「最低上司コンテスト」に見る米国労働組合のマーケティング戦略
2006年06月23日
マクドナルド店長の残業代支払い請求を契機に、これまで放置されていたファストフード業界の労働環境を改善しようという動きが活発化しています( 残業代支払い請求訴訟を起こすマクドナルド現役店長の過酷な労働実態)。直接訴えられたマクドナルドに続いて、ケンタッキー・フライド・チキンにも労働組合が誕生しました。 情報源は、『マックに続き、ケンタッキーにも労組 店長ら20人結成』(2006年6月22日 朝日新聞 朝刊 3面)です。
日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の店長らが同社初の労働組合を立ち上げ、21日、会社側に労働条件改善などを盛った要求書を出して交渉を申し入れた。ファストフード業界では先月、日本マクドナルドで労組が発足したばかり。同時期の旗揚げは偶然だが、他の外食産業の労使関係にも影響を与えそうだ。
現在のメンバーは20人で、横浜市の店舗で店長を務める濱口徳之委員長(45)をはじめ神奈川県内の店長が中心。背景には、サービス残業や休日出勤を事実上余儀なくされる店長らの負担増があるという。
濱口委員長は「会社が成長した最大の理由はカーネル・サンダース秘伝のスパイスではなく、現場で働く社員のサービス残業。現場の様々な問題を会社側と対話し解決するには労組をつくるしかないと考えた」と話す。
労組設立の直接の理由が、店長の労働問題にあることはマクドナルドの場合と共通しています。しかし、同じ労組といっても実際の活動方針は、KFCとマクドナルドでは大きな違いがあるようです。
同社の直営店では約1万3千人の非正社員が働いている。だが、誕生間もない労組がどれだけの成果を上げられるか見通しがつかないので、当面は約1千人の正社員を対象に加入を呼びかける。
政治色を排して組合費を安く抑えるため、既存の労働団体の後ろ盾は受けないことにした。労働問題に関する市販の解説本を回し読みし、地元自治体の労働相談に出向くなど「労働問題の素人が手探りでスタートさせた」(濱口委員長)。連合の全面的な支援を受けて組織拡大を図るマクドナルドの労組とは対照的だ。
日本全体で労働組合の組織率が低下を続けています。KFCのような手作り型の取り組みだけで、どれくらいの組合員数を獲得することができるのでしょうか?
マクドナルド、KFCの本国である米国では、新組合員の勧誘方法にも独自の工夫が見られます。情報源は、ネットで「最低上司コンテスト」です。
AFL-CIO(米労働総同盟産業別組合会)関連団体で非組合員のための団体Working Americaは6月19日、全国の労働者に最低な上司にまつわるエピソードを「My Bad Boss Contest」に応募するよう求めた。
最優秀賞は1週間の休暇だ。
「これは自分の不満を吐き出したり、世間でどんなことが起きているかを知ったり、自分に起きたことに注目してもらえるチャンスだ」とWorking Americaのエグゼクティブディレクター、カレン・ナスバーム氏は言う。
100万人を超える加入者を持つ同団体にとっては、新規加入者を獲得するチャンスでもある。コンテストに参加するにはwww.workingamerica.orgにアクセスしなくてはならないからだ。
「My Bad Boss Contest」の狙いは、マスコミ好みの話題を提供して、サイトへのアクセス数を増やすことにあります。さらに、実際にこのコンテストに応募するためには、住所、氏名等の個人情報の入力が必要になります。見込み客の情報を入手するために、通常のビジネスと同じマーケティング手法が利用されているということでしょう。
また、このサイトには"JOB TRACKER: The Online Tool CEOs Hate"といった、サイト訪問者の興味を引くバナーが貼ってありました。実際にクリックすると、こんなページに行き着きます。
過去の労働問題を起こした企業の情報が検索できるサービスです。これを使って、マクドナルドで検索すると、カリフォルニアの店舗で2件の問題が正式に報告されていたことがわかります。
さらにリンクをたどると、米国労働省(U.S. Department of Labor)の労災データベースにまで行き着くことになります。労働組合の検索サービスと政府機関のデータベースが完全につながっていることは、日本人の感覚からすれば驚きです。
「最低上司コンテスト」利用したマーケティングや、労災情報の検索サービスなどを見ると、米国の労働組合が展開する活動は、日本のかなり先を行っているような感じがします。
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