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中国国家主席も愛飲するスターバックスを悩ますエチオピア問題

2006年12月08日

世界最大のコーヒーチェーンのスターバックスが、BRICs市場への進出を加速しています。BRICsの中でも、2年後の北京オリンピック開催を控える中国市場でのビジネス拡大は、同社の世界戦略の最優先課題です。情報源は、『米スターバックス、コーヒー文化浸透、BRICs進出加速――中国1000店超に』(日経産業新聞 2006年11月17日 4面)です。

同社は中国でスターバックス店舗を運営する「北京美大珈琲」を傘下に持つ投資会社ハイ・グロウン・インベストメント・グループ(HGIG)を買収。北京美大珈琲はスターバックスとのライセンス契約により、北京と天津で60店舗を運営し、株式の90%をHGIGが所有している。

スターバックス中国 店舗運営会社の直轄化で中国での事業展開の機動性を高める。現地のスターバックス首脳は「(買収で)2008年の北京五輪を前に迅速な店舗網拡大の準備が整った」とし、中国進出を加速させる方針を強調した。

同社は現在、中国19都市で約200店舗を展開。台湾などを含めた中国語圏市場全体では430店舗以上に及ぶ。中国での具体的な出店目標は明らかにしていないが、近い将来、千を超す見通し。中国では最近、欧米文化に敏感な若者や米国などで教育を受けた帰国子女などを中心にコーヒーの人気が高まっているという。


スターバックス中国 スターバックスの中国ブランド名は、『星巴克』です。
当然偽ブランド大国では、こんなブランドもあります。 オリジナルが「star(星)」ならば、イミテーションは「sun(太陽)」になります。

皮肉な話ですが、中国ではこうした偽ブランドが横行することこそが、オリジナルブランドが浸透していることの証明なのかもしれません。スターバックスのハワード・シュルツ会長は、こんなエピソードも紹介しています。情報源は、『成功に人の連帯欠かせず 交流重ねて世界で団結』(日経ビジネス 2006年12月4日号 1ページ)です。

今年4月に胡錦濤・中国国家主席が、米シアトルを訪問した際のことです。米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長の自宅で歓迎晩餐会があり、地元に本社を置く私も招待されました。

その会のスピーチでのことです。

胡主席がいきなり「スターバックス」と言って何かを話したのです。しかし、通訳が入るまで内容が分かりません。私は不安な気持ちになりました。

中国の招待客は笑っています。意味を聞くと、「私が国家主席でなかったら、スターバックスコーヒーの店に行ってリラックスしたい」と話したとのことです。私はとてもうれしい気持ちになりました。

ゲイツ会長には「どうやって(社名を出してもらうように)頼んだの」とからかわれましたが、もちろん私は何もしていません。

胡主席はその翌日、米ボーイングの工場を訪ねましたが、そこでもスターバックスのカップを持って「乾杯」をしてくれました。それを聞いて、私は再び驚き、感謝したものです。

私たちは中国に店を展開していますが、その国の主席から敬意を表す態度を示されて、現地で受け入れられているのだと安心しました。

スターバックスは米国や日本など世界37カ国に展開するコーヒー店ですが、どの土地でも人に好かれることが欠かせません。

それでは、シュルツ会長の思惑通りにスターバックスは、「どの土地でも人に好かれる」のでしょうか? 実は同社は現在こんなトラブルに巻き込まれています。その場所は、現在同社が力を入れているBRICsのさらに先にあるはずの、アフリカ大陸です。情報源は、『米スターバックス、エチオピア政府と対立、コーヒー豆の名前使用料、支払い要求拒否』(日経産業新聞 2006年12月4日 4面)です。

エチオピア産コーヒー豆の米国での販売を巡り、米スターバックスとエチオピア政府が対立している。エチオピアは貧困農家支援を理由に、スターバックスにコーヒー豆の名前の使用料を支払うよう要求。スターバックスは断固拒否している。ただ、この問題は企業の社会的責任(CSR)とも関連するだけにスターバックスは難しい対応を迫られている。

対立が公になったのはエチオピア政府とつながりの深い有力非政府組織(NGO)のオックスファム(英国)が今秋、突然出した声明文。同団体は「エチオピア政府による米国でのコーヒー豆の商標登録申請が、スターバックスの圧力で却下された」とスターバックスを激しく非難した。

オックスファムによると、エチオピア政府は昨年、同国の貧困コーヒー豆農家の救済を目的に人気品種の「イルガチャフェ」「シダモ」「ハラー」の商標登録を米特許商標庁に申請した。

しかし「シダモ」と「ハラー」についてはスターバックスの意向を受けた米コーヒー業界団体が同庁に商標登録を認めないよう働きかけた結果、却下されたという。

政府は9月、スターバックスに対し、コーヒー豆の名前のライセンス契約を政府と結ぶよう文書で求めたが、同社はこれを拒否したとされる。

こうした問題に対応するために、スターバックスのドナルドCEO自らがエチオピアを訪問し、ゼナウィ首相と会談したことが同社のプレスリリースでも発表されています。

“We were grateful for the opportunity to meet with the Ethiopian Prime Minister Melese Zenawi to talk about how we can work together on initiatives that will benefit coffee farmers,” said Jim Donald, Starbucks president and ceo. “We believe the meeting was very cooperative and productive and we are committed to working with the Ethiopian government to find a solution that supports the Ethiopian coffee farmer.”

As stated in the press release issued on Nov. 29, 2006 by the Ethiopian Intellectual Property Office, “both parties agreed to cooperate and work together in the protection and use of the Intellectual Property Rights of Ethiopia’s specialty coffee names and for Starbucks to promote high quality Ethiopian coffees.”

両者のトップ会談は友好に終わり、互いに協力することを確約した、というのがリリースでの発表内容です。しかしながら、具体的な解決策までは明らかにされていません。

スターバックスは、貧困や環境問題に積極的に取り組む企業イメージが強かっただけに、問題の長期化は同社の企業イメージにとって、予想以上の打撃を与えることになるのかもしれません。

かつてはクールなブランドの代名詞であったナイキのビジネスモデルが、東南アジアの低賃金労働に支えられている点がNGOに非難されました。この事件をきっかけにナイキのブランドイメージも、一時的なダメージを受けました。同様な結果をスターバックスが迎えることになるのでしょうか?

自宅のパーティーの席上でスターバックスを羨ましく思ったビル・ゲイツ氏は、同社がこのような問題を抱えていることを知って、溜飲を下げているのかもしれません。冗談です。いまや途上国支援に情熱を傾ける慈善事業家となったゲイツ氏は、そんな下品なことは考えてはいないでしょう。


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