普及にブレーキをかけるだけのロハスの登録商標が全面解禁で決着
2006年06月15日
健康と環境に優しいライフスタイルを表す LOHAS(Lifestyles of Health And Sustainability、日本語ではロハス、またはローハス)という言葉が、一部企業によって商標登録された問題を、昨秋このブログで取り上げました(LOHASの登録商標からライセンス収入を目論むのは「のまネコ」の二の舞?)。商標登録から現在に至るまでのロハスを巡る動きをまとめた記事が、本日の朝日新聞に掲載されました。一連の流れを総括する好材料だと思います。情報源は、『ロハス、遅すぎた「自由化」 商標登録裏目に』(2006年6月14日 朝日新聞 朝刊 12面)です。
「ロハスを知ったとき、スローフードを超えるブームになると確信した」。雑誌「ソトコト」の小黒一三編集長は3年前を振り返る。「スローフード」を日本に広めた仕掛け人の直感だった。
このデフレの時代に、値段が高くても買ってくれる。企業にとって、こんなおいしい「思想」を広めない手はない。
ソトコトを編集する出版社「トド・プレス」は04年、先手を打った。「ロハス」の商標登録を出願したのだ。大手商社の三井物産も続いた。
登録可能な約1500種類の商品・サービスのうち、家電製品、生活用品、アパレル、結婚仲介業など8割を三井物産が、広告など1割をトド・プレスがおさえた。これで「ロハス」を使う企業から商標使用料をとれる。両社は05年夏から共同事業の相談に入った。
同じころ、広告会社の電通もロハスに目をつけていた。「富裕層を狙い撃ちにでき、企業イメージもアップできる。ロハスはバブル後最大の広告キーワードになると考えた」。並木義巳ソーシャルマーケティング部長は振り返る。ロハスは一般名詞であり、宣伝文句に使うだけなら商標権侵害にはならないと考えた。
その後、電通が制作した「LOHASのタネ入っています。シャープの家電」というポスターが、トド・プレス側より商標の無断使用というクレームを受ける事件が起こります( ロハス(LOHAS)の登録商標の無断使用でシャープが三井物産とトド・プレスから警告)。この事件が広告業界に与えた影響は大きく、それ以降大手企業の多くは、一転してロハスの使用を敬遠するようになります。
ある住宅メーカーの宣伝担当者は「ロハスは魅力的だが、万一抗議を受けたら、法的に問題がなくても、企業イメージが損なわれる」と話す。
企業が使わないと、世間への露出は限られる。電通の担当者は「ロハスへの注目が高まってきた時期だけに、大きなビジネスチャンスを逃してしまった」と唇をかむ。
さらに事態は、商標権者にとっても想定外の方向に進みます。
かといって、三井・トド側もウハウハというわけではない。「結果的に世間や多くの企業から反感を買ってしまった」と反省しきりだ。
両社は5月、商標使用料をとるのをあきらめ、他社が使っても抗議しないと決めた。三井物産の網谷守弘ライフスタイル事業本部投資事業部第一室長は「マイナスイメージを増幅させるのは避けたいので、商標とは別のビジネスを模索する」と悔しさをにじませる。
「のまネコ」の二の舞とは言わないまでも、商標権者の三井物産、トド・プレスの企業イメージが悪化しただけに止まらず、一連の騒動はロハスのイメージそのものを手垢で汚してしまったのではないでしょうか。しかし、今回の「ロハス全面解禁」の動きを受けて、電通はすでに再攻勢をスタートしています。これまで三井物産が商標を握っていたことで手を出すのを躊躇っていた三菱系の企業が、主たるターゲットであるようです。
電通などが都内で開いた「ロハスマーケティング研究会」には、三菱電機、三菱東京UFJ銀行、ハウス食品など33社が参加した。業種の壁を超えて、商品の共同開発を進めるのが狙いだ。
電通は「ロハスはもっと大きなうねりになる。CMや商品開発の提案で利益をあげる環境がやっと整った」と意気込む。
「でも」。担当者が声を潜めた。「ロハスはもう鮮度が落ちてきた。使えるのは……今年いっぱいかもね」
果たしてこの記事が述べているように、商標権の登録がロハスの普及をかえって遅らせてしまったのでしょうか? その結果、トド・プレス、三井物産、電通3社がすべて、当初目論んでいた利益を上げられなかったのでしょうか? 三井物産、電通の2社にとっては、この遅れがマイナスであったことは確かでしょう。
一方トド・プレスのビジネスには、それほど大きな悪影響はなかったように思えます。親会社の木楽舎が発行する雑誌『SOTOKOTO(ソトコト)』も順調に販売部数を伸ばしているようですし、今月には『ソトコト新書』という新シリーズも刊行されました。『ロハス・ワールドリポート―人と環境を大切にする生き方』、『ロハスの思考』の2冊は、いずれもブームに便乗した「なんちゃってロハス本」とは一線を画する地味目な装丁です。
ロハスという言葉をいち早く日本に紹介したのが「ソトコト」の小黒一三編集長であり、同氏が今でも日本のロハスの第一人者であることは、疑いようもない事実です。しっかりしたコンテンツを持っているところは強く、ロハスをビジネスチャンスとして活用しようと考えた三井物産や電通の思惑が外れただけというのが、ロハス商標問題の結論ではないでしょうか。
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