篠崎屋傘下に入った三和豆友食品と絶縁した男前豆腐店の今後の展開
2006年07月05日
昨年9月に投稿した記事 スーパー隷属体質からの脱却に成功した豆腐ブランド 三代目茂蔵、男前豆腐へのアクセスが、この1週間で急激に増えました。その理由は、いまやそのユニークなキャラクターが注目されて、男前豆腐がガシャポンになったり、携帯の着メロになったりしたあたりだろうと予想したのですが... 本当は全く別の事情から、この記事が再注目されていることがわかりました。
詳細は後ほど述べることとして、まずは本業の豆腐市場での男前豆腐の絶好調ぶりを示す日経POSの販売データを紹介します。情報源は、『絹ごし豆腐・ソフト豆腐――男前豆腐店、「看板」が好調』(2006年7月3日 日経流通新聞MJ, 2面)です。
スーパーの店頭でひときわ目をひく豆腐らしからぬネーミングとパッケージ。男前豆腐店(京都府南丹市)の看板商品が好調だ。男前豆腐店は三和豆友食品(茨城県古河市)から独立して1年余りだが、シェア12.3%を獲得し、メーカー別の首位に立つ。
1位の「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」は、サーフボードをモチーフにした細長い容器と濃厚な味わいが特徴。6月第1週には7.3%までシェアを伸ばした。一丁約300円と高価格だが、関西だけで1日に4万パックを販売するヒット商品だ。2位の「男前豆腐」は同社の躍進のけん引役となった商品だ。
3位には、シェア2.8%で三和豆友食品の「ジョニー」が入った。
この記事から、「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」ブランドの豆腐は、京都の男前豆腐店と、茨城の三和豆友食品の2社が製造・販売していることがわかります。元々男前豆腐という奇抜なネーミングの商品は、現・男前豆腐店社長の伊藤信吾氏が、三和豆友食品常務の時代に開発したものです。
その後事業の拡大に伴い、伊藤氏が京都に男前豆腐店を設立して、三和豆友から独立することになります。その辺の事情を、『男前豆腐店社長伊藤信吾氏――世界観表現、豆腐に味付け』(2006年6月19日 日経流通新聞MJ 3面)から紹介します。
――お父さんが豆腐メーカー、三和豆友食品の社長でしたよね。大学卒業後から継ごうと思っていたのですか。
「いいえ、僕は僕の道を進もうと思って築地市場の水産会社やシンガポールの貿易会社で働きました。シンガポールではフカヒレを日本に輸出していました。食品には興味があったので、豆腐も面白いかなと思って三和豆友に入りました」
――03年発売の男前豆腐で飛躍しました。
「高価になるので国産大豆の使用に踏み切れなかった。男前豆腐で国産大豆を使い一丁300円の壁を破りました。ホームページと歌を作って、エンターテインメントの要素も注ぎ込みました」
――イメージソングの入ったCDやTシャツまで売っていますが、狙いは何ですか。
「豆腐は味が一番大事です。だけど、おいしいだけじゃ世に出て行かない。男前豆腐を認知してもらうことが重要。戦略として男前豆腐店の世界観を表現していきたかった。だからパッケージと味の決定と音楽、ホームページ制作は一体感を持って同時進行。世界観の表現のためにはホームページが必要で、音楽や絵もいるのです」
――昨年9月に京都府南丹市の豆腐工場を買って移ったんですね。
「明治時代から続く豆腐会社の工場でしたが、倒産したため、工場を買いませんかという話がきました。今は24時間操業で1日9万丁作り、関東向けの商品は三和豆友で製造しています」
豆腐のように厳しい鮮度管理が要求される商品は、なるべく消費地に近いところで生産するのが基本です。関東向けの商品を茨城の三和豆友、関西向けの商品を京都の男前豆腐店と分業するのは、道理にかなった生産・物流戦略でしょう。これで「ジョニー」が真のナショナル・ブランドとなるための、万全の体制が整ったかのように思えます。しかし、改めて男前豆腐店のホームページを見ると、こういった「報告」がありました。
■ 2006年6月21日(水) / 『ジョニーからの伝言』
私ジョニーが修行しておりました茨城県の三和豆友食品株式会社。今現在では資本関係も交流も御座いません。京都の男前豆腐店は完全に独立独歩で御座います。京都男前豆腐店、茨城三和豆友食品、それぞれの味の追求、それぞれの豆腐道を歩んでいくことになりました。今後とも宜しくお願い致します押忍!
これは明らかに、男前豆腐店からの三和豆友食品に対する絶縁宣言と理解するべきでしょう。伊藤社長が自ら両社の分業体制を語った日経流通新聞の掲載日が6月19日で、ホームページ上の報告の日付は6月21日です。この間に、いったい何が起こったのでしょうか?
もう一方の当事者である三和豆友食品側からも、ヒントとなるようなメッセージが発せられているかと考えて、同社のホームページ(www.sanwatouyu.co.jp)にアクセスすると、なんと男前豆腐店のページ(http://otokomae.jp)にリダイレクトされてしましました。なお、IntenetArchirveに保存されている昔のページは、こうなっています。
同社のホームページも、かつては「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」を前面に打ち出したデザインでした。残骸となってしまった三和豆友のオンラインショップのページからは、6月12日に通販が休止されたこともわかります。
さらに色々調べると、5月15日付けで「三代目茂蔵」ブランドの直販豆腐メーカーの篠崎屋が、三和豆友食品と業務提携の基本合意書を締結(PDF)していたことが判明しました。積極的な買収戦略で国内シェア7%と、最大規模の豆腐メーカーとなったのが篠崎屋です。
同社が同業他社の買収によって巨大化を図る背景には、スーパー・チャネルへ再参入する狙いがあります。情報源は、『起・業・人 第148回 樽見茂』(2006年6月10日 週刊ダイヤモンド 128~129面)です。
「スーパーは売れなくなると、粗利を取るためメーカーに納入価格を下げさせる。メーカーは低付加価値商品を開発して対応する。この繰り返しで商品の価値はどんどん下がる。これに応じないガリバー企業が豆腐業界には必要」と樽見は言う。近年、破綻した同業者の買収を相次ぎ行なうのも、こうした思いが根っこにある。
買収した企業は、豆腐となにかしらの関係がある企業ばかり。その一社のチルド焼売メーカーから今月発売するオリジナル焼売は、豆腐とおから入りのもの。通常なら捨てなければならないおからを食材として活用できる、という点で「シナジー」があるというわけだ。国内最大手スーパーへの全国供給が決まったことが話題を呼び「発売前から第一期生産分完売」という好評ぶりだ。
買収した豆腐メーカーがスーパーへの納入シェアが高い企業だったこともあり、スーパーへの再参入という“リベンジ”も果たした。ただし、以前撤退したときと状況は逆。「納入価格は、量に応じて一定で払う。値段は“ストアロイヤルティ”に応じて店側に直接決めてもらう」という、豆腐はおろか食品業界でも珍しいオープンプライス方式で、小売店に対し対等の取引を要求する。
「売価が安い豆腐でも、やり方によっていくらでもおもしろい商売ができる。近々に国内シェア40%を目指す」と、樽見の鼻息はあくまでも荒いのである。
業界の風雲児を自称するだけあって、あくまで強気の樽見茂社長です。上場企業の篠崎屋と三和豆友との業務提携は、実際には三和が篠崎屋の傘下に入るということでしょう。こうした動きを嫌った男前豆腐の伊藤社長が、三和と袂を分かつ道を選んだというのが、ことの真相ではないでしょうか?
こうした一連の騒動の影響でしょうか? 冒頭で紹介した商品別シェアのグラフでは、「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」の直近シェアが、若干加工傾向を示し始めているようにも見えます。しかし、アイデアマンの伊藤社長は新しいビジネスプランを用意しているので、そんな心配は無用なのかもしれません。
――次の事業展開はどうするつもりですか。
「僕の一番の敵は『風に吹かれて豆腐屋ジョニー』と『男前豆腐』。これを乗り越えないと次に行けません。どんどん新しいものを作らないと納得できない。あのホームページは僕自身が誰よりも先に飽きています。新商品群に基づく次の世界観を8月に示したい」
「次の世界観はあたかも別な豆腐店ができたかのようなイメージもありです。それで既存の男前豆腐店と競わせる。自分たちで『ニセジョニー』商品を作ろうかという話もしています。本物のジョニーとニセのジョニーを戦わせるんです。売上高の推移をグラフにしてホームページで実況中継したりしてね(笑)。海外にも挑戦します。八月にも米国西海岸に本格輸出を始める予定です」
篠崎屋の軍門に下った三和豆友との関係が悪化するようであれば、自ら創った「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」のブランドを捨てる覚悟とも解釈できる発言です。兄弟間の相続を巡る骨肉の争いの結果、「一澤帆布」ブランドから「一澤信三郎帆布」ブランドが生まれたようなことが、ブランド豆腐でも起こるかもしれません。
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