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ネットでテレビCMを販売する電通の「CMGOGO」はWeb2.0的CMモデル?

2006年10月03日

以前に『日本メガネ党』や『ナイキiD』といった、テレビでの放送を前提としないYouTube向けのCMが制作されていることを紹介しました(NikeはYouTube用CMを作り、日清カップヌードルはヤフーで限定公開)。YouTubeを使えば媒体掲載料はゼロになりますが、残る問題は投稿するCMをいかに低コストで制作するかでしょう。実は、今ではWebベースに手軽に自社のCMを作れる時代になっています。情報源は、『ニッチ市場、電通が照準、テレビCMをネット販売、地方・中小掘り起こし』(日経産業新聞 2006年10月3日 2面)です。

電通は2日、インターネットを使ってテレビCM(スポット枠)を販売する「CMGOGO(ゴーゴー)」を始めた。広告主が見本映像などを選んでCMを企画、地域限定で放映するという国内初のユニークな仕組みだ。利用者の発想や情報発信力をいかすネット新潮流「Web2・0」の視点を取り入れ、テレビCMは大企業中心という常識を覆そうとしている。

仕組みは簡単だ。広告主は専用ホームページで放映地域を登録、放映内容の審査を受ける。審査後、約50種類の見本映像から「開業」や「販売」などテーマに合った素材を選択。音声やメッセージを組み合わせて15秒間のCMを完成させる。

料金は関東地域で15日間に10回放映する場合、525万円(税込み、放送局は選べない)。登録から最短1カ月程度での放映も可能。制作費だけで数千万円に上ることも珍しくはないテレビCMの常識を覆す試みとして業界内の関心も高い。

500万円強の初期投資をすれば、天下の電通の素材を使ったオリジナルのCMが作れることになります。できあがったCMをYouTube等の動画投稿サイトにアップすれば、極めて効率的なプロモーション戦略が実現できそうな期待感が高まります。しかし、そんな目論見は脆くも崩れ去りました。『CMGOGO』のFAQには、次のような但し書きがあるのです。

【パッケージ2 CM素材】

CMのプロが制作したCMGOGOオリジナルの「CMライブラリー」の中から好きな作品を選んで企業ロゴや商品名、メッセージを登録します。

  • パッケージには「CMライブラリーの利用料金」「企業ロゴや商品名、メッセージなどの加工・編集料」が含まれています。
  • CM素材はご購入いただいたCMを放送する枠のみでの利用となります。
  • お客様からのお持込のCM映像はご利用いただけません。
  • CM素材の著作権は電通に帰属します。
  • CM素材の長さは15秒のみとなります。

電通にとっては破格の値段で提供するパッケージ商品なのでしょう。かなり厳しい使用条件が付加されています。別枠での放送は禁止されているので、動画サイトへの投稿も御法度でしょう。さらに著作権が譲渡されない以上、クライアント企業は電通に無断でCMを編集し直すこともできません。安価に作れたCMも、結局は電通の虜ということになります。

ところでテレビCMと言えば、私は公共広告機構(AC)のキャンペーンCMに関して投稿したことがありました(貰いたくないクリスマスカードNo.1は、エイズ感染の危険性を警告するメール)。このとき私は、ACのサイトにリンクを貼ったのですが、実はこうしたリンクはACには好ましくない行為とみなされていたようです。情報源は、公共広告機構ACがハンドルネームで運営のサイトからのリンクを固くお断り)です。

Anonymous Coward曰く、"社団法人公共広告機構の「本サイトについて」 には次の通り書かれている。

本サイトへのリンクは、原則お断りいたします。特に以下のリンクは固くお断りいたします。(中略)
・サイトの管理・運営者が不明、またはハンドルネーム等により運営されているサイト、あるいは代理運営されているサイトなどからのリンク

これは不当なサイバー市民差別ではないだろうか。沿革によると、公共広告機構は「広告のもつ強力な伝達力や説得機能を生かし、社会と公共の福祉に貢献することを目的として」設立されたのだそうだが、こうした非常識なポリシーも強力な伝達力で広めるのだろうか。

ここでも、ネット社会に完全に気を許してはいない電通の影が、見え隠れします。

なお、このポリシーは株式会社電通のものと同一のようだ。 archive.orgの記録によると、2005年3月まではこの記述はなく、比較的最近に加えられたポリシーであることがわかる。検索してみると他にも「クロス・メディア・マーケティング株式会社」にも同じ文面を含むポリシーが書かれており、広告業界を中心に伝染しつつあるようだ。我々サイバー市民の常識が広告会社によって非常識化される日も近い。"

このリンクポリシーについて疑問を持った産総研の高木浩光氏は、公共広告機構に突撃気味に電話をかけました。そのやり取りの一部始終は、「リンクお断りは普通」と人の心に種を蒔くACに克明に報告されています。結構笑えます。

しかし同じ公共広告でも、米国の場合はあらゆるメディアを通じてメッセージを伝達することを第一に考えて行動しています。米国政府自らがYouTubeに投稿しているくらいです(アメリカ政府がYouTube利用へ,麻薬撲滅広告を投稿)。

米国政府の国家薬物取締政策局(ONDCP,Office of National Drug Control Policy)は米国時間9月19日,動画共有サービス「YouTube」に麻薬撲滅キャンペーンの広告動画を投稿した,と発表した。YouTubeへの動画投稿は,米国の政府機関として初めてという。

ONDCPはプレスリリースで「この画期的な試みにより,ONDCPはより多くのアメリカのインターネット社会への接触が可能になるだろう。また,急速に変化する今日の通信環境に公的機関がどのように適応できるかの例証にもなるだろう」と述べている。

ONDCPがYouTubeに投稿した動画は「http://www.youtube.com/ONDCP」で視聴できる。

広告の目的が幅広い層にメッセージを伝達することであると考えれば、米国政府の考え方は当然でしょう。これとは反対に広告にまで著作権を主張することが、いかに企業として矛盾した行為であるかは、「プロブロガー」は成立するかで述べられています。

マーケティング理論からすれば、コマーシャルはコピーフリーでなるべく多くの機会に複製され、伝播されなければならない。

そこには著作権の侵害が起こるのではないかという人もあろう。だがそれもまた、ナンセンスである。なぜならば、著作権というのは元来、商売の利益が犯されないためのルールだからである。

最近は著作権が基本的人権のような生得権であるかのような考え方になってきたが、これ自体は著作権を啓蒙する過程で、特許などと違って特に申請しなくても発生する権利であるというところから導き出された、ある種の極論であると言える。

著作権の原則は、

1.まねしたりすると儲からねえからやめろ

2.使いたいなら金よこせ

3.こっちも商売ですからそのあたりいくらでも相談に乗りますゼ

ということである。商売を阻害し、利益を無視してまで広告物の著作権を守るという考え方は、自重によって自己崩壊するブラックホールと同じだ。だが、今まさにそれが起こり始めている

ネットの伝播力を本気で利用するつもりならば、CMはコピーや投稿フリー、サイトへもリンクフリーというのが、これからのマーケティングの王道ではないでしょうか。


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