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新製品マーケティングはビッグバン方式からスロービルディング方式へ

2006年06月30日

三菱自動車が1月に発売した斬新なコンセプトの軽自動車「i(アイ)」の販売が好調です。エンジンを後方に積んで室内を広く取る技術や、繭のような独特のデザインが注目を集めたものの、軽自動車の常識を超える140万円近くの価格設定がネックになると考えられて、低調な販売を予想する声が発売前の業界では大勢を占めていました。

しかし、いざふたを開けてみれば、発売後2週間で1万台の受注を獲得し、月間販売目標の2倍に達するという、まさにロケット・スタートの大成功を収めたのです。アイの成功の裏には、三菱自動車が採用した常識外れのマーケティング戦略がありました。情報源は、『マーケティングに異変、新車販促、一気よりジワリ、発表日に集中宣伝』(2006年6月29日 日経産業新聞 5面)です。

販売不振にあえぐ国内自動車業界で、新車の導入マーケティングに異変が起きている。従来は全容を発売ぎりぎりまで隠し、発表と同時のインパクトある販促で一気に盛り上げる「ビッグバン」方式が常道だった。最近目立つのは事前に概要を公表し、徐々に認知度を高める「スロービルディング」方式だ。「買う前に調べる」が当たり前のインターネット時代にあって、合理的な消費者を振り向かせる手法として関心が高まっている。

三菱自がアイのコンセプトや写真をマスコミへの会見で公表したのは、2005年の1月。発売まで1年を残した時期での異例の前出しだった。

三菱自のスロービルディング方式採用には、新車情報を前倒しで消費者に伝えることで、リコール(無料回収・修理)隠し問題で進んだ顧客離れを防ぐ狙いもあった。だがフタを開けてみると「新型車の認知度向上効果は予想以上だった」(堀敬介広告部長)。

最も大きかったのはインターネットとの相乗効果だ。05年1月の新車公開直後からネットでアイに関する情報や感想が飛び交い始める。自動車評論家などプロの評価だけでなく、素人同士の意見交換も多かった。「最近の顧客は購入前に必ずネットで調べる。消費者の“口コミ情報”が広がり、じわじわと認知度が高まった」(堀部長)

三菱自動車のアイは、ネット時代で注目されつつある「口コミ・マーケティング」、英語ではバズ・マーケティング(buzz marketing)、またはバイラル・マーケティング(viral marketing)の成功例の1つと考えていいでしょう。発売の1年も前から種まきを始めた用意周到なスロービルディング方式は、自動車のような製品ライフサイクルの長い高額商品に適した戦略オプションであると考えることも可能でしょう。

同じ口コミ・マーケティングでも短期決戦型の商品の場合は、じわじわと評判が広がるのを待つ余裕はありません。この種の製品にとって理想的なマーケティングは、短いリードタイムの間に評判を爆発的に広めるといった、いわばファストビルディング方式でしょう。

例えば、7月8日封切の映画「サイレントヒル」では、オリジナルブログパーツを使って、口コミ情報を広めるキャンペーンが展開されています。元々同名の人気ゲームを完全映画化した作品だけあって、ゲームファンの中での高い認知度は織り込み済みです。ブログパーツを利用したキャンペーンは、ゲームファン以外の一般のブロガーも取り込むことによって、口コミの情報元の底辺の拡大を目指す試みだと考えられます。

Silent Hill 本キャンペーンのトップページに表示されているブログパーツをあなたのブログにも表示させることができます。
このパーツを使って映画を告知していただいたユーザーの方には、抽選で素敵なプレゼントを差し上げます。


そもそも私がこのキャンペーンの存在を知ったのも、口コミサービスの「CyberBuzz」から参加依頼があったからです。

このキャンペーンの優れた点は、ブログパーツを自分のブログに貼ると、抽選でPSP等の景品がもらえるだけではありません。ブログパーツはその他にもブロガーを喜ばせる仕掛けが工夫されています。

ブログパーツでは、毎回3つのブログが「呪われたブログ」として選ばれます。「呪われたブログ」になるとブログが切り裂かれて、特異なデザインに変形します。さらに「呪われたブログ」のサイト名はパーツ上で公開されることになり、これを見た人からのアクセスがアップすることが期待できます。ブロガーにとって「呪われる」ことは、本当は「嬉しい」ことなのです。

このように手を変え品を変えて新たな試みが行われている口コミ・マーケティングですが、まだまだ発展途上のマーケティング手法であることも事実です。 アクセスは増えたが……“口コミメディア”の悩みを読むと、口コミサイトの勝ち組と目されている「@cosme」や「価格.com」などの著名サイトでも、新しいマーケティング手法ならではの課題を抱えていることがわかります。


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