資生堂のメガブランド戦略と、戦略なきアサヒビールのマルチブランド
2006年09月14日
製品分野毎に大型ブランドに絞り込むことにより、広告宣伝費等のマーケティング投資を集中的に投下するのが「メガブランド戦略」の要諦です。メーキャップブランドの「マキアージュ」、男性用化粧品の「ウーノ」、シャンプーの「TSUBAKI」に絞り込んだ資生堂の戦略が、この好例です。中でも、業界の常識を破り有名タレントを一挙大量に登場させた「TSUBAKI」のテレビCMは、そのインパクトの大きさで注目されました。
鮮烈なデビューを飾った「TSUBAKI」は、シャンプー市場で期待以上のマーケットシェアを獲得することに成功しました。現在のところ資生堂のメガブランド戦略は奏功しているようですが、この戦略にも課題がないわけではありません。派手な広告で取り込んだ消費者を、単一ブランドでどこまでつなぎ止めることができるかが問題です。
「TSUBAKI」も一部の店頭では、すでに値崩れが始まっているという話も聞きます。さらにライバルのカネボウも、ヘアケアブランドの「SALA」をリニューアルしてきました。カネボウが「SALA」の広告キャラクターとして起用したのが、人気急上昇中の沢尻エリカです。
テレビドラマの役名の雨音薫で出した沢尻の「タイヨウのうた」が大ヒットすれば、彼女1人で資生堂「TSUBAKI軍団」を吹き飛ばしてしまう可能性だって考えられます。 エリカ嬢の"隠れ巨乳"が拝めた「SALA」のテレビCMに喜んだのは男性だけで、シャンプーの購買層である女性ユーザの消費行動には影響はない、と言った見方もありますが・・・
いずれにせよ、導入からある程度の期間が経過したこれからが、資生堂のメガブランド戦略の正念場になってくるのは、間違いないでしょう。
ビール業界のメガブランドと言えば、アサヒのスーパーDRYです。スーパーDRY一本で、長年ビール業界に君臨してきたキリンのシェアを、2000年にアサヒが追い越したわけですから、まさにメガブランド恐るべしです。
しかし、スーパーDRYが強力だったが故に、その後の発泡酒、続く第3のビール戦争に乗り遅れたのがアサヒです。このままで行けば、今年度末にはビール系飲料の通年シェアで、キリンに再逆転される可能性も濃厚になってきました。
キリンの追い上げで尻に火がついたアサヒが取ったのは、「戦略なき」マルチブランド戦略です。情報源は、『新製品を“乱発”するアサヒビールの苦悩』(週刊東洋経済 2006年9月16日号 18~19ページ)です。
アサヒビールの新製品攻勢が止まらない。10月17日に第3のビール「極旨」を発売。続けて11月7日には、発泡酒「贅沢日和」を投入する。
ビール業界では真夏の最需要期が過ぎると、「秋味」や「冬季限定品」で販売数量を底上げするのが一般的。この時期に大型新製品を次々と投入するのは、極めて異例だ。
それにしても、この1年間でアサヒが投入した新製品は、実に5ブランドにも上る。昨年11月に第3のビール「新生3」を投入して以来、今年5月に第3のビール「ぐびなま。」、6月にプレミアムビール「プライムタイム」を発売している。
「いつになったら新製品の乱発をやめるのか」。今年8月、アサヒビールの中間決算説明会では、アナリストから厳しい質問が投げかけられた。実際、アサヒの多さばかりが際立つ。キリンビールが今年発売した新製品は発泡酒「円熟」のみ。サッポロビールも発泡酒「雫〔生〕」、サントリーも第3のビール「ジョッキ〔生〕」と、それぞれ1ブランドにとどまっている。
特に混迷を極めるのは、矢継ぎ早に投入される第3のビール分野での商品コンセプトです。「新生3」と「ぐびなま。」の違いが浸透しきらないところに、さらに「極旨」が加わるわけですから、長期的にブランドを育成しようとする戦略性は全く感じられません。
アサヒが弱い第3ビール分野を引っかき回して、最終的には消費者の信頼感を、自社が強いビール分野に回帰させると言ったゲリラ戦略でも隠されていれば、たいしたものですが・・・
ブランド戦略で迷走するアサヒが繰り出したのが、ビール系飲料すべてを対象にした景品プロモーションです。こちらの方は結構いけてます。 情報源は、「はい! こちらナントカ警備隊っ」がやりたかった男たちです。
“ヒーローもの”漬けで育った野郎の目に飛び込んできた「スーパーワンセグTV Watch」はその瞬間、数々の妄想を沸き立てさせるものだった。
アサヒビールは2006年9月13日から、W-SIMスロットとワンセグチューナーを搭載する腕時計型PHS「スーパーワンセグTV Watch」などを景品として用意するビール類キャンペーン「2006 うまい!旬感プレゼント!」を開始する(すでに応募シールが貼られた商品は出荷されている)。
コカコーラが展開中のキャンペーンでもらえる「ジョージアオリジナルワンセグTV」よりは、センスが感じられます。昨秋に20代の若者層の取り込みを狙って、製品ラインナップをリニューアルしたのがジョージアです。この路線変更は大失敗に終わり、日本法人の社長も交代しました。
結局、従来の男性サラリーマンにターゲットに戻すこととし、前回のリニューアルからわずか半年でパッケージデザインも再変更することになりました。CMでも渡哲也と木村拓哉の大物タレントを起用し、巻き返しを図っています。困った時のワンセグ・キャンペーン頼りは、飲料業界の常識なのでしょう。
「2006 うまい!旬感プレゼント!」の狙いについて、アサヒビール酒類本部営業部 商品グループプロデューサー丸山剛司氏は、次のように述べています。
2006年9月13日から11月30日まで約2カ月半、いわゆるビール類全般(ビール、発泡酒、新ジャンル、ノンアルコールビール含むビールテイスト飲料)の消費者キャンペーンです。商品には応募用シールが貼られ、それを集めると抽選で景品が当たりますというものとなります。
今回は、いわゆる「ビール類すべて」対象のものとして初のキャンペーンとなります。今までは例えば「スーパードライの~」「本生の~」など単体の商品に対するものでしたが、「ビールを飲むが、発泡酒も飲む」というように併飲する人も多くなっています。それならば単体だけというより、ビール類でくくられていたほうが幅広い人を対象に応募していただけると思いから「ビール類すべて」としました。
う~ん。どうもこの説明は額面通りには受け取れません。対象を「ビール類すべて」にしたのは、乱発した新製品の中から何を戦略商品として絞り込むかを、当のアサヒ自体が決めかねていることの証拠のように思えます。
アサヒに厳しいことは言っても、景品の「スーパーワンセグTV Watch」は魅力的であることは認めます。このキャンペーンには応募シールが36枚(!)必要です。 ところで製品に貼られている応募シールは、すべて同じなのでしょうか?
もし、製品毎に違ったシールが貼られているのであれば、安い第3のビールよりも、プレミアムビールの「PRIME TIME」と「スーパーDRY」からシールを集めた方が、当選の確率は高くなるような感じがします。これは少し考えすぎでしょうか?
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