ジーコ・ジャパンの戦績が長期高額化するスポンサー契約に及ぼす影響
2006年06月01日
世界最大のスポーツイベント、ワールドカップ・ドイツ大会の開幕が目前に迫ってきました。昨日のテストマッチで、日本代表がホスト国のドイツ代表に対して互角以上の戦い振りを見せたことで、国内の盛り上がりにもますます拍車がかかっていくことでしょう。
今回は、ワールドカップをビジネス拡大の最大の機会と捉えるスポンサー企業のマーケティング戦略を紹介します。ワールドカップビジネスの舞台裏によれば、ドイツ大会の直接的なビジネス規模は、約3000億円(FIFAおよび組織委員会の収入)と見込まれています。その内訳は次の通りです。
- 最大の収益源である放送権収入: 15億ドル(約1800億円)
- 15の公式スポンサーなどから得るマーケティング収入: 6億ドル(約700億円)
- 観客動員から得られる興行収入: 2億ドル(約240億円)
- ホスピタリティ・プログラムと呼ばれるプレスティージ・チケットからの収入: 約2億1000万ドル(240億円)
- マーチャンダイジング・ライセンスの収入: 1億ドル(約110億円)
今回のドイツ大会では15社が「オフィシャルパートナー」(うち日本企業は富士写真フイルムと東芝)、6社が「オフィシャルサプライヤー」として契約しています。これらの契約には、どんな差があるのでしょうか。 情報源は、『サッカーW杯にあふれる企業ロゴ スポンサー契約の仕組みは?』(2006年6月3日 週刊東洋経済 21ページ)です。
最上位に位置するオフィシャルパートナーは全世界の公式スポンサーとして、国際サッカー連盟(FIFA)と契約を結びます。マークや大会呼称を使用した広告宣伝活動を全世界で行うことができ、試合会場の看板広告もテレビカメラの正面に出すことが可能です。
一方のオフィシャルサプライヤーは大会開催国の国内のみで、マークや大会呼称を用いた宣伝活動が可能。そのため、ご当地企業が名を連ねます。
この2種類のスポンサー契約の下には、「ライセンシー」として、マークなどを商品につけて販売できる契約もあります。
オフィシャルパートナーの契約料は上がり続け、1社当たり50億円程度まで高騰しているとの説も。そのため、連続して大会をサポートしている企業はまれです。オフィシャルパートナー制度が導入された82年のスペイン大会以来、7大会連続で契約を結んでいるのは、コカ・コーラ、富士写真フイルム、ジレットの3社だけです。
日韓大会まで6大会連続でオフィシャルパートナーを務めてきた日本ビクターは「負担に見合った効果が得られない」とドイツ大会では姿を消しました。
これが、今回のワールドカップ期間中何度も目にするはずの15社のスポンサーのロゴです。
■オフィシャルパートナー(15社)
adidas, Anheuser-Busch, Avaya, Coca-Cola, Continental, Deutsche Telekom, Emirates, Fujifilm, Gillette, Hyundai, MasterCard, McDonald’s, Philips, Toshiba, Yahoo!
■オフィシャルサプライヤー(6社)
Energie Baden-Wu"rttemberg AG (EnBW), OBI, Hamburg-Mannheimer Versicherung, Postbank, ODDSET, Deutsche Bahn AG.
オフィシャルパートナーになると、製品・サービスカテゴリー毎に独占的な使用権が与えられます。例えば、非アルコール飲料のカテゴリーのコカ・コーラは、FIFAとの間で2022年(!)までの契約を更新しました。ことワールドカップに限っては、ライバルのペプシがつけいる隙はまったくありません。
また、オフィシャルパートナー契約は、大会期間中は他のすべてのスポンサー契約よりも優先されます。例えば、今シーズンまで高原直泰選手が所属していたハンブルグのホーム・スタジアムは、AOLがネーミングライツを保持しているために、通常では「AOLアレーナ」と呼ばれています。しかし、ワールドカップではAOLと同一カテゴリーのYahoo!がパートナーとなるので、AOLのネーミングは使われません。
続いて、ワールドカップを活用したパートナー企業のマーケティング戦略の事例を紹介します。最初は、大会公式サイトを運営するYahoo!です。 情報源は、『W杯サッカー開幕まであと1ヵ月――公式スポンサー特需で先制点』(2006年5月8日 日経産業新聞 20面)です。
2~3月にかけてはW杯メールマガジンの創刊に合わせて、15組30人分の日本対ブラジル戦の観戦ツアーなどプレゼント企画を実施したところ、20万人の読者を獲得した。
「これ以上の応募数を集めた企画は過去に1、2件しかない」(ヤフー)ほどの効果で、メールマガジンは大会期間中に週1度以上発行する。
ヤフーは4月に開設したW杯公式サイトの運営も通じて、利用者や企業広告の拡大と中長期的なブランド力の確立も目指す。公式サイトでは試合速報、チームや選手のデータベース、ゲーム、過去の名場面映像などを提供。「スポーツならヤフー」というイメージ作りにつなげる。
5月9日には、同社のスポーツ情報サイトでもW杯特集を始める。ニュースや人気選手のインタビューを掲載、ブログや掲示板を使った読者参加型もコーナーも活用する予定だ
大会期間中、世界中のYahoo!関連のサイトのアクセス数が、急増することは間違いありません。特に google の躍進によって苦戦している地域では、大きなプロモーション効果が期待できるのではないでしょうか。これに加えて、大会スポンサーの影響力はプレス関係者にも及びます。情報源は、ワールドカップ取材には、Yahoo!のIDが必須です。
私たち記者に対しても、Yahoo!が運営するメディア向けサイト「メディア・チャンネル」が提供されています。取材申請や入場を希望する試合の申し込み、そしてそれが受理されたかどうかの確認など、組織委員会とのほぼすべてのやり取りがこのサイト上で行われます。
そして、このサイトへログインするためには、取材申請手続きとは別に「Yahoo!ID」の取得が必要なのです。観客のみならずメディアに対しても、当然のようにスポンサーの独占的権利は行使されます。
続いて、前出の日経産業新聞から日本企業の事例も紹介します。
東芝は02年の日韓大会、今年のドイツ大会と連続で公式ITパートナーとなった。狙いは「グローバルに躍動する東芝グループ」という企業イメージを定着させること。パソコンなどIT機器の販売拡大にもつなげる考えだ。世界で中長期にブランドイメージを確立できるため、2大会を一度に契約した。
02年の日韓大会の後、特に韓国で東芝の認知度とブランドイメージが向上。韓国でパソコン販売の現地法人を立ち上げたこともあり、大会期間中に韓国での売上高は前年比3倍に高まったという。テレビ放映による露出効果も一大会で約20億円とはじいている。
ドイツ大会では、12会場とメディアセンター、ドイツ組織委員会のオフィスなどに計2000台以上のパソコンやサーバーを納入。東芝のエンジニアが応援チームとして現地のサポートをする。
さらに、世界中の東芝の現地法人でも、独自のマーケティング・キャンペーンを展開しています。情報源は、東芝:イングランド優勝ならパソコン代金を返金です。
東芝の英国現地法人は、サッカーのワールドカップでイングランドが優勝した場合、ノートパソコンの代金の66%を返金するキャンペーンを始めた。W杯の「オフィシャルITパートナー」として、販売チャンスを生かすのが狙い。同国内の購入者に限るとはいえ、思い切った賭けに出た。
欧州や中東のウェブサイトでは、200組400人分の観戦券が当たるゲームも用意、商機を最大限に活用する。
このマーケティング・キャンペーンで、どれくらいの台数のPCが売れると東芝は考えているのでしょうか? ワールドカップ終了後の発表が楽しみです。
FIFAと企業との間の契約が高額化、長期化する傾向は、各国サッカー協会が独自に結ぶスポンサー契約にも影響を与えています。日本サッカー協会がアディダスと結んだ契約も、これまでの常識を大きく上回る内容になりました。情報源は、日本協会がアディダスと長期大型契約です。
日本サッカー協会は25日、アディダスジャパンとの07年4月から15年3月までの8年間に渡る長期オフィシャルサプライヤー契約の締結に合意した。東京・千代田区のホテルで調印式を行い、日本協会の川淵三郎キャプテンとアディダスジャパンのパスカル・マルタン社長がサインを交わした。
07年3月までで満了となる契約を延長したもの。1年の契約料はこれまでの倍の20億円、8年160億円(金額は推定)の大型契約で、アディダスジャパンは日本代表から各年代の代表、フットサル、普及面など日本協会の活動を全面バックアップしていく。
実は、アディダスとの契約が正式発表される前にも、日本サッカー協会、電通に長期・巨額契約を要望といった観測記事も流れていました。
日本サッカー協会が、電通と結んだスポンサーと放送権料の一括契約の更新交渉で8年間総額300億円以上となる異例の長期・巨額契約を求めていることが13日、分かった。来年3月で切れる6年契約と比べ、1年当たり10億円以上の増額となる。
果たして、電通との契約も豪腕川口キャプテンの思惑通りに進むのでしょうか? ドイツ大会で、もし日本代表が予選敗退という結果に終わったとしたら、この金額が下方修正される可能性もあるのでしょうか? それとも、あくまでも長期的な強化策の一環という主張を曲げることはないのでしょうか?
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