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チルド製品を増やすスターバックスと供給を絞るカイエンのマーケティング戦略

2006年04月10日

地域限定の話題なので知らない人も多いのかも知れませんが、スターバックス・ブランドのチルド製品が首都圏のコンビニでは販売されています。昨年9月に210円で発売された「ラテ」に、今月25日からは待望の「ミラノ」が加わることで、「ディスカバリーズ・シリーズ」揃い踏みとなります。情報源は、『サントリー、スターバックスディスカバリーズ』(2006年4月5日 日経産業新聞 5面)です。

サントリーが米スターバックスと共同開発したチルド(冷蔵)状態で売るカップ入りコーヒー飲料「スターバックス ディスカバリーズ」の売れ行きが好調だ。

2005年9月に東京や神奈川、埼玉、千葉のコンビニエンスストアで「シアトル(ラテ)」(写真左)と「ミラノ(エスプレッソ)」(右)を投入。販売数量が予想を上回り品切れとなったため、シアトルのみの販売に集約した。製造ラインを増強し4月25日から「ミラノ」の生産・販売を再開する。

店舗と同じコーヒー豆を使うなど素材にこだわり、賞味期限は2週間と短い。販売元はサントリー、製造元はタカナシ乳業。工場で1日13万本生産し、発注翌日には店に届く体制を敷いている。

スターバックス・コーヒー・ジャパンによると「飲んだ人のうち約3分の2がもう一度買いたいと答えた」。平日のビジネス街での売れ行きがいいが、最も売れるのは土曜日という。

気温が低くなるにつれて売れ行きが落ち着いたため、昨年12月には1店舗当たりの発注数量制限をなくした。だが甘さを抑え、よりコーヒーの風味が強い「ミラノ」の販売再開が人気に再度、火をつける可能性もある。

チルド製品が首都圏に限定されている理由には、製造パートナーのタカナシ乳業の製造能力の限界、鮮度管理の必要なチルド配送エリアの制約などの事情が考えられます。一方スターバックスの店舗の方では、Tully's coffee(タリーズ)EXCELSIOR CAFE(エクセルシオール)といったスターバックス同様のコンセプトを持った店舗との競争も激化しています。首都圏では今後急速な店舗数の増加が見込めないと考えたスターバックスは、コンビニのチャネルを利用して新たな需要の創造を狙ったのでしょう。

当初私は、プレミアム感のあるブランド・イメージを築いてきたスターバックスが、チルド製品を出すことに疑問を感じていました。熱心なファンには「まがいもの」ともとられかねないコンビニ専用の廉価製品を発売することは、ブランド・イメージを損なう危険性があると危惧していたからです。

結果的には、私の懸念は全くの杞憂であったようです。チルド製品がブランド・イメージを傷つけることもなく、店舗の販売と喰い合うこともありませんでした。それだけでなく、コンビニでは入手できない高価格のホット製品を強化することにより、店舗の客単価も上向いています。 情報源は、『スタバ、Mで400円超すホット飲料――客単価プラスに』(2006年3月13日 日経流通新聞MJ 5面)です。

昨年10月、Mサイズにあたる「トールサイズ」のホット飲料では初めて、400円を超すキャラメルモカ(430円)を試験的に発売したところ、予想に反し人気を博した。クリームやキャラメルソースなどのちょっとした工夫で、客単価が引き上げられると実感している。

かき氷風の冷たい飲料を除くと、ホットコーヒー(310円)、カフェラテ(340円)などMサイズの飲料はすべて300円台。「400円以上は売れない」が社内の常識だった。既存店の売り上げ減に苦しんでいたスタバは賭けに出た。

スターバックスは、コンビニで気軽に買えるチルド製品と付加価値を高めた店舗製品の組み合わせが成功したケースだと考えられます。しかし、同社がチルド製品を展開しているのは日本マーケットだけです。一定の品質を維持できる協力企業と、商品管理の行き届いたコンビニが存在する日本だから可能となったマーケティング戦略、と言えるのではないでしょうか。

しかし同じ消費財のマーケティング戦略でも、1,000万円を超える超高額商品ともなれば、ブランド管理の徹底したものが要求されるので、コーヒー飲料のように製品群を増やすようなことはありません。ポルシェが同社初のSUVとして発売した「カイエン」は、ブランド・イメージを維持するために独特のマーケティング戦略を採用しています。

ブランド維持の秘訣は、供給量を一定にコントロールして常にプレミアム感を作り出すことにあります。情報源は、『ポルシェSUV「カイエン」――快走の裏に「じらし」あり』(2006年4月7日 日経産業新聞 5面)です。

カイエンはポルシェ初のSUVとして2003年9月に発売。国内では日本法人のポルシェ・ジャパン(東京・目黒)がディーラーを通じて販売している。上級モデルは排気量4,500ccのV型8気筒エンジンを搭載。最高出力520馬力のターボ車の価格は1,850万円になる。

発売から3年たつが人気が衰える気配はない。販売台数は初年度577台、2年目が1,135台。3年目の2005年は前年と同水準の1,123台だった。現在も在庫はほぼゼロで、予約しても3~5カ月の納車待ちは当たり前だ。

「広島の販売店に1台残っているらしい」。どこからかうわさを聞きつけた東京在住の顧客が、広島のディーラーに電話で確認、その場で購入を約束する。「買えないと欲しくなる。それが消費者の心理でしょう」。ポルシェ・ジャパンの黒坂登志明社長は語る。

「供給台数は需要マイナス1」。黒坂社長が掲げる高級車販売の秘訣だ。千台の需要があると見込めば供給は999台に抑える。「品薄感」を演出することで、顧客が商品を手にした時の満足度は格段に高まり、口コミなどを通じてブランドイメージが向上する。じらし効果が生む好循環がカイエンの好調を支えている。

まさに消費者心理を考えた戦略です。鳴り物入りで登場した「レクサス」が必ずしも成功していていないのは、カイエンのような稀少感がないからかもしれません。

ところで世界には、筋金入りのスターバックス・ファンが存在します。例えば米国には、北米大陸のスターバックス店舗をすべて踏破することを生きがいにしているプログラマーもいます。Winter氏のホームページStarbucks Everywhreは、自分が訪れた店舗が日々刻々と記録されています。番外として日本の店舗の報告も掲載されています。

そんなスタバ・マニアのWinter氏が再び日本を訪れて、コンビニで売られているチルド製品を見つけたら、どう思うのでしょうか? かなりガックリしたりするのではないでしょうか? 是非感想を聞いてみたいものです。


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