クールビズの逆風下でネクタイベンチャーに挑戦する遠山正道スマイルズ会長
2006年06月08日
クールビズで夏場の需要減退が予想されるネクタイ業界に朗報か(?)で紹介したように、今年の1月に英国のファッション・ブランド Thomas Pink が、IPod用のネクタイを発売しました。この製品は話題づくりという印象が強かったのですが、日本のネクタイ専業メーカー三松商事からもiPod用の新製品が登場しました。
今年の夏だけで、3000~5000本の売り上げを見込む三松商事は、『アイポケット/iPocket』という名称で商標登録も出願しています。その意気込みからは、単なる話題提供というレベルを超えて、本腰を入れた事業展開に近い印象を受けます。情報源は、『ネクタイにiPod』(2006年5月29日 日経流通新聞MJ 6面)です。
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ネクタイ製造大手の三松商事は6月から、アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」用のポケットを付けたネクタイを発売する。ジャケットを脱いで過ごす機会の増える夏は、シャツの胸ポケットに物を詰め込みがち。ポケット付きのネクタイでスマートに音楽を楽しんでと、音楽好きのサラリーマンらに購入を呼びかけていく。
「iPocket(アイポケット)」の名称で、ストライプやチェック、水玉など6柄で各4色を用意した。ポケットは縦9センチメートル、横5センチメートルのサイズで、ネクタイの裏地に付ける。「iPodナノ」や「iPodシャッフル」を収納でき、ポケットの上から操作できるようにした。価格は6,825円。全国の百貨店で取り扱う。
三松商事のWebページを見ると、この他にも「どらえもん」や「となりのトトロ」
といった、アニメ・キャラクター製品や、これらのアニメのテーマソングが流れる「メロディー・ネクタイ」
、さらにはご当地ソングのカラオケのチップを内蔵した『歌いタイ』
といったシリーズ製品まであります。
現在三松商事を始めとするネクタイ業界が頭を悩ましているのが、「クールビズ=ノーネクタイ」というトレンドです。しかし、通常はノーネクタイで済ませる場面が増えたとしても、まさかの時のためにネクタイを常時携帯しておきたいと考えるビジネスマンも少なくないでしょう。
三松商事ではこのようなニーズに応えて、携帯型のネクタイケースも用意しました。この商品は日経新聞に取り上げられた影響もあり、大人気のようです。情報源は、『ネクタイ携帯ケース――しわ寄らず「いざ」に備え』(2006年5月27日 日経プラスワン 3面)です。
めがねケースを少し大きくしたようなサイズで、一本のネクタイを四つ折りにして収納できるようになっている。ネクタイをかばんの中に丸めて入れておくと、どうしてもしわが寄ってしまうが、このケースに丁寧に納めればきれいな状態で使えそうだ。
ケースの材質は、外側は合成皮革。中のネクタイが動きにくいよう、内側はナイロンスエードが採用されている。「これまであったネクタイケースは、ネクタイを丸めてしまうタイプ。出張時を想定しているためかさばってしまい、ボストンバッグに入れるにはいいが、普通の通勤バッグにはちょっと大きすぎた。このケースはスリムでコンパクトなので持ち運びやすい。かばんの中はもちろん、机の引き出しにもしまっておける」と京王百貨店新宿店の紳士服・スポーツ用品部バイヤーの平塚徹さんは話す。
以上がクールビズの逆風下にあるネクタイ業界内部からの取り組みです。しかし意外なことに、外部環境からは将来性が乏しく見えるネクタイビジネスにも、新たな商機を見出して新規参入を狙う起業家が現れました。情報源は、『遠山正道氏[スマイルズ会長] 三菱発のスープ起業家』(2006年5月29日号 日経ビジネス 120~122ページ)です。
製品ブランド名は「GIRAFFE(ジラフ=キリン)」。このコンセプトは日々、ネクタイをして働くサラリーマンを顧客に見据えたもの。「最近、元気がなさそうに下を向いているサラリーマンに何とか顔を上げて、将来を見据える元気を取り戻してもらいたい」という遠山の気持ちが、起業家としての魂に火をつけたという。
「ネクタイで元気にする」のがジラフに込めた狙いだけにデザインは斬新だ。既に商品見本ができている
例えば、スイス鉄道の赤い車体をモチーフにしたもの。また首にクルクルと巻きつけるほど長いネクタイなど、今までにはなかったデザインのものも作製中。さらに実際に首に巻かなくても、見ているだけで楽しい、そして集めたくなってしまうようなネクタイも考案中という。
商品が揃ったら、新規開店で賑わう「表参道ヒルズ」(東京都渋谷区)へ進出する予定。目指すのは、おしゃれなデザインで知られる時計の「スウォッチ」という。
遠山正道氏は、東京都内を中心にスープ販売店「Soup Stock Tokyo」を展開するスマイルズの会長です。三菱商事のサラリーマンであった遠山会長が、自らスープ店のビジネスを思いつき、社内ベンチャーとして立ち上げるに至った経緯は、『スープで、いきます 商社マンがSoup Stock Tokyoを作る』に詳しく述べられています。
しかし、今回のネクタイ店「GIRAFFE」は、遠山氏がスマイルや三菱商事の事業として取り組むものではありません。遠山氏はネクタイ店のビジネスプランを、スマイルの新規事業として提案したのですが、会長の提案にもかかわらず正式事業としては却下されてしまいました。このため遠山氏は、個人で事業資金を拠出した上で、アフター5や週末の時間を使って新ビジネスの構想を練っています。
現在でも三菱商事の外食サービス事業ユニットに所属する遠山氏は、「Soup Stock Tokyo」で、若い女性のニーズを開拓することに成功しました。果たして「GIRAFFE」のコンセプトは、サラリーマンに受けいられるのでしょうか? また、社内起業家と完全に独立した起業家という立場の違いも、興味が持てるところです。
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