リゾート施設の再生に奮闘する星野リゾート・星野佳路社長の経営手法
2006年02月22日
NHKの看板番組『プロジェクトX』の後釜として、今年の1月からスタートしたのが、『プロフェッショナル 仕事の流儀』です。毎回第一線で活躍するプロフェッショナルの1人の働く姿にフォーカスして、そのビジネス哲学を深く掘り下げようと試みるのが、番組の大まかな構成です。前シリーズのプロジェクトXが、過去の偉業に携わった人間の回想が中心であったのに対して、今シリーズは個人の現在進行形の姿を描いている点が、大きな違いとなっています。
これまで6回の放送がありましたが、本日の放送では第1回目放送分『"信じる力"が人を動かす 経営者・星野佳路』が、再放送されました。この時点で早くも再放送が登場するとは、「もう種切れになったのか」、「NHK全体の制作予算削減の影響か」など、いろいろ勘ぐることもできます。しかし、ここは番組キャスターの説明の「数多くのアンコールの要望があった」を、素直に信じることにしたいと思います。実はそう思えるほど、その内容が楽しめたからです。
これが、今回登場した星野リゾート社長の星野佳路(ほしのよしはる)氏の略歴です。
1960年長野県軽井沢町生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発(現JALホテルズ)、シティバンク銀行を経て91年(株)星野リゾート社長に就任する。主に経営が傾いた大型施設を引き受け、徹底したマーケティングと顧客満足向上等により次々と“リゾート再生”を果たす。また2005年にはゴールドマンサックスとの業務提携を発表、旅館再生にも新たな力を注ぐなど、積極展開で注目を集める。
番組の中では、主に同氏が伊東温泉の旅館「いづみ荘」の再生に取り組む様子が取り上げられていました。特に多くの時間が割かれていたのは、星野氏が現場の旅館従業員を指導する姿勢です。
その特色は、星野氏が自分で回答を示すのではなく、あくまでも従業員自らが回答を見つけ出す、いわゆるボトムアップ型のアプローチにあります。米国流の教育を受けた御曹司の星野氏が、現在のマネジメント・スタイルに行き着くには、次のような経過を辿っています。
現場のモチベーションを大事にする星野の経営術は、駆け出しの30代で味わったドン底体験から生まれた。軽井沢のしにせ温泉ホテルの長男として生まれた星野は、大学を卒業後、アメリカでホテル経営学を学ぶ。三一歳の時、父の後を継いで、社長となる。
一流ホテルを目指して、トップダウンで、アメリカ流の経営手法を持ち込もうとするが、ベテラン社員の反発を招き、100人の社員の三分の一が辞めてしまう事態に陥る。そんななか、収益が落ち込んでいたブライダル部門の責任者にひとりの若手を指名する。結婚式場のカメラマンをやっていた男性だった。
数ヶ月後、星野は、意外な光景を目にすることになる。仕事を任された若手達は、自分で考え、自分で決めることにだいご味を感じ、目をみはるほど、生き生きと働いていたのだ。
その姿を見て、星野のなかにある確信が生まれた。「任せれば、人は楽しみ、動き出す」
現場社員に考えさせるコーチングと権限委譲(empowerment)が、星野氏のマネジメントの基本ということでしょう。両方とも、決してユニークというものではありませんが、理論が実践されるうちに従業員が変わって行く様子を映像で見ると、やはり説得力を感じるものです。
リゾート施設専門に企業再生に取り組むのが星野リゾートであれば、リテール関連の企業再生を専門に扱うのがリヴァンプです。リヴァンプの澤田貴司氏も、再生の秘訣は現場にあると考えています。 情報源は、『リヴァンプ 足元に写実の視線を注げ』(2006年2月20日 日経ビジネス 39ページ)です。
「お客と現場の社員がそれぞれ会社のことをどう思っているか、現状認識をきちんとやる必要がある。再生に何が大事か。答えは、全部足元にある」
リヴァンプのもう1人の共同経営者の玉塚元一氏も、顧客との接点である現場の重要性を解くところは全く一緒です。
玉塚は「ブランドの構築とは、経営そのもの」と話す。「商品、販売手法、店頭での対応、コマーシャルといった消費者との接点のすべてが、顧客の企業に対する総合的な印象やブランドに関わってくる。消費者にどう思ってもらいたいか把握し、管理する作業、イコール経営だ」。
顧客との接点を広げるという課題を解くのに奇想は要らない、地道にブランドを磨くこと。言葉にそんな意味が含まれている。ブランドはたくさんの客を吸い寄せ、つなげる価値だからだ。
マネジメントにおける現場への権限委譲の大切さは、洋の東西を問いません。 スターバックスの元副社長で、現在はゲートウェイ、アディダス等を顧客に持つコンサルタントのアーサー・ルビンフェルド氏は、次のように語っています。 情報源は、『What Does It Take to Succeed in Retail? Ask Arthur Rubinfeld』です。
Companies need to distinguish when top managers need to be in charge versus when they need to empower their employees to make decisions. Airlines need to have central decision making over things such as flight schedules and security. But they need to empower people to make decisions when they can make life easier for customers.
When customers arrive at an airline counter, they often have unique travel needs. They are under a lot of stress. Travelers need to get someplace on time, and they are tired. They are relying on the transportation network. Companies that are involved with one-to-one contact should train people to make positive decisions for customers in such situations whenever possible.
最後に話を『プロフェッショナル 仕事の流儀』に戻します。この番組のキャスターは、気鋭の脳科学者茂木健一郎氏です。この種のテレビ番組は、往々にして誰をキャスターに持ってくるかでその印象も大きく違って来るものです。現在のところでは、茂木氏の起用はまずまず成功しているのではないでしょうか。
4月からは、村上龍氏をメインキャスターとした経済番組『カンブリア宮殿』が、テレビ東京系列でスタートします。番組では、村上氏がゲストの経済人をインタビューするということです。こちらの方も期待したいと思います。
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