「ロケフリ」のデファクト化で失点を重ねるソニーの名誉挽回を期待
2006年09月27日
悪いニュースにこと欠かないのが最近のソニーです。レノボ製「ThinkPad」発火事件の原因も、ソニー製のバッテリにあることが判明しました。今週発売の週刊東洋経済の15ページに及ぶ特集記事『ソニー激震』でも、その危機的状況が克明に分析されています。こうした危機的状況を打開するために、ソニーは社内体制の強化策を実施しました。情報源は、ソニー:危機管理を強化 副社長3人体制にです。
ソニーは25日、主力の電機部門で半導体や電池などの部品を専門に担当する副社長を新たに置き、副社長を3人体制にすると発表した。同社製のパソコン用リチウムイオン電池が発火事故を起こし、米デルなどが無償交換に乗り出したり、次世代DVDのブルーレイ・ディスク用の部品生産が遅れ、プレイステーション 3(PS3)の欧州発売が4カ月延期されるなど、電機部品でトラブルが続発したため体制強化を急ぐことにした。
窮状ばかりが伝えられる中で、唯一健闘しているソニー製品が液晶テレビの『BRAVIA(ブラビア)です。しかし、iPodでWalkmanを駆逐したアップルの影が、リビングルームにも迫りつつあります。先ほどアップルは、2007年第1四半期に発売予定のセットボックス製品「iTV」の概要を、プレビューの位置づけで公表しました。
将来発売予定の製品の詳細に関しては、正式発表日までは公言しない「秘密主義マーケティング」を基本とするアップルにしては、異例の事前予告です。アップルがこの時期にプレビューに踏み切った背景についての分析は、アップル「iTV」発表への7つの疑問をお読み下さい。
また、アップル、インテル、マイクロソフト、ソニーがこぞって狙うホームサーバ・マーケットの分析については、「iTV」に見るAppleの野望が詳しいようです。個人的には、映像コンテンツをiTunes Storeで購入して、ネットワーク経由でリビングルームの大画面テレビで見る、といったアップルの構想にはリアリティを全く感じません。映画をダウンロードする時間と手間を考えれば、スカパーあたりで見た方がよほど簡単だと思えるからです。
私にとっては、ソニーが10月に発売する機能を強化した「ロケフリ」の方が、「iTV」よりも格段に実用的で魅力的に思えます。 現行品の「LF-PK1」を購入しようとも考えたのですが、新製品の登場を待つことにしたくらい大きな期待をしています。情報源は、ソニー、H.264対応 新「ロケフリ」発表--リビング以外のTVもワイヤレスへです。
ソニーは9月6日、インターネットを介して外出先や海外でも日本のテレビ番組を閲覧できる「ロケーションフリー(ロケフリ)」の新端末「LF- PK20」(10月20日発売、市場想定価格:3万3000円前後)と「LF-BOX1」(10月27日発売、同:2万3000円前後)を発表した。
LF-PK20は、ノートPCやPSPなどのモバイル機器で映像を閲覧するための「ロケーションフリーベースステーション」で、動画圧縮技術「MPEG-4 AVC(H.264)」に対応した。従来モデル「LF-PK1」の製品と比べ、同じビットレートでもより鮮明な画像を見ることができる。
また、外出先から見るためのセットアップが簡略化され、初期設定が簡単になった。ルータとワイヤレスで接続が可能になり、ケーブルレスでルータとベースステーションを別の部屋で設置できるようになったほか、DVDレコーダーなどの外部接続機器のリモコンデータを認識する「学習リモコン」機能が付いた。
ロケフリを使って外出先からインターネット経由で録画したテレビ番組を見る、といったようなハイレベルな使用方法は、私にとっては想定外のものです。

実は、私のような使い方はソニーとしては好ましくないという見方もできます。HDレコーダーも販売しているソニーは、本当はテレビがある部屋にはすべてHDレコーダーを設置してもらいたいのかもしれません。スカパーの筆頭株主でもあるソニーは、別の部屋で見るのであれば複数契約が望ましいのでしょう。しかし、そんなことを考えていては、同じようなしがらみのないアップルに負けてしまうのは明らかです。
さらに「ロケフリ」のマーケティングでソニーが一皮むけたと思える点は、その積極的なライセンス戦略にあります。ライバルのアップル製品にも「ロケフリ」は対応しています。情報源は、『ソニー、「どこでもTV」技術ライセンス拡大』(日経産業新聞 2006年5月31日 9面)です。
ソニーがインターネット経由でテレビ放送を転送する独自技術「ロケーションフリー」の使用許諾(ライセンス)を拡大している。ネット接続さえすれば、普段自宅で見ている番組を国内外どこでも外出先の端末で受信できる。同事業責任者の前田悟LFX事業室長に普及戦略などを聞いた。
――加賀電子やACCESSへのライセンス供与で、ロケーションフリーを利用できる端末の種類がさらに増えた。各社の発売計画は。
「加賀電子は米アップルコンピュータのパソコン向けソフトを6月に発売する。ACCESSは米マイクロソフトの基本ソフト(OS)を使った携帯情報端末(PDA)などに載せるソフトを夏に商品化する。OSの『ウィンドウズ』を使うパソコンやソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の携帯ゲーム機『PSP』にも対応済み。夏には欧州でソニーエリクソンが携帯電話を売り出す」
――ソニーが独自技術を他社に積極利用してもらう戦略は珍しいが、狙いは。
「この技術には様々な用途が考えられ、単独ですべての端末を開発するのは難しい。さらに、米国では競合企業も登場している。全く新しい市場で優位を築くには、他社との提携でスピードを上げる必要がある」
ソニーが技術開放型のアライアンス・モデルに戦略転換したのは、携帯オーディオプレーヤーの独自フォーマット「ATRAC」にこだわったために、MP3を採用したiPodに追い抜かれてしまった苦い経験が生きているのではないでしょうか。今回はいち早くライセンス供与に踏み切ることにより、ロケフリのデファクトスタンダード化を加速させようと考えているのだと想像できます。
ゲーム機にはオーバースペックとも思えるブルーレイにこだわり続けために発売が遅れて、欧米ではシェアをXbox360に奪われつつあるのがプレイステーションです。対照的にデファクトの早期確立を最優先課題として、独自技術の開放を進めているのがロケフリです。この技術開放戦略が奏功して、リビングルームでのソニーのプレゼンスが維持できることに期待しましょう。
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