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「Mixi takes all」と意外に強気な一面を見せるミクシィ笠原健治社長

2006年10月24日

前回の投稿ミクシィ笠原健治社長の記事はどれも同じで面白みに欠けるが...に引き続き、ミクシィ(Mixi)の笠原健治社長のインタビュー記事を紹介します。謙虚で堅実なイメージの強い笠原氏ですが、ミクシィの将来性に関する話題では、その発言は揺るぎない自信に溢れた経営者のそれへと変わります。特に現在570万人のミクシィの会員数の目標数値に関しては、かなり強気な数字を想定しています。情報源は、『実名性が商機を生む』(日経ビジネス 2006年10月23日号 64~6ページ)です。

問 これからどういうペースで増えていくと予想されますか。

答 目標は特にお話ししていないんですけれども、2007年3月末にSNSの利用者が1000万人を突破するという総務省の予測と、SNSの86%ぐらいはミクシィを使っているというデータがありますので、単純に来年3月末には900万人近くまで増加している可能性があると思っています。

最終的には、さすがに(ネット人口の全部を網羅する)7000万は無理だと思いますし、18歳以上の半分でもなかなか大変だと思っているので、3分の1ぐらいかなと想定しているんですけど。まぁ、2000万人から3000万人ぐらいですね。

笠原氏が18歳以上のネットユーザ数を引き合いに出しているのは、ミクシィのユーザは現在18歳以上に限定されているからです。日本に上陸すればミクシィの強力なライバルになると見なされている、米国最大のSNS「マイスペース(MySpace)」の利用可能年齢は、もっと幅広く14歳以上に設定されています。このためマイスペースでは、18未満のユーザに関して種々の利用制限を設けています。

迎え撃つミクシィ側は、利用可能年齢を引き下げるという対抗策は、当面予定していないようです。18歳以上の人口だけをターゲットにして、2,000万以上のユーザの獲得を目指すからには、これまでの成長スピードが鈍化することはまったく予想していないことになります。強気ともとれる目標を掲げる理由は、競合サービスの登場がミクシィにとって脅威とはならない、と考えているからです。

問 ヤフーや楽天などもSNSを始め、競合他社がどんどん出てきています。ユーザーが移ってしまうリスクについてはどうお考えですか。

答 基本的には移りにくいと思います。ミクシィの場合、自分の友達が10人いるとすれば、10人中5~6人ぐらいは既にミクシィを使っているという世界なんです。登録して日記を書けば、いきなり5~6人が見てくれて反応をもらえるし、彼らのうちの誰かが日記を更新している。

要は友達がたくさん使っているサービスかどうかというのが重要で、それはオークションなどと同じですよ。結局、ユーザーが多くいるオークションほど、出品する人や落札する人が増えますからね。携帯電話も同じで、やっぱり一定数を超えるとみんなが使っている携帯会社の方が便利になってくるでしょう。

問 収穫逓増の法則が働くと。群雄割拠にはならないサービスなんですね。

答 まあ、そうですね。SNSは独り勝ちしやすいサービス分野だと思っています。

SNSマーケットにおいては「ネットワークの外部性」(Network Externality)が典型的に働く構造にあるので、結局は「勝者独り占め型」(A Winner Takes All)の結果に落ち着くと、笠原氏は考えているわけです。@ITにはネットワークの外部性(ネットワークの外部効果)について、次のような説明があります。

ネットワークの特性を持つ製品・サービスにおいて、利用者数や利用の頻度などがその製品・サービスの利用によって得られる効用や利用価値に影響を与えるという性質のこと。価値の源泉が製品・サービスそのものではなく、需要側──しかも特定の需要者の個別のニーズではなく、需要者全体に依存する構造になっていることを示す言葉。

ネットワーク外部性が働く製品・サービスには、「クリティカルマス」と呼ばれる一定の普及率があるとされる。これは、その市場において多くの人が受け入れることができる利用価値が達成される普及の度合いといえるが、この普及率を超えるとその製品・サービスは急速に広まる。

そのためネットワーク外部性が働く産業では、その製品・サービスの機能や品質の優劣よりも、いかに早くクリティカルマスを超えるユーザーを獲得し、“正のフィードバック”の状態を構築するかが普及の決め手となる。

ネットワークの外部性の例としてよく引き合いに出されるのが、ビデオ(VHS/ベータ)や電子マネー(Suica/Edy)の規格争いです。笠原氏の目標通りにユーザ数が2,000万人規模に到達して、ミクシィの独り勝ち状態になれば、その一例としてSNSのマーケットのことが、加わることになるのかもしれません。

笠原氏がミクシィのアイデアを得たのが、米国のSNS『Friendster』です。当時のFriendsterは、爆発的な勢いでユーザを伸ばしていました。その勢いはGoogleが買収を持ちかけたくらいでした( スケベ心から始めたサービスが3,000万ドルでGoogleに買われる夢物語)。しかし、いまやその面影はありません。

このように何が起こるかわからないのがネットの世界です。ミクシィの場合も、現状に満足しているだけで新たな投資を怠れば、足をすくわれる可能性もゼロではないでしょう。

話を再びネットワークのことに戻します。SNSには直接関係はないのですが、社会ネットワーク分析の専門家の安田雪氏の記事を、日経ビジネスオンラインに見つけました。ネットワークの優劣は、その参加者数の多寡で決まると考えるのがネットワークの外部性ですが、人間が構成するネットワークの場合は、その価値はそれだけで決まるものではありません。情報源は、「本当の人脈」の作り方です。

「Fig.3」を見てください。線が相互に絡み合って密度の濃いネットワークになっています。逆に「Fig.4」は隙間が多くスカスカな感じです。この2つは極端な例として描きましたが、あなたのネットワークはどちらの型に近いでしょうか。


線が相互に絡み合って高密度になっている。このタイプのネットワークは情報収集力が弱く、個人の行動を制約する傾向が強い。パフォーマンスを上げにくく、イノベーションも生まれにくい。 隙間が多く壊れやすそうに見えるこのタイプのネットワークが高いパフォーマンスを発揮する。異なる属性を持つ人やグループへブリッジをかけていくことが、こうした開放型ネットワーク構築のカギになる。

もし、「Fig.3」のような型だとしたら、要注意です。このタイプは、パフォーマンスを上げにくく、イノベーションが生まれにくいネットワークなのです。

「Fig.3」の高密度ネットワークは一見すると「全員一丸」といった印象があり、機能的・効率的に思えるかもしれません。しかし、お互いがお互いとつながっている閉鎖性は、情報収集力の低さを意味します。新規の情報が入りにくく、同質的な情報だけ内部に蓄積し循環する傾向があります。

ここでは仕事上の情報交換の観点からネットワークを描きましたが、実は、プライベートな遊びの相手といった他のネットワークでも、こうした高密度・閉鎖型はあまり好ましくありません。情報収集力が低いだけでなく、個人の行動を制約する傾向が強いからです。

これは極端な例でしょうが、無理矢理SNSに当てはめて考えてみます。SNSの特徴は、同じ趣味を持った人間が簡単にコミュニティを形成できることにあります。しかし、あまりにニッチな話題に絞ったコミュニティの場合は、「Fig.3」のような閉鎖的なネットワークに陥る危険性を秘めているのではないでしょうか?

参加者が固定化したコミュニティは居心地が良かったとしても、新しい参加者が増えないと、新たな刺激も生まれにくくなります。そうなると、どうしても飽きが来るのではないでしょうか? 適度に新しい参加者が増えて、新陳代謝が生まれるのが、長続きするSNSの秘訣だと思います。そうした側面からも新規ユーザの獲得は、SNSの成長にとって最も重要な課題のはずです。

最後に、日経ビジネスの記事に戻り、ミクシィの海外展開の可能性について笠原氏が語っている部分を紹介します。

問 ミクシィが米国なりアジアなりに海外進出するという可能性は。

答 ミクシィを単純に翻訳したバージョンで参入できるかというと、いくつかハードルはあると思っています。ただ、ミクシィなのか、それ以外のサービスなのか分からないですけれど、会社をやっている人間としてグローバルに展開していくということは、必ずやっていきたいですね。

アジア圏もそうですし、英語圏についても。個人的には英語圏の方に興味がありますね。英語って割とグローバルで激しく競争していく言語だと思っているので、そこでもまれてみたいという気持ちはあります。

収益化の難しいと言われていたミクシィでも、コミュニティ広告という分野で成功例が徐々に増えつつあります(mixiのコミュニティー広告、成功の秘けつは)。もし、笠原氏が国内のSNSマーケットにおけるミクシィの地位は盤石と本当に考えているのであれば、海外マーケットに本格進出する日も、それほど遠い未来のことでもなさそうです。


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