日はネット関連企業を中心に幅広い銘柄が売られた結果、ジャスダック平均株価、東証マザーズ指数、大証ヘラクレス指数が、そろって年初来安値を更新しました。

下の表は、新興市場の企業を株価の騰落率で並べたものです。情報源は、『日経ジャスダック平均年初来安値、新興企業株に見切り売り、ネット企業の成長見極め』(日経新聞 2006年10月11日 朝刊 16面)です。


主な振興上場企業の最近の株価騰落率(%)

騰落 銘柄名 市場騰落率
下落 テレウェイヴ J -49.6
インテリ J -38.3
インデックス J -35.0
楽天 J -34.0
CCI M -33.3
イートレード J -32.2
USEN H -29.7
サイバー M -28.8
スパークス J -23.0
エンジャパン H -18.9
上昇 JCOM J 9.9
ASSET H 6.5
ダヴィンチ H 3.4
マクドナルド J 2.6
フジミインコ J 1.9
(注)3市場が直近の戻り高値をつけた8月23日時点の株価と比較。

J:ジャスダック
M:マザーズ
H:ヘラクレス

下落銘柄の中で約50%となる最悪のパフォーマンスを見せたのがテレウェイヴという会社です。その社名は最先端のIT企業という印象を与えますが、主に従業員20名以下の中小企業に対してIT関連の経営支援サービスを提供するのが、その事業内容です。同社の社長自身も「一番格好の悪いIT企業」と、泥臭い実態を認めています。

こうした業務内容の会社には、正直なところあまり興味は感じなかったのですが、たたまたま同社の、齋藤真織(さいとうまおり)社長のインタビュー記事を見つけました。会社の地味なイメージからは想像できないほど、齋藤社長の発言は良く言えばユニーク、悪く言えば突拍子もないものです。かなり長文の引用が続きますが、その一部をご紹介します。

齋藤真織氏(40歳)は、上智大学卒業後、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入行し、企業派遣でMBAを取得します。帰国後は外資系証券のメリルリンチに転職し、2000年に株式会社テレウェイヴに取締役経営企画室長として入社。2005年に代表取締役社長に就任しました。インタビューはこの経歴に沿って進行します。

Y 大学は上智に行かれ、国際法を専攻されて。

はい、少子化担当相(インタビュー当時)の猪口先生のゼミでした。

Y 大学時代、ほかにどんなことをなさったんでしょうか。

まったく正反対のことを申し上げるようですけど、大学時代は7割以上、六本木で生活していまして、家にも帰らず。

当時、パーティー券を販売して生活の糧にするという、ふらちなサークルがたくさんあったんです。そういう方向に足を半分、残りの半分は、水商売に入っていて、夜半から朝6時になると、CNNというアメリカの情報番組(を編集する会社)で働いてました。JCTVという制作会社ですが、アシスタントディレクターのさらにアシスタントです。灰皿とかビデオテープががんがん飛んでくる世界ですけど、そこで夜から明け方まで生活する生活を送っていました。

Y 寝る暇がない。

そうですね。学校に行って、出席の返事だけして、寝ているのが普通でした。 資金繰り勉強のため銀行へ就職

Y 水商売というのは肌に合ったんでしょうか。

大好きでしたね。夜になると、社会的なことがまったく関係なくなるんです。1人の男とか女とか、すごく身近になる。いろいろな人たちと知り合ったし、いろいろなことも教えてもらった。結局、大学3年生の途中から、“なんちゃってベンチャー”を始めるんですけど、そこで出会った人たちから教えてもらったことがとても役に立った。

Y 事業家とか社長になりたいと考えていたということでしょうか。

このまま行ったら、僕は大きな組織に就職することはできないと思っていた気がします。やっていることを会社組織にできないかと考えていましたね。

Y そうなると、なぜ日本長期信用銀行(現・新生銀行)に行かれたのか、不思議な気がするんですが。

ベンチャーをやったときに、毎月のように仕入れ資金で苦しみました。海外輸入をやっていたんですけど、輸入してきて、実際にお客さんから(代金を)回収できるまで、ものによっては半年かかるわけです。その間の資金が常になくなる。貯金も食いつぶし、両親にまで借金してやっていて、「これがベンチャーの経営なのか」とものすごく悩んだんです。

資金繰りが必要だったと、今ではよく分かるんですけど、それを学ぶために、一念発起して「商社に行くか、銀行に行くか」というのが、最終的に僕が4年生のときに下した決断。「20代でお金のことを学んで、独立したい」というのが、そのときの理由でしたね。

そもそもサラリーマンとして一生を過ごす場所として長銀を選んだわけではありません。仮に齋藤氏がそう思っていたとしても、就職先である長銀の方が経営破綻で消滅したので、いずれにせよ一生同じ会社で勤め上げることはできなかったわけですが... 齋藤氏は長銀勤務時代に、社費留学でMBAを取得しています。MBAの効用に関しては次のように述べています。

Y MBAに関して、「これは役立った、これは役立たなかった」と、挙げていただくことはできますか。

その後、外資系に行って、それからベンチャーの経営をやっていて、(MBAでの経験が)ものすごく生きていますね。例えば、教授から「48時間以内に400ページの本を2冊読んで、5人のチームでプロジェクトを決めて発表しなさい」みたいな話があるわけですけど、そういう時間の使い方です。

日本人って、あうんの呼吸で分かるわけですけど、いろいろな国から来た人たちだと絶対まとまらない。価値観も考え方もまったく違う。それをすり合わせて、1つのものを作り上げていく。時間が決まった中で、あきらめずに粘り強く交渉しながら、最後、プレゼンというところまでやり続ける。

寝ずにやれば48時間フルに使えるとか、夜中の1時に図書館に集合してやるとか、「48時間でできることって、たくさんある」と思えたのが、あの2年間だったと思います。

MBA修了後に帰国した齋藤氏が選んだ転職先が、メリルリンチ証券です。国内企業から社費留学でMBAを取得し、その後外資系企業に転じるというキャリアそのものは、決して珍しいものではありません。

Y 戻られてどれくらいでお辞めになったんでしたっけ。

1年半ちょっとですね。もう船が傾いておりまして、私が辞めたのは国有化の3カ月前。デリバティブをやっている部署にいたんですけど。

Y それでメリルリンチに行かれると。

そうですね。

Y 目指すものとか、きっかけとか。

格好良く言えば、メジャーリーグで投げたいと思った、本音で言えば、ここまでやってきたものを換金したいと思った、というのが理由です。

Y どうでしたか、換金できました?

私の場合は、あきらめの悪い性格が功を奏して、比較的、成功できたんです。当時、結構ペイもよかったので、(メリルリンチには)1年10カ月しかいなかったんですけれども、たくさんギャランティーとボーナスをもらえたと思います。

メリルで高給を取っていた齋藤氏は、学生時代から抱いていた起業への憧れを再燃させます。そして複数の転職先候補から選んだのが、OA機器と公衆電話の販売を行っていた設立3年目のベンチャー企業テレウェイヴでした。

創業者の村山拓蔵社長(当時)から鮮烈な印象を受けたことが、テレウェイヴに決めた理由です。しかし、最初に村山氏と会ったときには、村山氏との会話はまったくありませんでした。第一印象は最悪です。

続きを読む  or 人気ブログランキングをチェックする
ワード

このアーカイブは分割しています
1 |  2  | 全て

アクセス解析 アクセス解析 レンタルCGI