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コナカとAOKIの争奪戦になった紳士服フタタと独自路線を邁進するマルイ

2006年08月17日

紳士服量販店業界2位のAOKIホールディングスがTOB(株式公開買い付け)による完全子会社化を狙っているのが、九州地方に基盤を置く中堅紳士服チェーンのフタタです。TOBへの対抗策として、フタタの筆頭株主で同社の業務提携先である業界4位のコナカも、株式交換などでフタタを完全子会社化し、経営統合する計画を昨日発表しました。

コナカの提案を受けたフタタは、18日に臨時取締役会を開催して、どちらの提案を受け入れるかの最終判断を下すことになります。現時点で明らかになっているAOKI、コナカの提案に違いは次のようなものです。情報源は、『コナカもフタタ統合案――完全子会社化めざす、株式交換などで』(日本経済新聞 朝刊 2006年8月17日 11面)です。

項目 AOKI コナカ
完全子会社化の手法 株式公開買い付け 株式交換など
買収価格 一律700円 交換比率をこれから算定
フクタの収益改善策 不採算店は業態転換も 本業による収益改善
フタタの収益計画 2010年1月期売上高120億円、営業利益12億円 2009目年1月期売上高137億円、経常利益11.4億円

フタタ株式の取得方法に関しては、株主以外にはあまり関心のないところでしょう。また、これだけの情報では、収益計画の妥当性も判断することは難しいものです。しかし、収益改善策では、AOKI案とコナカ案の間で大きな違いが見られます。

基本的な違いは、開店して20年以上経過した老朽店のリストラ方針にあります。そのまま紳士服店としてテコ入れを図るのか、思い切って異業態に転換するかの違いです。情報源は、『フタタ不採算店再生――AOKI、店舗改革一気に(紳士服生き残りバトル)』(日経流通新聞MJ 2006年8月16日 4面)です。

AOKIは不採算店をカラオケ店、インターネットカフェ、結婚式場などグループの関連事業の店舗に転換しようとしている。見込みのない店は早めに営業をやめ出血を止めようという狙いだ。

AOKIの青木拡憲社長は「競合が激しくなるなかで、いま手を打たなければ取り返しのつかないことになる」として、完全子会社化したうえで短期間に不採算店を処理する必要性を説く。

AOKIは2003年に子会社化した中部地盤のトリイでも同じ手法をとったが、従業員の離職率は子会社化した前の五年間と比べて低く抑えられたという。青木社長は「AOKIの水準より低く、自然減の範囲内」と強調する。

カラオケ店等への業態転換を目指すAOKIの計画は、かなり思い切った内容です。一方、紳士服店九州ナンバーワンとしてのフタタ・ブランドの維持を中心に据えているのが、コナカの再生プランです。いわば現状のコナカ路線の踏襲です。フタタのホームページからも、イメージキャラクターとしてコナカと同じ松岡修造を起用するなど、マーケティング戦略的には完全に2社は一心同体のように見えます。

コナカの湖中謙介社長は「フタタには洋服が好きでやっている古参社員が多い。にわかに(カラオケ店などに)業態転換といっても、年齢的にも気持ちのうえでも応じにくいのではないか」と語り、従業員の感情を配慮している姿勢をアピールする。

二田孝文フタタ社長に続く現経営陣が、ドラスチックな改革を伴わないコナカ案を指示する姿勢を見せるのは、当然のことでしょう。しかし、フタタの創業者で孝文社長の実父・二田義松相談役は、現経営陣との距離感を表しています。情報源は、フタタ社長と創業者は「一枚岩」強調です。

「創業家からは私の判断に一任されている」。14日の記者会見で、二田社長はこう繰り返した。背景にはAOKIホールディングスから経営統合を提案されて以来、義松相談役が子会社化の容認や現経営陣の手腕の批判など積極的な発言を続け、「一族には溝があるのでは」と憶測を呼んでいることがある。一代でフタタを上場に導き、大株主でもある義松相談役の発言力は大きい。

義松相談役はAOKIの青木拡憲社長と30年を超す親交があり、AOKIの提案書によると、フタタがコナカと提携する直前の2002年、AOKIに資本・業務提携を依頼していたという。二田社長はこの経緯について 14日、「正式に会社として提案したことは一度もない」と断言する。

義松相談役は「AOKIは革新性、コナカは堅実性で、どちらも立派」とバランス感覚は崩さないが、「心情的にAOKI寄りではないか」との見方は消えない。

フタタのホームページにあるフタタ・ヒストリーには、二田義松氏の一代サクセス・ストーリーが、『二田義松語録』とともに延々と展開されています。フタタにおける義松氏の存在の大きさが想像できます。

義松が生まれたのは大正15年9月3日、福岡県浮羽郡水縄村(現田主丸町)である。馬鹿正直と呼ばれるほど誠実で勤勉な父・松三郎と、優しいがしつけには厳しい母・ヒサエに育てられた。兄弟は7人。長男だった。田んぼ、畑、庭をかけずりまわる日々。学校までは片道4キロ(一里)を毎日歩いて通った。水縄村は、耳納連山の北側に位置する、柿、ぶどう、苗木の生産農家が多かった。

赤の他人にとっては、気恥ずかしいくらいの「偉人振り」ではありますが、それだけ義松氏の存在が現在のフタタにおいても大きいことの証明なのでしょう。その義松相談役は、18日に開かれる臨時取締役会への出席に意欲を見せていますが、現経営陣の受けとめ方は冷ややかそのものです。情報源は、『フタタ、18日に取締役会 経営統合案に結論へ』です。

取締役会には、創業者の二田義松相談役も「出席したい」と報道陣に話したが、馬場常務は「(出席するかどうか)未定だ。取締役ではないので、出席するにしてもオブザーバーの形になるだろう」と述べた。

この馬場常務はコナカの取締役でもあるので、当然の反応でしょう。4年前にAOKIの青木拡憲社長に業務提携の打診をしたと言われるのが、二田義松氏でした。青木社長は個人としてフタタの株式を11%保有しているのに対して、46%を保有するのが筆頭株主のコナカです。それ以外のほぼ全株式を創業家一族が保有するというのが、フタタの株主構成です。

従って創業家がAOKI支持でまとまれば、AOKIがTOBで株式の過半数を取得することは可能です。他方フタタの役員構成は、湖中謙介社長以下コナカの取締役が3名も占めるのに対して、AOKI派と目されるのは議決権を持たない相談役の義松氏だけといった状況です。

そこで重要となるのが、フタタの財務アドバイザーの三井住友銀行の役割です。同行が公平中立な立場から、AOKIとコナカの提案内容を分析することになります。 そうは言っても、役員を派遣しているコナカ側が圧倒的に有利な情勢にあることは、変わりないでしょう。結局は、創業家内の方針の食い違いに大手資本の思惑が絡んだのが、フタタの再編劇と言えるのではないでしょうか。


同じ流通業にあっても、昨年3代目社長が登場した丸井の業績は好調です。こちらの方は、お家騒動の噂も全く聞こえてきません。

他社がなかなか手を付けられない店舗の統廃合を果敢に実施しているのが、業績好調の理由の1つです。同じ同族企業でも、老朽化した店舗を抱えて行き詰まったフタタには考えられない戦略性です。情報源は、『2005年度百貨店調査――増収率ランキング、丸井、機動力は成長力』(日経流通新聞MJ 2006年8月16日 3面)です。

2005年度の都市別店舗売上高伸び率ランキングで丸井の好調ぶりが目を引く。東京で新宿店以下1~4位を独占。神戸では03年10月に開業した関西地区初の店舗が2ケタ増でトップに立った。今秋の大阪・難波、来秋の東京・有楽町と新店計画が目白押し。大型店大競争の台風の目となりそうだ。

丸井の強みは商圏の盛衰に応じ店舗のスクラップ・アンド・ビルドを繰り返す機動力にある。

07年、新宿店に約9,000平方メートルの新館を開業。同時に新宿店の中核である「マルイシティ新宿」の建て直し工事に入る。同館は約1年半前に改装したばかりで売り上げも伸びているが「使い勝手が悪いから」とあっさり建て替えを決めた。

見切りの速さは成長力を失った店の撤収にも表れる。「赤字かどうかだけでなく店舗効率も加味する」(青井浩社長)。8月13日、売り場面積8,200平方メートルの埼玉・川越店を閉めた。神奈川の藤沢店に続き、今年2店目だ。この10年で6店舗を出す一方、閉鎖は19店舗を数える。

にもかかわらず、小売部門の営業利益は伸びている。川越店が開業した1970年、丸井は29店舗だったが、売り上げが10倍以上になった今は27。再配置と大型化を同時に進めてきた。だが下位にも登場するなど個店の競争力にはまだばらつきが大きく、新陳代謝が欠かせない。

流通業の収益性は必ずしも店舗数の多さには依存しない、大事なのは戦略性ということになります。さらに今年にスタートしたネット通販でも、丸井の戦略性が表れています。

店頭とは異なるネット専用商品を用意して、中途半端な品揃えでユーザの不満を買うケースが多いのが、これまでの百貨店業界のネット通販への取り組みでした。丸井は、あえて店頭と全く同じ商品をネットでも提供しています。情報源は、『丸井、新商品ネット通販――店で逃した客取り込む』(日経流通新聞MJ 2006年8月16日 5面)です。

丸井が始めたインターネット通販事業が、新旧の顧客獲得に効果を示し始めている。直営28店とほぼ同時に新商品を発売し、顧客の手元に届けるモデルが支持を広げているようだ。青井浩社長が掲げる「マルチチャネル戦略」の主軸。将来は店舗と在庫を共有化する構想もあり、取引先との関係を変える可能性も秘める。

4月に通販専門子会社のマルイヴォイを設立、約100人の陣容でスタートした。顧客は丸井が主戦場としてきた首都圏のほか、丸井店舗がないエリアにも広がりつつあるという。

ネット通販の売り上げは本格的に始めた5月以降、前年同期の2倍ペースで伸びている。実験段階だった2006年3月期は30億円程度。カタログ通販を含めても140億円と、前期の連結売上高の2%に過ぎないが、2010年3月期にはネット通販事業で営業利益60億円と、全体の15%を稼ぐのが目標だ。

それでは丸井は、実店舗を展開できない地域への補完策として、ネット通販を位置づけているのでしょうか? 本当の狙いは、丸井が独自に計算したネットとリアルのシナジーにあるようです。

「リアルのお店からネットへの“送客”という事業モデルが構築できそうだ」と青井社長は手応えを語る。丸井店舗の集客力を、ネットを活用してより増幅できないかとの発想が原点にある。

丸井の来客数はざっと土曜で100万人、日曜で150万人。約10年営業に携わった経験をもとに、青井社長は「首都圏で既存店売上高をこれ以上伸ばすことは至難の業」と話す。ならば通常の店構えでは一度しか訪れてもらえない客に2度、3度と訪れてもらえる入り口を作ればいい――。丸井流「マルチチャネル」の柱をなすネット通販の強みは大きく2つある。

第1に来店して商品を手に取ったものの、何らかの事情で購入せずに帰った顧客にネットは「もう1つのお店」としての機能を発揮できるという効果。第2は丸井がこれまで取り逃がしていた層の取り込みだ。10代後半から20代前半が主力顧客層。丸井の調査では、その年齢を過ぎると気恥ずかしさがあったり、多忙で足が遠のくケースが少なくないという。

ホームページは「マルイヴォイ」の名称で運営する。水着からジーンズ、パーティードレス、秋物新商品まで約3万点を扱う。将来は10万点に広げ、直営の大規模店と遜色ない品ぞろえにする予定だ。

ネット通販の後発ながら、順調なスタートを切った「マルイヴォイ」は、今秋以降外部テナントを誘致する計画もあります。丸井は、「クレジットのマルイ」「駅のそばのマルイ」と、時代に応じて明確にコンセプトを打ち出してきました。近い将来「ネットのマルイ」と称する日が来るのかもしれません。


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