日本人が学ぶべきオシム監督の正確で厳密なコミュニケーション能力
2006年07月12日
ワールドカップ決勝戦でのレッドカード退場という形で、現役生活の幕を閉じたジダン選手を激怒させた言葉の内容が、各方面で取りざたされています。本日のニッカンスポーツ、サンスポあたりの情報を総合すると、マテラッテイ選手の「売春婦の息子」という表現が、たまたま当日の朝母親が体調を崩した報を聞いたジダンを、激高させてしまったということのようです。
しかし、サンスポでは「息子の応援のためにドイツを訪れていたジダンの母マリカさんが、体調を崩してベルリン市内の病院」とある一方、ニッカンスポーツでは、「ジダンの母マリカさんが決勝戦当日に故郷マルセイユの病院に緊急入院」とあり、情報が正確に一致しているわけではありません。いずれにせよ、ジダンの代理人は近く真相を明らかにすることを表明していますので、その報告を待ちたいと思います。
なお、相手を侮辱するために使う「売春婦」という表現はイタリアだけでなく、スペインやブラジルなどラテン系の国で、幅広く使われているそうです(ラテン系の国よく使う侮辱表現「売春婦」)。したがって、今回の事件をマテラッティ側から見ると、下品な表現とはいえ、日本語の「お前の母ちゃんでべそ」に近い軽い感覚で使っただけで、いきなり頭突きがくるとは想定外の結果だったのかもしれません。
マテラッテイの暴言は、当初人種差別的内容を含むものと推察されていました。小粋なエスニック・ジョークに触れる機会のない日本人は、人種の問題に対する意識も低いようです。こうした意識の低さが災いして、不用意な言動が時として外国の人々からは人種差別的と解釈されて、想定外の非難を浴びることがあります。
ソニーがオランダで掲載した、セラミックホワイト色の「PlayStation Portable(PSP)」の広告が、国際的な騒動を巻き起こしています。 情報源は、ソニー、白いPSPの広告で「人種差別的」と非難されるです。
「DigitalBattle」に1枚の画像が掲載された米国時間7月4日以降、ゲーム関連のウェブサイトや掲示板はこの広告をめぐる議論で盛り上がり、カリフォルニア州議会の Leland Yee議員(サンフランシスコ選出、民主党)と全国有色人種地位向上協会(NAACP)のサンノゼ/シリコンバレー支部がこの問題について所感を表明した。
NAACPのサンノゼ/シリコンバレー支部代表であるRick Callender氏は、今回の問題の背景を次のように分析しています。
「(白人が黒人に扮した演芸)ミンストレルショーで黒人を茶化して描いた時代はとうの昔に終わった。無理もない」と、Callender氏は述べている。「ミンストレルショーは、歴史上の汚点とも言うべきものだった。この広告はこうした時代に通じるものがある。
さらに受け入れがたいのは、一部の企業が依然として、人種問題を招きかねないイメージを広告媒体に使っても大丈夫だと考えていることだ。ソニーの最新の広告は、紋切り型で侮辱的な有色人種のイメージが製品を売る手段として受け入れられていた時代の忌まわしい記憶を呼びさます。ソニーは直ちに謝罪し、こういった時代遅れの広告戦略を中止すべきだ」(Callender氏)
ここで再びサッカーの話に戻ります。かねてより噂されていた通り、本日サッカー日本代表の監督がイビチャ・オシム氏に決定しました。オシム氏が代表監督の最有力候補と発表されて以来、いきなり売れ出した本が、『オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える』です。
本日の朝刊各紙に掲載された広告にも、「31万部突破! 緊急大増刷出来!!」の文字が躍っています。しかし、私が広告の中で注目したのは、サッカーに詳しい作家の村上龍氏の推薦のコメントの方です。
村上 龍氏激賞。
オシムという監督は、ユニークで面白い言葉遣いをすると思われているがそれは違う。正確で厳密なのだ。オシムは激動の旧ユーゴ時代から、正確で厳密なコミュニケーションが必要な状況を生きてきた。この本はその記録だ。私は感動した。誰もが感動するだろう。
村上氏によれば、多民族国家の旧ユーゴスラビアの代表監督であったオシム氏は、民族的バックグランドの違いが解釈の違いを起こす危険性を避けるために、意識的に正確な表現方法に磨きをかけてきたということになります。この辺の事情が、むしろ曖昧な表現を好んで使ってきた日本人とは、根本的に異なります。
次に、以心伝心のコミュニケーションを基本とした日本の企業社会に、いかにもありそうなエピソードを紹介します。現在DSブームが絶好調の任天堂の社長が岩田聡氏です。同氏が半世紀にわたって君臨してきた任天堂のカリスマ経営者山内溥氏から後任を託されたのは、2002年のことでした。
しかし、この後継者選びは2人とも明確にその意思を確認しない、いわゆる「あうんの呼吸」で決まっているのです。 情報源は、『岩田聡 任天堂社長-カリスマが指名した40代は王国の中心で危機を叫ぶ』(2006年7月15日 週刊東洋経済 134~137ページ)です。
明確な後継の言葉をもらった記憶がない。私は任天堂にお世話になった人間です。恩返しできるならと思って任天堂に来た。こんなことになるなんて、これっぽっちも予想しなかった。
ただ、まず経営企画室長をやったんですが、「ん?」って感じることが少なからずあって。禅問答みたいな話を山内がするわけです。「なりたくてなれるわけじゃないけど、逃げることはできる」とか。
ただ、山内の任天堂に対する思いとゲーム業界への危機感は痛いほど伝わった。もし本当にそういう場面が来たら逃げない覚悟だけはしよう、なんて思ったりもして(笑)。ただ、本当に聞かされたのは発表直前。やっぱり、びっくりしました。
謎かけのような禅問答を通して、山内氏は岩田社長の値踏みをしていたというところが真相でしょうか? それにしても、今でもこのような曖昧な形で大会社の後継トップが選ぶことが、普通に行われているのでしょうか? 明確なコミュニケーションと意思決定が必要とされる多国籍企業では、ありえない話ではないでしょうか?
【追記】
報道ステーションによれば、ジダンが自らフランスのテレビ局で「ことの真相」について話すことになったそうです。
【追記その2】
ソニーがくだんのPSP広告を取り下げました。
★恐縮ですが、『人気ブログランキング』を クリック してください。
| オシム 知将の教え―「伝わる言葉」で強い組織をつくる | |
![]() | 児玉 光雄 東邦出版 2006-08 売り上げランキング : 2200 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える | |
![]() | 木村 元彦 集英社インターナショナル 2005-12 売り上げランキング : 2 おすすめ平均 ![]() サッカーの奥深さと、言葉の持つ力 現代ユーゴ史+オシム哲学 最高の指導者がサッカーをさらに輝かせるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| ハーバード・ビジネススキル講座 対話力 | |
![]() | Harvard Management Update編集部 Harvard Management Communication Letter編集部 DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部 ダイヤモンド社 2006-06-09 売り上げランキング : 1858 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| ハーバード・ビジネススキル講座 交渉力 | |
![]() | ハーバード・マネジメント・アップデート編集部 ハーバード・マネジメント・コミュニケーション・レター編集部 DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部 ダイヤモンド社 2006-07-06 売り上げランキング : 16543 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| ハーバード・ビジネススキル講座 提案力 | |
![]() | Harvard Management Update編集部 Harvard Management Communication Letter編集部 DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部 ダイヤモンド社 2006-06-09 売り上げランキング : 20550 Amazonで詳しく見る by G-Tools |








