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実は怪しい?タワーレコード破産とネット配信、アマゾンとロングテールの関係

2006年09月12日

業績不振のインテルは、大規模な組織再編計画の一環として、レイオフ、自然減、業績不振部門の売却を通じ、従業員全体の約10%に当たる1万500人の人員削減を実施する計画を発表しました。公表された段階的な人員削減計画の中で、今年度中のターゲットとされた部門には、マーケティング、情報システム、管理部門が含まれています。

本社の発表を受けてインテルの日本法人の広報室では、「発表の直前に通知があった。日本での対応は、今後本社とやり取りしながらつめていく。現時点では、日本での対応について何も決まっていない」(ITPro)という公式見解を述べています。

現在インテルの日本法人には600名前後の社員が勤務していると思われますが、日本法人には製造や設計部門はなく、社員の多くはマーケティング、セールス関係の部門に属しています。したがって、ワールドワイドで展開する削減計画の影響をモロに受け、かなりの数の社員がリストラのターゲットにされることは確実だと思われます。

このように外資系企業がワールドワイドのリストラを断行すれば、日本法人も深刻な影響を受けることは免れません。他人ごととは言え、従業員の方はご愁傷様です。

さて、業績不振のリストラ策でこれくらいの影響を受けるくらいです。先ほど2度目の破産(米国破産法でのChapter11)を申請したタワーレコードの日本法人の社員も、戦々恐々としているに違いない、と想像するのが当然でしょう。

しかし、日本のタワーレコードには、拍子抜けするほどの余裕が感じられます。その余裕の裏にはこんな事情があるのです。情報源は、『米タワーレコード、再び破産法申請、同業大手へ身売り観測も』(日経流通新聞MJ 2006年8月25日 7ページ)です。

日本のタワーレコードは2002年10月に、MBO(経営陣による買収)により、米法人から独立。昨年にはNTTドコモの傘下入りを決めて、米国から完全に独立した経営を続けている。

タワーレコード(東京・品川)のコメント「米タワーレコードの破産法申請は、日本法人であるタワーレコード株式会社とは一切関係なく、全く影響を及ぼすものではない。資本上ならびに営業上、契約上も(米タワーレコードとは既に)関係なく、店舗運営も日本法人独自で行っており、商号面でも影響は受けない」。

設立時には米国本社の子会社であったところが、その後国内資本からの出資を仰いだ結果、実質的には日本の会社になっている会社は、タワーレコードだけに限りません。タワーレコードと同じく今年の5月にChapter11による破産を申請したSGIの日本法人、日本SGIの筆頭株主はNECになっています。

日本SGIも、米国本社の破産に陥った時には、すぐさま国内ビジネスへの悪影響がないことを表明しています(中央青山監査法人と米国SGI子会社の事業継続上の戦略的選択肢)。そうは言っても、米国本社の苦境がマイナスを影響を及ぼす可能性はゼロではありません。日本SGIは、米国SGIの持ち株をさらに下げる対策を講じました。情報源は、日本SGI、米SGIから自社株を取得です。

日本SGIは、米Silicon Graphicsが所有する日本SGIの株式の一部を自己株式として買い取り、同数の株式をモルガン・スタンレー証券へ譲渡したことを明らかにした。米 Silicon Graphicsの日本SGIに対する出資比率は19.9%から10.5%に低下した。

親子関係は希薄になったとした元の親会社が破産申請をすれば、日本法人の関係者は悪影響を打ち消すために右往左往していると言うのが、これらの会社の実情でしょう。タワーレコードやSGIが一時代を築いたブランドであることは確かです。しかし、現在ではそのブランド名を使うことのマイナス面を多くなってきています。独立した日本法人の健全な経営を強調するためには、長期的には社名を変更するのが得策なのではないでしょうか。

さて、話をタワーレコードの倒産に戻します。iTunesに代表されるダウンロード販売の影響でCDやDVDの売れ行きが低迷していることが、タワーレコードの倒産の最大の理由なのでしょうか? 毎日新聞では、同社の業績不振の背景をこのように説明しています。

米アップルコンピュータの携帯型デジタル音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」などによって音楽のインターネット配信が急速に普及したため、CD販売が低迷していた。

最近では、iPodやiTunesに代表される音楽配信ビジネスに関する報道が、毎日のようにマスコミを賑わせています。したがって、タワーレコードの破産の理由に関係づけたくなる気持ちも十分に理解できます。しかし、米国のレコード販売ビジネスの実態を考えると、ことはそんなに単純な話ではありません。日経ビジネス(2006年9月4日号 12~13ページ)では、米国音楽市場の動向が分析されています。

音楽ソフトの販売シェアの推移(米国) 全米レコード協会によると、音楽ソフト販売におけるレコード・CD専門店のシェアは1989年には71.7%にも上ったが、90年代に急低下し、2004 年には32.5%まで落ちている。

背景には、ウォルマートやターゲット、ベスト・バイといった量販スーパーや家電量販店が売れ筋商品を低価格で販売してシェアを伸ばしたことがある。それは、「その他店舗」のシェア急伸に表れている。

タワーレコードのシェアを奪ったのは、ウォルマートに代表される大型量販店であることは明らかです。ネット配信も近年急速にシェアを伸ばしつつあることは確かですが、そのシェアはわずか10%程度であり、今回のタワーレコード破産の直接の原因とは考えらるものではありません。もちろん将来的な影響を無視することはできませんが。

日経ビジネスでは、カリフォルニア州サクラメントのあるタワーレコード1号店の状況について、次のようにレポートしています。

隣の店に勤めるジェリー・コーサムは、この地に移って40年になる。そして、タワーレコードの盛衰を間近で見てきた。彼女に言わせれば、めっきり客足が減ったのは、ウォルマートのせいだという。

街道を挟んではす向かいにウォルマートがオープンしたのは2年前のこと。CD売り場は狭いが、売れ筋商品に絞って陳列している。だから、通りがかった客がCDやDVDを手に取り、買い物カゴに放り込んでいく。

サクラメント生まれのアンソニー・ターは、「2枚10ドル」というDVDを握りしめていた。

「これをタワーレコードで買ったら25ドルはするだろうな。あそこは家から近いけど、俺は新聞しか買わないよ」

確かに、値段の差は歴然としている。人気急上昇中の女性歌手、パリス・ヒルトンのCDは、タワーレコードでは13ドル99セントだが、ウォルマートは9ドル72セント。「ピンクパンサー」のDVDに至っては、タワーレコードでは28ドル99セントだが、ウォルマートは13ドル72セントで売っている。

CDや書籍には再販制度のある日本のマーケットからは、想像もできない価格差です。考えて見れば、再販制度に守られた日本のタワーレコードのビジネスが安泰であり、西友を完全子会社にしたウォールマートが日本市場では苦戦しているのは、皮肉な話でしょう。

流通法制度の違いも、ウォールマートのEDLP(EveryDay Low Price)戦略が日本ではこれまで成功しなかった理由の1つです。もし、日本で再販制度が撤廃されることになれば、EDLP戦略の効果ももっと上がることでしょう。

また、ウォールマートは現在、丸紅からダイエーを買い取ることを計画しています。将来ダイエーの店舗でCDやDVDが米国並みの安さで売られることになれば、日本のタワーレコードも決して安穏とはしていられないはずです。そんな可能性は、極めて低いでしょうが。

具体的な販売シェアの推移を見れば、タワーレコードを駆逐したのはネット配信ではないことがわかります。現在ネット配信のプレゼンスが実態以上に注目されているからと言って、短絡的に両者を結びつける愚は慎むべきでしょう。

Web2.0の代表としてアマゾンの成功の理由を、流行の「ロングテールの法則」に求める論調も数多く見られます。しかし、アマゾンとロングテールに関する"大きな間違い"では、アマゾンと他のネット企業との財務データを分析した結果、アマゾンの成功要因はむしろ圧倒的な「規模の経済」(Economy of Scale)にあると結論づけています。

さらに勝因がオールドエコノミーが得意として規模の経済にあるとすれば、アマゾンはむしろWeb1.0型企業に近いとも論じています。この説が正しいとなると、野村総研が提唱しているGooglezonモデル(Google+Amazon)の命運にも、暗雲が立ちこめてきます。

世間が大騒ぎするバズワード(buzzword)に踊らされることなく、データをベースに客観的に分析すると、また違った姿が見えてくるかもしれない、と言うのが今回の結論です。


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