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樋口泰行社長の辞任によってユニクロによるダイエー救済はなくなった?

2006年08月22日

経営再建中のダイエーの樋口泰行社長が、10月上旬に開く臨時株主総会で退任することになりました。しかし、丸紅が産業再生機構保有のダイエー株をすべて買い取り、44.6%を出資する筆頭株主となること発表した、先月28日の記者会見の席上では、現経営陣の続投が発表されていました。情報源は、『ダイエー、経営陣続投へ、筆頭株主になる丸紅社長が意向』(日経流通新聞MJ 2006年7月31日 7面)です。

勝俣宣夫丸紅社長「(林文子)会長と(樋口泰行)社長は続投してもらいたい」

樋口泰行ダイエー社長「小売りの再生は時間がかかるため継続が重要。引き続き貢献させてほしい」

林文子ダイエー会長「厳しい道のりだったが、再生の道筋が見えてきた確信がある。最後まで仕上げたい」

樋口氏が続投の意思を表明してから、1ヶ月も経っていません。続投が明言された手前もあり樋口氏の退任には、関係者も(少なくとも表面上は)一様に驚きを表しています。情報源は、『ダイエー樋口社長退任へ――将来像、丸紅とズレ?』(日経流通新聞MJ 2006年8月21日 7面)です。

「この時期に辞めるのは正直、意外だ」(再生機構首脳)、「驚いた」(丸紅首脳)と、関係者は口をそろえる。「2007年2月期、単体黒字を達成し、勇退するのがメーンシナリオだった」(ダイエー幹部)。

唐突な動きにも見えるが、実は、樋口氏が辞任の意向を固めつつあることは8月以降、間接的に勝俣社長の耳に入っていた。樋口氏は28日の会見直後、ごく親しい関係者に近く社長を降りたいと漏らしている。

その理由は明らかではないが「会見で丸紅が突然、事業パートナーと組むと頭越しに発言し気にかけていた」(関係者)との指摘がある。“後ろ盾”を失ったためとの見方もある。丸紅が筆頭株主となったことに伴い、樋口氏を招いた投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP)が取締役と監査役を退かせることを決めたからだ。

それでは、この1ヶ月間に樋口氏と丸紅側との間で、再建路線の違いが表面化するような事件が起こったのでしょうか? 今週発売の日経ビジネスでは、16ページにわたり特集記事『偽りの再生 ダイエー浮上せず』(2006年8月21日号 26~41ページ)が掲載されています。記事の中で、ダイエー再建にパートナーとして名指しされているのが、ファーストリテイリングです。引き続き、7月28日の記者会見での発言の部分を引用します。

「流通業の中から、新たな事業パートナーとの提携も検討したい」――。

この会見で、勝俣はパートナー候補の固有名詞は挙げていない。丸紅でダイエーを担当する専務執行役員の小川和夫も、「事業パートナーについては全くの白紙。検討はこれから」と強調する。

しかし、周囲はそう見ていない。この会見で勝俣の隣に座っていた再生機構社長の斉藤惇は、勝俣の発言を聞き、瞬時にある企業名が頭に浮かんだ。「ユニクロみたいなものを考えているのかなと思った。衣料品仕入れの仕方を変えるのかな、と」(斉藤)

斉藤だけではない。この会見で続投の意思を宣言したダイエー社長の樋口泰行。彼はより具体的な「ユニクロ待望論」を本誌に明かした。「テナントとして入っていただくだけではなく、商品供給や人材育成を含め、いろんな連携ができたらと思う」

筆頭株主として再生を主導してきた再生機構のトップが関与を予感し、現場を預かる責任者がラブコールを送る。それが同じ会社。偶然と片づけていいはずがない。

ファーストリテイリング(FF)は、ダイエー向けの新ブランド「ジーユー」でテナント出店する予定です。FFのテナント誘致をまとめたのが、かねてから柳井会長と親交のあった樋口社長です。もし、日経ビジネスの推測記事が正しいとすれば、樋口社長はダイエーのパートナーとしてFFが選ばれることを熱望していたことになります。

だとすれば、今回樋口社長が辞任したのは、丸紅がFFをパートナーとして選ぶ可能性がなくなったから、とは解釈できないでしょうか? 日経ビジネスでは丸紅の思惑について、次のような記述があります。

そんな中で、パートナーを模索する丸紅の視界には、ユニクロと異なる流通業が入ってもいる。多くは再生機構によるスポンサーの選考時に、ダイエー争奪のライバルだった企業だ。

丸紅内部にはこんな逡巡がある。「再生機構下でのスポンサー選考時は、その資格には“条件”がついた。ただ、『再生機構が抜けた今、当時の条件はリセットされた』と言う人もいる」。

どういうことか。当時、スポンサーに立候補したイオンと、米ウォルマート・ストアーズが、パートナーの資格を持ち得るか否かを指している。

メーンバンクが丸紅と同じみずほフィナンシャルグループで、スーパー事業では今も日本最大の規模を誇るイオンは、1997年に破綻した旧ヤオハン、2001年破綻のマイカルなど、スポンサーとして大手スーパーの再生を果たした。現場を含めた小売業の再生ノウハウを蓄積している点が強みだ。

ただ選考当時は、「イオンがダイエーの大株主になると、イオン、ヨーカ堂、ダイエーで構成されていた3極の勢力バランスが崩れる。1社の巨大化は望ましくない」との指摘が経済産業省内から出ていた。ウォルマートの場合は、「流通外資の拡大を助長するのは問題」との懸念があったとされる。

今後、ダイエー株の23.5%を保有する2位株主の投資ファンド、アドバンテッジパートナーズが保有株式を売る可能性がある。その引き受け手にユニクロが浮上するかどうかが、当面の焦点だ。

ダイエーとの今後についてユニクロに見解を求めた。「現時点で、店舗を出店する以上の関係は考えていない」との返答があった。

本当にファーストリテイリングは、ダイエーを引き受ける予定はないのでしょうか? 2005年8月期で連結売上高3,839億円のファーストリテイリングは、2010年には「売上高1兆円構想」を掲げています。この遠大な目標の達成に向けて、内外企業の買収による規模の拡大に邁進するが、現在のFFです。

本日も、FFが実施していた婦人服専門店キャビンへのTOBの成立が発表されました。これにより売上高200億円のキャビンがFFの完全子会社となります。しかし「売上高1兆円構想」の大風呂敷からしてみれば、たいした規模の拡大とはなりません。

そろそろファーストリテリングが買収できそうな物件も、アパレル業界の中では底をついてきたようにも思えます。自ら宣言した「売上高1兆円構想」の呪縛から逃れられなくなった柳井会長が、困ったあげくにダイエーに食指を伸ばそうと考えたとしても不思議ではないでしょう。

さらに、日経ビジネスにはこういった記述もあります。

その柳井が私淑していたのが、2005年9月に逝去したダイエーの創業者・中内功だった。中内が唱えた「よい品をどんどん安く」の理念に共感を覚えたと言われる。中内の追悼集会で、こんなスピーチを行っている。

「私はオレンジの月が欠けたようなあのマークが非常に好きです。満たされない何か、完成されない何か、そういったものを求めて進んでいるような気がしまして、大変惹かれます」

さらにこう続けた。「メーカー主導の世界から消費者主導の世の中へと作り変えようとされてきたわけです。(中略)。その遺志は我々小売業者の後輩が引き継いで、必ず日本の小売業を顧客最優先のリーディング産業にしないといけないと思います」。

その、目標にしていた中内が築いた城の再生への協力を要請されれば、前向きに検討しない方が不自然だ。

ダイエー救済は、中内氏の遺志を引き継きたいと願う柳井会長の「男のロマン」なのでしょうか?


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