向こう傷を恐れないドン・キホーテにはライブドアと同じ危うさも感じる
2006年01月26日
その好戦的な経営姿勢が、世間を騒がせることが多いのがドン・キホーテです。ライブドア報道の陰に隠れて、マスコミではあまり注目されていませんが、ドンキは持ち帰り弁当チェーンのオリジン東秀に対して、TOBを仕掛けています。これに対してオリジン東秀の経営陣は、断固拒絶です。 情報源は、『ドン・キホーテによるTOB、オリジンが反対』(2006年1月24日 日本経済新聞 朝刊 12面)です。
オリジン東秀は23日、ドン・キホーテがオリジン東株の過半数取得を目指して実施している株式公開買い付け(TOB)に反対すると発表した。両社の今後の出方次第で敵対的買収合戦に発展する可能性もある。
オリジン側はドン・キ側が構想する次世代型コンビニエンスストアの詳細や共同事業によるシナジー効果など5項目について質問書を郵送するとともに、株主が最適な選択をするにはTOB期間が短いとして、締め切りをドン・キ側の定めた2月9日から同24日に延長するよう求めた。これらに対する回答期限は27日。
ライブドアの堀江元社長や楽天の三木谷社長も、敵対的TOBをテレビ局買収の最終手段として視野に入れていたようですが、結局は実行に踏み切ることはできませんでした。日本企業の敵対的TOBの第一号となった、夢真ホールディングスによる日本技研開発へのTOBも、失敗に終わっています。失敗の責任を取って夢真の鎌田博史社長は辞任することになりました。最近では耳にする機会が増えた敵対的TOBも、実際には成功する確率は極めて低いものです。
ドンキ側の回答期限は明日の27日です。その結果、もし敵対的TOBに発展したとしたら、ドン・キホーテに勝算はあるのでしょうか? そして、もしTOBが失敗に終わった場合は、万年強気でなるドンキの安田隆夫会長も、何らかの経営責任を取る覚悟はあるのでしょうか?
しかし、敵対的となってしまった両社の関係も、その始まりはしごく友好的なものでした。それがなぜ、敵対的TOBという展開を迎えることになったのでしょうか? その経緯を安田会長が語っています。情報源は、『「新業態のためのTOBだ」 ドンキ安田会長がオリジン買収を語る』(2006年1月23日 日経ビジネス 12ページ)です。
2005年8月にオリジン株式をドンキグループで23.62%取得し、共同で次世代CVS(コンビニエンスストア)という新業態店を開発するプロジェクトを進めてきました。実務者同士で既に20回ほど会合を持ちましたが、いまだに成果は上がっていません。両社の立場の違いが大きかったためです。
オリジンは現在のスタイルを崩したくなかったのでしょう。うちからの提案は聞くには聞くが、一向にキチンとした回答をしてこない。その最たる例を教えましょう。共同で新店舗を作るとなったら、新しい「屋号」が要ると考えるのが普通ですね。うちは「オリジナルドンキ」とか「安あん安あん」とか、100種類以上も提案した。だけど向こうは「1つの店舗にオリジン弁当とピカソという2つの看板を掛ければいい」と言う。これでは共同店舗と言えない。
話し合いを続けていく中で、「やはりオリジンは次世代CVSを本気でやる気はないんだ」「23%という持ち株比率では、立場の違いを超えられない」というのがだんだん分かってきた。弁当店をやりたいわけじゃないから、もともとオリジンの経営権なんか欲しくなかった。共同開発で話が進めば、それで良かった。それがうまくいかないから仕方なくTOBという手段を取った。今だって「やはり共同開発を進めましょう」と言ってこないかと思っているくらい。
安田会長の発言の中で注目したのは、「20回ほど会合を持った」が、「23%という持ち株比率では、立場の違いを超えられない」というところです。最終的にTOBという事態に至らなかった楽天とTBSは、今月の20日になって、やっと正式な業務提携委員会の初めての会合を持ちました(TBSと楽天、きょう提携委初会合)。
楽天のTBS株式の保有率は、20%以下です。この程度の影響力では、TBS側が楽天の提案を真剣に検討しそうもないのは、オリジンの立場と同じではないでしょうか? 一応和解にこぎつけたライブドアとフジテレビの業務提携も、結局大きな成果もなく終わりました(ネットで見つけた噂:ライブドア強制捜査タレコミとディズニー次期会長)。
全方位外交を目指すTBSと片思いの楽天の間にある溝は、どんなに話し合っても埋まることはありません。世間があっと驚くような斬新な共同事業が発表される確率は、極めて低いと思われます。中途半端な保有株では、嫌がる相手を無理やり動かすことはできないということです。
話をドン・キホーテに戻します。ライブドアほどではないにせよ、ドンキも世間を騒がせる企業であることは確かです。古くは、住宅地への出店を巡って周辺住民とトラブルを起こしたり、薬品のテレビ電話販売を厚生労働省に迫ったこともあります。
一連の放火事件以降、消防当局の立ち入り検査を受け、独特の圧縮陳列も改善指導の対象となりました。また、昨年3月には、棚卸しや店舗オープン時に納入業者に従業員派遣を強要したなどとして、公正取引委員会から独禁法違反(優越的地位の乱用)の排除勧告を受けました。しかし、ドンキはこの勧告を受け入れずに、審判で争う道を選択しています。小売業の排除勧告拒否は、26年ぶりのことです。
規制緩和の寵児と持てはやされ、現行法のグレーなところを突き、それがマスコミに取り上げられることの多いドンキは、ライブドアとの共通点があるような印象を与えます。向こう傷を恐れないドンキのコンプライアンスに関して、安田会長が語っています。トップが饒舌なところも、ライブドアと一緒でしょう。情報源は、ドンキは現場へ徹底的に権限委譲したい。だから、法令順守にこだわるです。
経営トップたるもの、法律に強くなければならない。私はこう考える。実際、新法はもちろん、従来法についても研究を怠らないようにしている。「法律を研究する」と言うと、「法の抜け穴を探っているのか」と勘ぐる向きがあるが無論違う。法を守るためにこそ、研究しなければならない。
なぜなら、ごく当たり前のビジネスをしているつもりで、実際には違法行為をしてしまう危険があるからだ。この危険を避けるために、法の研究が欠かせない。逆に、過去の常識で考えるとかなり違和感がある行為にもかかわらず全くもって合法、ということもありうる。その場合、経営上必要なら、その行為を続ければよい。
誤解のないように付け加えると、合法とはいえ「法ぎりぎり」あるいは「グレー」な場合、私はその行為をしない。あくまでも、ど真ん中の直球で勝負することにしている。それも競合他社が投げられない剛速球を投げたい。このため時にはフォアボールを出すかもしれない。もちろんデッドボールが許されないことは承知している。
自ら「グレー」の部分は狙わないと言明する安田会長と、確信犯のホリエモンを同一視することはできません。しかし、自分が常に正しいと信じているところには、安田会長の危うさも感じます。本人が「真っ白」と信じているものが、世間一般では「グレーもしくはクロ」と判断される可能性があることは、全く疑っていないからです。
消費者利益を第一に考えて、種々の規制と闘ってきたのがドン・キホーテです。その功績は大だと思います。しかし、あいかわらず近隣住民の間でのドンキのイメージは、芳しくありません。消費者の本音は、「ドンキはあると面白いけど、隣にできるのは困るの」あたりでしょう。
最近でも、周辺住民の反対に合って、店舗屋上に設置する予定だった絶叫マシーンを撤去しています(屋上の絶叫マシン撤去へ ドン・キホーテ六本木店)。建築基準法の合法性を声高に主張するドンキの企業姿勢を、納得できる人は多くはないはずです。
店舗が放火されるくらいですから、ドンキの敵の多さは、ライブドア以上かもしれません。マスコミもそんなドンキには、決して優しいわけではありません。情報源は、『名誉棄損訴訟でドンキ側が敗訴』(2005年10月27日 日本経済新聞 朝刊 38面)です。
出身高校の偏差値で採用を差別したとの週刊誌「フライデー」の記事で名誉を傷付けられたなどとして、ドン・キホーテと従業員3人が、発行元の講談社と編集人に計約1億1000円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。野山宏裁判長は「記事は真実で、違法性はない」として、請求を棄却した。
常に戦うドンキは、本件でも即時抗告です。こうして積もりに積もった企業イメージの悪さが、オリジン東秀が共同出店をためらう理由の1つだと言われています。もうひとつ完全に信じ切れないところも、ライブドアと一緒です。
とは言っても、規制緩和の先鋒としてドンキに期待する消費者が多いのも事実です。無駄なケンカはやめて、足元をすくわれないことを願うばかりです。歯に衣着せぬ言動と果敢な行動力でファンが多いところも、ライブドアと一緒なのですから。
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