26歳の社長の娘を将来の後継者と想定していたヤマダ電機のコンプライアンス
2007年01月26日
不二家の不祥事をきっかけとして、同族経営に対する批判の声が高まっています。単純に、「同族企業=コンプラインス意識が低い企業」、と決めつけてしまうことが危険であることも言うまでもありません。世界のトヨタや松下も、元をたどれば同族企業であったわけですから。
しかし、どんなに規模が大きくなっても、旧態依然とした同族意識から抜けきれない企業があるのも、また事実です。家電量販店売上げトップの東証一部上場企業で、こんな話がありました。情報源は、「50歳で社長」認めず算定、ヤマダ電機賠償訴訟です。
家電量販最大手のヤマダ電機(本社・前橋市)の山田昇社長の長女直美さん(当時26)が02年12月、前橋市内で乗用車にはねられ死亡した事故をめぐり、社長夫妻が男性運転者に対し、慰謝料を含めて計7億2691万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、前橋地裁であった。
小林敬子裁判長は男性に6702万円の支払いを命じた。原告の主張する賠償額は、直美さんが将来、ヤマダ電機の社長を継ぐことを見込んで算定したが、同地裁はその特別な事情をくむ認定はしなかった。
03年4月に同地裁で言い渡されたこの事故の刑事裁判の判決では、男性が脇見運転をして赤信号のまま交差点に進入、青信号で歩いて横断していた直美さんをはねるなどして死亡させた、と認定している。
訴状で原告側は、直美さんが入社3年目で、同社の課長職である社長室長だったことから、35歳で取締役、50歳で社長に昇進していたと想定し、将来得られるであろう収入「逸失利益」を5億7215万円と算定。一方、被告側は「全労働者の平均賃金」をもとに計算した4277万円が妥当と主張していた。
将来の社長という主張を排して、請求額の10分の1しか認めなかった判決は、世間感覚から考えても妥当なものではないでしょうか。愛娘を26歳の若さで失った遺族の悲しみは理解できますが、社長の娘なのだから後継者への道が約束されているとして、その分の収入までを逸失利益に見込むのは、かなり無理があると思います。
つい先頃、タレントの風見しんご氏が10歳の長女を交通事故で失うといった痛ましい事件もありました。この場合、長女の逸失利益に将来彼女が有名タレントとしてなった場合に得られるであろう収入分までを織り込むことはできるのでしょうか? 実際に風見氏がそのような損害賠償請求を起こすことはないでしょうし、26歳と10歳という年齢差から、両者の事例を比較するのはあまり意味がないのかもしれませんが。
同族企業の社長の子息がその地位を引き継ぐ確率は、タレントの子供が実力主義の芸能界で成功する確率よりは、はるかに高いのかもしれません。しかしながら、一部上場企業の社長の座は、直系親族という理由だけで確実に承継されるものではありません。後継者を選ぶには、株主や従業員を始めとするステークホルダーを納得させる説明責任とプロセスの透明性が求められるはずです。
損害賠償請求における主張の通りに、山田社長が愛娘の社長就任を既定路線として考えているようであれば、世間の常識とは乖離しているように見えます。店舗基盤が全国に拡大しても、発想の根本は群馬ローカルのヤマダ商店に近いようだ、といった印象を受けてしまうのは、私だけでしょうか?
ところでコンプライアンスという言葉には、日本では「法令遵守」という訳語が使われています。しかし、コンプライアンスの基本は単に明文化された法律や規則に止まらず、社会的規範や企業倫理に従うことであり、有り体に言えば社会の常識との一致ということになるのだと思います。私には、ヤマダ電機と社会的常識の間には、若干のズレがあるように見えてしまいます。
同社の企業風土と社会通念との間にズレがあるとすれば、コンプライアンス(法令遵守)という面で、実際に問題が起こっても不思議ではありません。情報源は、ヤマダ電機に立ち入り調査 大阪労働局です。
大阪労働局は24日、家電量販店大手のヤマダ電機(本社・前橋市)の「LABI1(ラビワン)なんば」(大阪市浪速区)に対し、同店が雇用関係のない家電メーカー販売員に、職業安定法で禁じられている指揮・命令をしていた疑いがあるとして、立ち入り調査した。
関係者によると、同店は「ヘルパー」と呼ばれる家電メーカー販売員に対し、店内での販売方法などについて命令するなどしていた疑いが持たれている。同法では、販売員に指揮・命令できるのはメーカー側に限られる。また、メーカー側が店側に違法な労働者供給をしていた場合も同法に違反する。店側が指揮・命令する場合は、派遣会社と派遣契約を結び、人件費を負担しなければならない。労働局は、同店がどの程度の業務を販売員にさせていたか、実態解明を進める。
ヤマダ電機経営企画室は「法律に違反しているつもりはない。労働局からヒアリングを受けている最中なのでコメントできない」としている。
私の住む横浜のみなとみらい地区にも、一時ヤマダ電機が進出する計画が持ち上がったことがあります。結局、大型店ができると周辺の交通量が大幅に増加し、渋滞が多発するとの理由で、横浜市に出店を拒絶されました。公表された理由以外にも、ヤマダの出店が不適切と判断された別の理由があるのかどうかは、よくわかりませんが。3月にオープンするららぽーと横浜にも、家電量販店はありません。その点では少し残念です。
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コメント
ヤマダ電機の郊外出店も車社会を加速させ交通事故を増やす要因になっていると思います。
上場企業の経営者ならそういうところにも気がついてほしいのですがね。
Posted by: Piichan | 2007年03月10日 17:47