米国株式が連日高値を更新する中、日本の新興株式市場は下落基調から抜け出せない状況が続いています。11日はネット関連企業を中心に幅広い銘柄が売られた結果、ジャスダック平均株価、東証マザーズ指数、大証ヘラクレス指数が、そろって年初来安値を更新しました。
下の表は、新興市場の企業を株価の騰落率で並べたものです。情報源は、『日経ジャスダック平均年初来安値、新興企業株に見切り売り、ネット企業の成長見極め』(日経新聞 2006年10月11日 朝刊 16面)です。
主な振興上場企業の最近の株価騰落率(%)
| 騰落 |
銘柄名 |
市場 | 騰落率 |
| 下落 |
テレウェイヴ
|
J
|
-49.6
|
| 〃 |
インテリ
|
J
|
-38.3
|
| 〃 |
インデックス
|
J
|
-35.0
|
| 〃 |
楽天
|
J
|
-34.0
|
| 〃 |
CCI
|
M
|
-33.3
|
| 〃 |
イートレード
|
J
|
-32.2
|
| 〃 |
USEN
|
H
|
-29.7
|
| 〃 |
サイバー
|
M
|
-28.8
|
| 〃 |
スパークス
|
J
|
-23.0
|
| 〃 |
エンジャパン
|
H
|
-18.9
|
| 上昇 |
JCOM
|
J
|
9.9
|
| 〃 |
ASSET
|
H
|
6.5
|
| 〃 |
ダヴィンチ
|
H
|
3.4
|
| 〃 |
マクドナルド
|
J
|
2.6
|
| 〃 |
フジミインコ
|
J
|
1.9
|
|
(注)3市場が直近の戻り高値をつけた8月23日時点の株価と比較。
J:ジャスダック
M:マザーズ
H:ヘラクレス
|
下落銘柄の中で約50%となる最悪のパフォーマンスを見せたのがテレウェイヴという会社です。その社名は最先端のIT企業という印象を与えますが、主に従業員20名以下の中小企業に対してIT関連の経営支援サービスを提供するのが、その事業内容です。同社の社長自身も「一番格好の悪いIT企業」と、泥臭い実態を認めています。
こうした業務内容の会社には、正直なところあまり興味は感じなかったのですが、たたまたま同社の、齋藤真織(さいとうまおり)社長のインタビュー記事を見つけました。会社の地味なイメージからは想像できないほど、齋藤社長の発言は良く言えばユニーク、悪く言えば突拍子もないものです。かなり長文の引用が続きますが、その一部をご紹介します。
齋藤真織氏(40歳)は、上智大学卒業後、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入行し、企業派遣でMBAを取得します。帰国後は外資系証券のメリルリンチに転職し、2000年に株式会社テレウェイヴに取締役経営企画室長として入社。2005年に代表取締役社長に就任しました。インタビューはこの経歴に沿って進行します。
Y 大学は上智に行かれ、国際法を専攻されて。
はい、少子化担当相(インタビュー当時)の猪口先生のゼミでした。
Y 大学時代、ほかにどんなことをなさったんでしょうか。
まったく正反対のことを申し上げるようですけど、大学時代は7割以上、六本木で生活していまして、家にも帰らず。
当時、パーティー券を販売して生活の糧にするという、ふらちなサークルがたくさんあったんです。そういう方向に足を半分、残りの半分は、水商売に入っていて、夜半から朝6時になると、CNNというアメリカの情報番組(を編集する会社)で働いてました。JCTVという制作会社ですが、アシスタントディレクターのさらにアシスタントです。灰皿とかビデオテープががんがん飛んでくる世界ですけど、そこで夜から明け方まで生活する生活を送っていました。
Y 寝る暇がない。
そうですね。学校に行って、出席の返事だけして、寝ているのが普通でした。
資金繰り勉強のため銀行へ就職
Y 水商売というのは肌に合ったんでしょうか。
大好きでしたね。夜になると、社会的なことがまったく関係なくなるんです。1人の男とか女とか、すごく身近になる。いろいろな人たちと知り合ったし、いろいろなことも教えてもらった。結局、大学3年生の途中から、“なんちゃってベンチャー”を始めるんですけど、そこで出会った人たちから教えてもらったことがとても役に立った。
Y 事業家とか社長になりたいと考えていたということでしょうか。
このまま行ったら、僕は大きな組織に就職することはできないと思っていた気がします。やっていることを会社組織にできないかと考えていましたね。
Y そうなると、なぜ日本長期信用銀行(現・新生銀行)に行かれたのか、不思議な気がするんですが。
ベンチャーをやったときに、毎月のように仕入れ資金で苦しみました。海外輸入をやっていたんですけど、輸入してきて、実際にお客さんから(代金を)回収できるまで、ものによっては半年かかるわけです。その間の資金が常になくなる。貯金も食いつぶし、両親にまで借金してやっていて、「これがベンチャーの経営なのか」とものすごく悩んだんです。
資金繰りが必要だったと、今ではよく分かるんですけど、それを学ぶために、一念発起して「商社に行くか、銀行に行くか」というのが、最終的に僕が4年生のときに下した決断。「20代でお金のことを学んで、独立したい」というのが、そのときの理由でしたね。
そもそもサラリーマンとして一生を過ごす場所として長銀を選んだわけではありません。仮に齋藤氏がそう思っていたとしても、就職先である長銀の方が経営破綻で消滅したので、いずれにせよ一生同じ会社で勤め上げることはできなかったわけですが... 齋藤氏は長銀勤務時代に、社費留学でMBAを取得しています。MBAの効用に関しては次のように述べています。
Y MBAに関して、「これは役立った、これは役立たなかった」と、挙げていただくことはできますか。
その後、外資系に行って、それからベンチャーの経営をやっていて、(MBAでの経験が)ものすごく生きていますね。例えば、教授から「48時間以内に400ページの本を2冊読んで、5人のチームでプロジェクトを決めて発表しなさい」みたいな話があるわけですけど、そういう時間の使い方です。
日本人って、あうんの呼吸で分かるわけですけど、いろいろな国から来た人たちだと絶対まとまらない。価値観も考え方もまったく違う。それをすり合わせて、1つのものを作り上げていく。時間が決まった中で、あきらめずに粘り強く交渉しながら、最後、プレゼンというところまでやり続ける。
寝ずにやれば48時間フルに使えるとか、夜中の1時に図書館に集合してやるとか、「48時間でできることって、たくさんある」と思えたのが、あの2年間だったと思います。
MBA修了後に帰国した齋藤氏が選んだ転職先が、メリルリンチ証券です。国内企業から社費留学でMBAを取得し、その後外資系企業に転じるというキャリアそのものは、決して珍しいものではありません。
Y 戻られてどれくらいでお辞めになったんでしたっけ。
1年半ちょっとですね。もう船が傾いておりまして、私が辞めたのは国有化の3カ月前。デリバティブをやっている部署にいたんですけど。
Y それでメリルリンチに行かれると。
そうですね。
Y 目指すものとか、きっかけとか。
格好良く言えば、メジャーリーグで投げたいと思った、本音で言えば、ここまでやってきたものを換金したいと思った、というのが理由です。
Y どうでしたか、換金できました?
私の場合は、あきらめの悪い性格が功を奏して、比較的、成功できたんです。当時、結構ペイもよかったので、(メリルリンチには)1年10カ月しかいなかったんですけれども、たくさんギャランティーとボーナスをもらえたと思います。
メリルで高給を取っていた齋藤氏は、学生時代から抱いていた起業への憧れを再燃させます。そして複数の転職先候補から選んだのが、OA機器と公衆電話の販売を行っていた設立3年目のベンチャー企業テレウェイヴでした。
創業者の村山拓蔵社長(当時)から鮮烈な印象を受けたことが、テレウェイヴに決めた理由です。しかし、最初に村山氏と会ったときには、村山氏との会話はまったくありませんでした。第一印象は最悪です。