独り勝ちが続く電通のスポーツ・マーケティングの次の被害者は?
2006年11月29日
前回の投稿ケータイ広告を総取りした電通に突きつけられた「予想外」の問題の中で、電通の中間決算が1億円を突破し、減収減益となった業界2位の博報堂DYホールディングスとの差が益々開きつつあることを述べました。その背景には、携帯電話の番号継続制度(MNP)特需を電通が独占したことにあります。
電通が独走したもう1つの理由は、サッカー・ワールドカップを始め、同社が圧倒的な強さを誇るスポーツ事業が拡大していることです。『4つの市場における事業展開』(2006年アニュアルレポート・PDF)では、現在同社が手がけているスポーツ・イベントが明らかにされています。
絶好調な電通のスポーツ・ビジネスの「真骨頂?」は、現在TBSで放送中の『2006世界バレー』に見ることができます。アイドル・タレントを使ったり、選手をPRのために大会直前まで様々な番組に引っ張り出すマーケティング戦略が奏功し、20%を超える視聴率を稼ぎ出しています。情報源は、『TV演出、過剰?必要? バレー世界選手権中継』(朝日新聞朝刊 2006年11月21日 18面)です。
男子の日本戦の試合前。「モーニング娘。」のメンバーらがコート上でテーマ曲を歌うと、会場に甲高い歓声が響いた。試合中も「ゴーゴー、ニッポン!」とコート脇からDJが声を張り上げる。詰めかけた観客が同じ振り付けで一斉に赤いスティックを振り回す様子は、まるでアイドルのコンサートのようだ。
これらは、放送するTBSの演出だ。国際バレーボール連盟(FIVB)の、テレビ局側への配慮は徹底している。日本戦はゴールデンタイムに合わせて午後6時開始。女子の決勝でさえ、日本が出場した5位決定戦の前にあった「前座」にすぎなかった。
放送時間を調整できるよう、日本戦では第2、第3セットの間に10分間の休憩を設けた。テクニカルタイムアウトの時間も、CMを入れるため本来の60秒を90秒に延長した。これは今回の特例。FIVBによると、これらはテレビ局の意向で、日本戦だけ特別な規定を適用したという。
日本のテレビ局の都合で試合時間が決定されるのは、ワールドカップ・ドイツ大会の時と事情は全く一緒です(テレビ局はW杯日本代表戦の試合時間を変更するよう要請した疑惑を否定)。ちなみにこの噂を初めて大きく取りあげたマスメディアも、朝日新聞でした。
「世界バレー」の視聴率は圧倒的だ。女子大会は連日20%近くを記録。1次ラウンド最終日のポーランド戦があった5日は20.6%(関東地区)で、同じ時間帯の日米野球の7.1%(同)を大きく引き離した。17日に始まった男子大会も15%前後を記録している。
TBSは04年9月から3カ月に一度、特別番組を放映して大会を宣伝。「モーニング娘。」ら、タレントの「オフィシャル・サポーター」は21人を数える。
しかし、その「演出」は過剰にも見える。台湾女子の林光宏監督は「プライバシーに踏み込む取材があって選手が怖がった」と記者会見で苦言を呈した。「ホテルや食事までテレビカメラがついてこようとした。
台湾ではバレー選手がアイドルのように扱われることはありえない」。大会前には、負傷して手にギプスを付けた状態の選手もいるのに、全日本女子チームはバラエティー番組に出演して大会を宣伝した。
TBSスポーツ局の吉田映一郎・スポーツニュース部長は「『やりすぎ』と見る人もいるかもしれないが、協会、監督、選手には理解してもらっている。番組に出てもらうことで、視聴者に選手の個性も見てもらえる」と説明する。
選手自らが大会の宣伝に駆り出されるのは、国際バレーボール連盟(FIVB)の運営資金が、テレビの放送権料の大きく依存しているからです。これも国際サッカー連盟(FIFA)が、電通を介して放送権料の高額化を目論んできたのと同じ構図でしょう(電通とFIFAの画策でサッカー日本代表の試合時間が変更された?)。
日本バレーボール協会の山岸紀郎専務理事は「批判は承知しているが、番組宣伝は必要だ」と言い切る。その言葉の背景には、競技における日本のテレビ局の巨大な影響力がある。
FIVBの収入の8割近くが日本のスポンサーによるとみられ、その多くをテレビ放映権料が占める。ほかの世界大会は、日本テレビやフジテレビも中継しており、FIVBの広報担当は「日本の各テレビ局の競争のおかげで、放映権料はつり上がっている」。日本のテレビ局の放映権料は合計で100億円以上とも言われる。
世界選手権は前々回も日本開催。4年後の次回も女子大会は日本で行われる。上位3チームが北京五輪の出場権を得る来年のワールドカップも日本開催だ。
10月26日にあったFIVBのアコスタ会長の記者会見で、外国メディアからは「日本開催が多すぎるのでは」との質問が飛んだ。会長は「予選は世界各地で行われており、普及面で問題はない」と答えた上で、付け加えた。「日本のテレビ放送は大事だ」
山岸専務理事は「日本のテレビの放映権料が、FIVBを通じてバレーボール途上国に回り、それが世界のバレーを支えている」と力を込めている。
最後の先進国のお金が巡り巡って途上国のスポーツ振興に使われているという正当化の理由も、FIFAが掲げるサッカーの世界戦略の説明と一緒です。こう言われると、モー娘。の悪ふざけを国辱的だと思っていた私も、なんとなく納得せざるをえない気持ちになるものです。
しかし、本当に恥ずかしくて我慢できないのは、6位に終わった日本の竹下佳江選手が大会の最優秀選手(MVP)に選ばれたことでしょう(女子バレー日本からMVP TBSに批判の嵐)。日本のテレビ局べったりのFIVBが気を利かしたつもりかもしれませんが、ここまであからさまになると、さすがに興ざめです。一番の被害者は、大人の理由で選ばれてしまった竹下選手でしょう。
さて、世界バレーやサッカーW杯での電通とテレビ局の行きすぎたマーケティングに対して、批判の声を上げたのは朝日新聞です。その朝日新聞系列のテレビ朝日が、2001年の福岡大会以降独占放送しているのが世界水泳選手権です。2007年の世界水泳メルボルン大会も、電通のしきりでテレビ朝日で放送されることが決定しています。
来年3月開催のメルボルン大会の最大の注目選手は、母国大会で奮起が期待されるイアン・ソープです(でした)。そのソープは先頃引退を発表しました。これは電通とテレビ朝日にとって想定外の事態に違いありません。
最大の目玉を失ったテレビ朝日は、大会を盛り上げるためにアイドル・タレントを使ったりすることはないのでしょうか? もしそうなったとしたら、朝日新聞はどんな記事を書くのでしょうか? 今後の展開が注目です。
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