シニア層の潜在需要開拓に取り組むコンビニ各社の新・成長戦略
2006年07月21日
本日発表された6月のコンビニエンスストア売上高(11社、既存店ベース)は、前年同月比0.6%増の5,707億円となり、23カ月ぶりに前年を上回りました。長期的下降トレンドにあったコンビニの売上げが、遂に反転した! と思ったのですが.... 真相は、7月からのたばこ税値上げを見越した駆け込み需要が、売上げ増に貢献しただけのようです。やはり、コンビニのビジネス・モデルは成長の限界に達しているのでしょうか? そんな中、ローソンから新製品が発売されます。 情報源は、ローソン パンチのきいた「亀田弁当」です。
ローソンは18日、スポンサー契約を結ぶボクシングの亀田興毅選手との共同企画商品を25日に発売すると発表した。8月2日の世界王座決定戦に挑む亀田選手を応援しようと、チャンピオンベルトの形をした弁当や巻きずしなど6品目を売り出す。
商品シリーズ名は「亀田の夏祭り」。亀田選手の好物の納豆をそばにのせた「亀田の『夏闘拳(なっとうけん)』そば」(395円)などで、「亀田選手のファンが多い20~30歳代の女性にアピールしたい」(森山透専務)という。
東京・浅草の浅草ビューホテルで会見した亀田選手は「自分の好きなヘルシーな食べ物は、女の子にも絶対気に入ってもらえるはず」と力を込めていた。約3週間の限定販売だが、売れ行き次第で販売期間を延長する。
ローソンは「亀田弁当」の投入で、20代~30代の女性の来店増を期待しているように発表していますが、実際には話題作り程度の効果を狙ったものと考えるのが妥当でしょう。現在ローソンが本腰を入れて戦略的に取り組んでいるのは、シニア層の開拓です。情報源は、『高齢者向けに子育て家庭向け ローソンが新業態連発の意味』(2006年7月22日 週刊ダイヤモンド 18面)です。
「シニア対応店」は、50歳以上人口が4割以上の商圏を対象に、この7月から全国77支社でいっせいに展開するもの。今年度はひとまず11店をオープン(改装および新設)し、中長期的には既存店8,000店の20%をシニア対応店とする計画だ。
今月1日に改装オープンした兵庫県淡路市内の店舗では、通常の1.5倍の広さの店舗に、商品も通常より約500種類多い3,500種類を陳列している。
そのうち約10%が「シニア狙い」だ。たとえば、特定保健用食品の健康飲料、食べ物の咀嚼が難しい高齢者向けのレトルト介護食品、生花・仏花、孫向けの駄菓子やおもちゃまで。また、シニア層は自炊率が高いため、青果や冷凍食品についても従来店の約10倍の品揃えをした。
店内面積の約20%ほどのスペースには大型液晶テレビとテーブル、椅子、それに子ども向けのカードゲーム機やマッサージ機なども設置して「休憩所」とした。このスペースでメーカーの新商品試食会を行なったり、地元町内会の催し物を行なう予定だ。
偶然ですが、本日放送のNHKテレビの『クローズアップ現代』でも、「お年寄りの心をつかめ ~動き出したコンビニ新戦略」が放送されました。テレビの方では、山形県内のシニア対応店の取り組みが取り上げられていました。
山形の店舗では、コンビニ特有の本部一括仕入れ方式を改め、シニア層が好む商品として近隣の米沢市の醤油に入れ替えた結果、売り上げが3倍増を達成しています。また、公民館に代わる地域コミュニティの核として、店舗の駐車場で朝市を開催したところ、ふれあいを求めるシニア層に歓迎された等の事例も紹介されました。
番組に登場したローソンの新浪社長は、「高齢者へ憩いの場の提供 → コンビニ利用の日常化 → 将来的な売上げ増」という仮説を持って、シニア対応店の拡充を図る決意を語っています。
番組では2つ目の事例として、スリーエフが採用した75歳の男性店長の活躍振りが紹介されました。同社は今後、チェーン各店の店員レベルにも、高齢者とコミュニケーションできる能力を要求していく予定です。
このような各社が取り組むシニア対策は、これまでのコンビニのビジネス戦略を根本的に転換するものです。従来型のモデルの特徴は、「本部一括仕入れによる売れ筋に絞り込んだ均質的な品揃えで、若者をターゲットにした高い顧客回転率」にありました。
それが、シニア対応店舗になると、「地域主導の個店の事情に応じた多様な品揃えで、中高年をターゲットにした低い顧客回転率」に変わることになります。
この図式だけを考えれば、シニア対応店舗の利益率は通常店舗を下回ることは間違いないはずです。そこで各チェーンが注目しているのは、シニア層特有のストア・ロイヤリティの高さです。一度自分のお気に入りの店舗になれば、シニア層は他店に浮気する可能性が低いということです。そのため、ローソンは地域コミュニティの核となることを目指して、利益を生まないイベントにも積極的に取り組んでいるわけです。
ここ数年従来型のコンビニのビジネス・モデルが限界を迎えている状況について、日本総研の小屋知幸氏が、コンビニ業界:セブン-イレブンの覇権は完成間近かの中で詳しく解説しています。
この記事の中で小屋氏が注視している点は、業界首位のセブン-イレブンと他社と間の収益力の格差です。同氏は結論として、セブン追随戦略から脱皮しない限り、この格差はますます拡大する傾向にあると主張しています。その主張を裏付けるのが、コンビニ各社の規模と収益性をマッピングした次のグラフです。このグラフを見ると、ローソン一社だけが赤い色の均衡線の右側に位置しています。
ローソンは「シニア対応店」に加えて、小さな子どもを持つ母親をターゲットとする託児所併設の「子育て支援店」を、今年度中にもオープンする予定です。ローソンは昨年、既に生鮮百円コンビニの「ローソンストア100」や、自然派コンビニ「ナチュラルローソン」を出店しています。ローソンだけが遮二無二に新業態店舗開発に邁進する理由が、収益力の抜本的な改善にあることは、明らかでしょう。
小屋知幸氏は、このままセブン-イレブンの一人勝ち状態が続くことを予想しています。そんなセブン-イレブンは、他社のシニア・マーケットの開拓策を横目で眺めているだけなのでしょうか? 『クローズアップ現代』では、セブン独自の取り組みも紹介しています。
シニア層が来店する可能性を追求するのではなく、逆に店員がシニア層の自宅を訪問する「ご用聞き戦略」が、セブンーイレブンのシニア対策の基本です。
番組では、東京世田谷地区の店員が高齢者の独居宅を訪問して、電球の交換を無料でサービスする姿も放映されていました。
商品を配達する際に次回分の受注をすることによるリピーター顧客化、まとめ買いによる受注単価のアップ等が、周到に考えられているようです。
「待ちの店内販売」から「攻めのご用聞き営業」に転じたセブン-イレブンは、自らリードしてきたコンビニのビジネス・モデルからの発想転換という点では、一歩先を進んでいるような印象を与えます。しかし、現在のご用聞き戦略も実験的性格が強いものであり、想定した通りにシニア顧客の新規開拓に成功できるかどうかは、現状では未知数です。ローソンのシニア対応店の成否が不明なところも、全く同じでしょう。一つ確かなことは、潜在的に拡大が見込めるシニア層の獲得に成功した会社が、コンビニ勢力図を変える可能性を持っているということです。
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