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「民主党をあきらめない」メッセージと一緒に、本当のケジメが必要

2006年03月02日

永田寿康議員の堀江偽メール問題を早期収拾できない様子からは、民主党内部が相当混乱している状態にあることがうかがい知れます。私は民主党が昨年の衆院選で大敗を喫したのは、民主党の政策が国民的な指示を得られなかったというよりも、キャンペーン手法の失敗による影響の方が大きいと考えていました。

しかし、今回のメール騒動での一連の対応振りを見て、その考えを改めることになりました。予想以上に民主党はお粗末な組織のようです。ところで昨年度の民主大敗の原因の1つとして挙がっているのが、そのキャンペーンスローガン『日本をあきらめない』です。

これを作ったと言われているのが、PR会社のフライシュマン ヒラード ジャパンで、自民党のPR戦略を請け負ったPR会社は、プラップジャパンです。自民党の歴史的大勝利により、プラップ ジャパンと党の「コミュニケーション戦略チーム」を率いた世耕弘成議員の株も一気に上昇しました。この勢いに乗じた世耕氏は、『プロフェッショナル広報戦略』を出版までしています。

一般的に言って、『日本をあきらめない』のようなネガティブなメッセージを使うことには、大きなリスクが伴います。しかし、成功した場合のインパクトの大きさが、ネガティブ型アプローチの最大の魅力です。

例えば、1980年代中頃、VHS対ベータマックスの戦いで劣勢に立たされたソニーは、奇策の広告戦略で奇策によって、劣勢を挽回しようと試みました。

そんな折、1984年1月25日から4日連続で主要新聞に出されたソニーの広告は、目を引いた。

「ベータマックスはなくなるの?」「ベータマックスを買うと損するの?」「ベータマックスはこれからどうなるの?」とネガティブな問いかけで畳みかけ、最終日に「ますます面白くなるベータマックス!」と締めくくったこの広告手段の奇抜さに、世間はびっくりした。

ベータ方式の劣勢を報じるマスコミ、そしてベータファンの抱く不安に対するソニー独特の応じ方であった。

この広告が果たして、ベータマックスの凋落に歯止めをかける効果があったのでしょうか? 現実は、ベータマックスの凋落を加速したという意味で、まったく逆の作用が働きました。今まで安心して使っていたユーザも、ソーニーが自ら敗北を認めたと解釈して、ベータマックスを見限ってしまったからです。

真意がうまく伝わりさえすれば、ネガティブ広告の効果は絶大なので、マーケターが挑戦したくなる心理も理解できます。90年のエープリールフールに掲載された豊島園の「史上最低の遊園地」は、十分なインパクトがありました。


この広告は、「世間のみんなは、これが新聞広告である以上、豊島園が何を言おうが最終的には豊島園のことをよく言おうという意図を持ってやっている」ことをわかりつつ、こういう悪ふざけも「別にいいよ」という人たちがいることを想定している。

『読売ADレポート』2000年12月

豊島園の広告が成功したのは、ターゲット読者がこのコピーの真意を十分に理解していたからです。話を民主党の『日本をあきらめない』に戻します。このキャッチ・コピーのターゲットは、日本全国の有権者すべてという極めて広範なものになります。当然、国民を馬鹿したコピーと捉える人間も少なくないでしょう。ターゲットの反応が事前に予想できないネガティブ・アプローチには、このような危険が常に伴います。

ネガティブなメッセージを受けて、だから民主党へ投票するといったポジティブなアクションを導くには、かなりのエネルギーが必要となります。そこで大切になるのは、キャッチコピーに続くメッセージが、十分にポジティブと受け止められることです。

しかし実際には、キャッチ以外の部分のメッセージは全然伝わっていなかったというのが、私の印象です。結果論にはなりますが、『日本を信じる(ために)』といったような、ポジティブな言葉を使った王道路線が、正しい選択だったのではないでしょうか?

今回の偽メール騒動は、民主党に対する大きな不信感を国民の心に植え付けました。この失態を挽回するのは、簡単ではありません。民主党内で執行部を含めた責任者がケジメをつけるだけでなく、信頼感を取り戻すための積極的なPR活動も必要でしょう。

国民の間で不信感が蔓延した今こそ、『民主党をあきらめない』というメッセージが効果的だと思います。今回の事件を教訓にして生まれ変わった民主党に、もう1度チャンスをください、というのがメッセージです。

なお、「見捨てて欲しくない」と思っているのは民主党だけに限りません。「日航をあきらめない」「ライブドアをあきらめない」といったコピーが出てきても決して不思議ではありません。しかし、重要なのはコピーの文句ではなく、あきらめることを踏みとどめる力のある改革プランの提示であることは、言うまでもありません。


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