厳しさ増すセキュリティソフトベンダ「前門のソースネクスト、後門のMS」
2006年09月28日
中国の大手ソフトメーカー・キングソフト(金山軟件)の日本法人・キングソフトが、年間利用料980円と千円を切るセキュリティソフト「InternetSecurity2007」を発売しました。さらに一度購入すれば年間更新料の必要のない無期限ライセンス版も、3,900円(税込み)で投入します。計算上は4年間使用すれば(980円 x 4年)で元が取れることになりますが、無期限ライセンス版の割安感はあまり感じられない価格設定でしょう。
キングソフトが3,900円という価格にしたのは、無期限ライセンス版で先行するソースネクストの『ウイルスセキュリティZEROの3,970円を参考にしたからでしょう。しかし、ソースネクストの単年度製品『ウイルスセキュリティ2006』は、1,980円です。
こちらの方は、2年間の継続(1,980円 x 2年)でイコールになる計算です。キングソフトも無制限ライセンス版を本気で売るつもりがあるのであれば、2,980円以下に設定しなければ、ソースネクストに対抗するのは難しいと思います。
このようにソースネクストが火をつけたセキュリティソフトの「低価格・更新料無料」の波は、長い間シマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーの大手3社の寡占状態が続いていたマーケットの構造を揺るがしつつあります。情報源は、『個人向けセキュリティーソフト――攻める低価格、守る多機能、ソースネクスト急伸』(日経産業新聞 2006年9月26日 3面)です。
今年7~8月、個人向けセキュリティー対策ソフト市場の勢力図が大きく塗り替わった。低価格ソフトを得意とするソースネクスト(東京・港)が店頭でのシェアを一気に倍増させ、トレンドマイクロを抜いて2位に躍り出たのだ。調査会社のBCN(東京・文京)によると、ソースネクストのシェアは7月に25.3%と前月より11.1ポイント上昇、8月も勢いは続いている。
躍進の原動力は7月6日に大手に先駆けて出荷を開始した3.970円の低価格製品「ウイルスセキュリティZERO」。
機能は同社が1,980円で販売していた従来製品と同じだが、2年目以降の継続利用にかかる更新料を無料にした。
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セキュリティー対策ソフトはウイルスの特徴などを記した「定義ファイル」を更新しないと、新種のウイルスを検知・駆除できない。定義ファイルを入手するため、利用者は2年目以降、年3,000~5,000円の更新料を支払うのが普通だったがソースネクストはこの常識を覆した。同社の松田憲幸社長は「顧客にとってセキュリティー対策は単なるコスト。新たな価値を何も生まない。だったら少しでも安い方がよい」と力説する。
私もソースネクストが、業界の常識を破る無期限ライセンス版を発売したときには、正直これほどまで売れるとは予想していませんでした。日々新たな脅威が生まれているネットの世界で、基本ソフトへの追加パッチ型の対応で十分だろうか、という疑問を感じたからです。さらに各種掲示板での風評では、ソースネクストの対応の迅速性を不安視する書き込みも、決して少なくありませんでした。
結局のところ、今から遠い将来のことを心配するよりは、当面は向こう2年程度のコストを計算してソースネクスト製品を選んだというのが、大多数のユーザ心理なのではないでしょうか。
こうしたソースネクストの攻勢を受けて、大手3社の方でも、今秋以降相次いで機能強化した新製品を投入します。シマンテックは9月21日、コンシューマー向けのセキュリティ対策ソフトの新バージョンとなる「ノートン・アンチウイルス2007」と「ノートン・インターネットセキュリティ2007」を発表しました。情報源は、シマンテック、パフォーマンス向上を図った「ノートン」新バージョンを投入です。
ノートン・アンチウイルス 2007は、ウイルス/ワームやスパイウェア対策機能を搭載したコンシューマー向けのセキュリティ対策ソフトだ。
ノートン・インターネットセキュリティ 2007はこの機能に加え、パーソナルファイアウォールやNorton ConfidentialによるWebブラウジングの保護、フィッシング対策といった機能を提供する。
なお「アンチスパム機能」と「保護者機能」は、ノートン・インターネットセキュリティ2007向けのアドオンパックとして提供される。
Norton Confidentialでは、ユーザーがアクセスしようとするWebサイトが安全か危険かを表示する。既知のフィッシングサイト情報を集約したブラックリストに加え、URLやコンテンツ、サイトの構造を分析してリアルタイムにWebページの安全性を評価するヒューリスティック技術も活用して評価を下す仕組みだ。また、アクセス中のユーザーの挙動を盗み見ようとするマルウェア(クライムウェア)をブロックすることも可能という。
セキュリティソフト老舗のシマンテックが取るソースネクストの低価路線への対抗策は、あくまでも高機能化です。果たして大多数の一般ユーザが、ここまでのセキュリティ機能を求めているのでしょうか? 高機能化が進んだシマンテック製品には、ソフトが重くて起動に時間がかかる、高機能だが使いにくい、といった問題がありました。この点では、今回のバージョンアップで改善が図られています。
同時に、「製品が拡大するにつれて、パフォーマンスが低下してきた」という顧客からの声を踏まえ、全体的なパフォーマンスの改善が図られたという。使用メモリが10~15MB程度にまで削減されたほか、ブート時間の短縮、スキャンの高速化やユーザーインタフェースの反応速度の向上などが実現された。また、バックグラウンドでシステムの完全スキャンを行う機能もサポートされた。
合わせてインタフェースの改善も図った。「ファイアウォールが警告のポップアップ画面をたくさん表示すると、ユーザーにはストレスになる」(シマンテックのシニアプロダクトマーケティングマネージャ、風間彩氏)。そこで、ユーザーに複雑な判断を迫らず、裏側で処理を行うことで、わずらわしさを減らすようにした。
ソースネクスト製品の躍進が、シマンテック製品にもユーザビリティの向上という点では好影響をもたらしたように思えます。これでシマンテックの業界地位は安泰と言えるのでしょうか? グローバル規模で考えれば、セキュリティソフト企業が最も恐れているのはマイクロソフトです。セキュリティ市場への本格参入により、セキュリティ専門家のマイクロソフトへの流出が相次いでいます。情報源は、MS、またもや著名セキュリティ専門家を引き抜きです。
Microsoftは、またもや著名なITセキュリティ研究者を、拡大中の自社のセキュリティチームに加えた。同社が今回引き抜いたのは、ウイルス対策ソフトメーカーであるMcAfeeのAVERT(ウイルス対策・脆弱性緊急対応チーム)Labsの元リサーチフェローのジミー・クオ氏だ。
クオ氏はMcAfeeのAVERT Labsが1995年に設立されて以来のスタッフであり、複数の情報筋によると、Microsoftではウイルス対策分野のリーダーとしての役割を担うらしい。
McAfeeからのクオ氏の引き抜きは、セキュリティソフトウェアベンダーからMicrosoftへの主要なスタッフの移籍として、この1カ月間で2件目となるもの。Microsoftは8月中旬、ベテランウイルスハンターのビンセント・“ビニー”・ガロット氏をSymantecから引き抜き、 Microsoftのセキュリティ研究対策チームの責任者として迎え入れたと発表したばかり(関連記事)。
エース級の人材ばかりを引き抜かれては、セキュリティソフト各社の製品開発やサポート面で支障がでてくる可能性も否定できません。将来的にはすべてマイクロソフト製品に統合されてしまうのでしょうか? 結局、先のことはよくわかりませんが、セキュリティソフト企業を取り巻く「前門のソースネクスト、後門のマイクロソフト」という状況が厳しくなるのは間違いないでしょう。
であれば、とりあえず2年程度継続して使う覚悟で、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」あたりを買うのが賢い選択ではないか、というのが今回の結論です。もちろん、セキュリティの専門家の人は、こんないいかげんな結論には満足しないでしょうけど。
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【追記】
新手の戦略を打ち出す会社も登場:ウイルス被害に遭ったら1500ドルまで補償します---CAがセキュリティ新製品を発表。
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