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ネーミングの罠「すててこ・ロングトランクス」と「個人請負・IC」

2007年01月11日

本日の日経流通新聞(2面)によれば、ユニクロが「すててこ」を「ロングトランクス」という呼称で、ネットに限定して売り出したところ、好評で完売続きになっているそうです。

ロングトランクス(ウインター)

ネーミングが変わっただけでヒット商品になるとは、まさにマーケティングの妙というものでしょう。

さて、雇用の多様化の結果近年増えつつある就労形態の1つが、「個人請負」です。その過酷な労働実態が、今週発売の週刊東洋経済にレポートされています。情報源は、『雇用破壊-「個人請負」という名の悲惨-「労働者」の権利を持たない労働者たち』(週刊東洋経済 2007年1月13日 54~57ページ)です。

委託契約社員、業務委託契約――。名称はさまざまだが、これらはすべて「個人請負」だ。個人請負とは、ある個人が企業から業務を請け負って働くことを指す。ほとんどは1社専属で、他の社員と同じように働いているため、契約社員と混同されがちだが、位置づけは個人事業主、自営業者。

身分は自営業者なので、労働基準法、労災保険法などの労働法がいっさい適用されない。残業手当、有給休暇はなく、業務災害による傷病でも一部を除き労災保険は給付されない。「解雇」制限もなく、職を失っても失業保険が給付されない。年金、健康保険は全額自己負担で国民健康保険、国民年金に加入する。企業にとっては、事業主負担部分である法定福利費を払う必要がない。

個人請負で働く人は近年急増しており、一説には全国で50万人とも70万人とも200万人ともいわれている。だがこの分野を正確に把握する公的統計や調査は存在せず、市場規模、就業実態など、その全体像は依然あいまいなままだ。職種は多種多様だが、最も身近なところでは、都心部を中心に最も速い配送手段として活用されている「バイク便」のライダーや、日々オフィスを回って乳製品を販売する「ヤクルトレディ」などは、ほぼ全員が個人請負だ。

この後の記事では、バイク便ライダーとヤクルトレディの労働実態が詳しく述べられています。完全歩合制のため、バイク便が月収20万円、一番稼ぐヤクルトレディでも25万円で、その過酷な労働条件と比較すれば、割のいい仕事ではありません。さらに各種社会保険もないために、事故や病気が原因で就労できなくなれば無収入に陥る不安も、常につきまといます。

このように会社との間で個人が業務委託契約を結んで就労する形態は、米国では「インディペンデント・コントラクター(IC)と呼ばれ、900万近いICが存在すると呼ばれています。このICの日本での普及とサポートを行っている団体が、「インディペンデント・コントラクター協会」です(インディペンデント・コントラクターは新しい雇用形態として定着するか)。

同協会の秋山進理事長は、団体の設立主旨として、次のように述べています。

ICになると、朝何時に起き何をするかを決めるのは自分です。頼まれた仕事もやりたければやればいいし、嫌なら断ってもかまいません。体力と知力さえ許せば、5社でも10社でも契約して好きなだけ仕事をすることもできます。

一方、サラリーマン時代は不満の対象でしかなかった「会社」という存在が、実は偉大なサポーターだったと知ることもできます。面倒くさい税金の計算もしなくてはなりませんし、封筒や切手も自分で買わなくてはいけません。パソコンが故障しても情報システム部は駆けつけてくれませんし、うるさかった法務部もいないので、自分で契約書の文言を細かくチェックしなくてはいけません。

そんな状況下にあって、ある人は人事制度設計のプロとして複数の会社と契約し、サラリーマン時代をはるかに超える収入を得ています。別の人は子供や奥さんと過ごす時間を増やすために、週2回だけ研修トレーナーとして働く生活を選んでいます。(もちろん大幅な減収です)そして、ある営業のプロは一年のうち2ヶ月を休みにして海外旅行を楽しみ、のこりの10ヶ月は複数会社の商品を猛烈に売りまくっています。

Individual (個人)として自分の価値基軸で意思決定し、組織からIndependent(独立)に活動し、Inter-Company(会社の垣根を越えて)に働く、これがIndependent Contractor(IC)の働き方なのです。

子供のころから他人や世間の価値基軸にのっとり、所属集団の庇護下で生きることが当たり前になってきた多くの日本人にとって、ICになるという選択は大変な冒険に思えるようです。しかしながら、そこを思い切れた人たちは皆、「誰にも頼らず自分自身の足でこの世の中を歩いている」という初めての体験に「誇り」にも似た晴れやかな気持ちを持つことができます。

個人請負もICと呼称が変わると、一転して組織という枠に縛られないで専門的なサービスを提供する働き方に聞こえてきます。個人請負という言葉はネガティブでも、英語のICならポジティブに響くから不思議です。また、個人請負からは単純な肉体労働が連想され、ICからは高度な頭脳労働が連想されます。

しかしどう呼ばれようと、収入が安定しない個人事業主であることは、2つはまったく同じです。結局は、「すててこ」を「ロングトランクス」と呼んでいるだけの話ではないでしょうか。


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