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ロングテールが席巻する中、チラシ・マーケティングで80:20の法則を実現

2007年01月30日

「続きはWebで」「詳しくは○○で検索」といったネット誘導型のテレビCMが珍しくなくなりました。「nikkeiBPnet NET Marketing」がマクロミルの協力を得て10月に実施した「ネット連動型テレビCMへの反応度調査」によれば、実に6割もの人が「ネットの検索窓へ誘導するテレビCMを見たことがある」と回答しています。

さらに「見たことがある」と答えた回答者の6割が、少なくとも1回以上CMで使われたキーワードでネットを検索した経験があると回答しています。

これらの調査結果は、検索誘導型のテレビCMは有効性を証明するものなのでしょうか? 実は少し注意すべき点がありそうです。もともと自宅からインターネットにアクセスできるユーザのみを対象とした調査なので、テレビCMに誘導された回答者の割合が高くなっても当然でしょう。

この調査が、郵送や電話調査で行われていたとしたら、もっと低い数字になっていたのではないでしょうか? しかし、この点を割り引いたとしても、今後ネットとの連動を狙うタイプのテレビCMが増えてくることは、間違いないでしょう。

ネット連動型のテレビCMが増えつつある中で、先週放送されたテレビ通販最大手の「ジャパネットたかた」のCMは、異彩を放っていました。高田明社長がインタビューを受けるという設定のCMのメッセージは、全編にわたってただ「27」という数字だけを印象づけるものでした。CMの目的は、1月27日の新聞朝刊の折り込みチラシの事前告知にあったのです。

ジャパネットが訴求していたのは折り込みチラシだけで、ネット通販を示唆するようなフレーズは一言もありません。これが27日に配られたチラシです。これでもかというくらいに商品情報が満載された紙面は、昔ながらの圧迫型チラシの見本のような構成です。

ジャパネットたかたのチラシ広告

ジャパネットたかたでも、インターネットでの動画配信などをスタートして、ネット経由の売上げが全体の16%まで占めるようになっています。しかし、同社の顧客特性を考えると、あくまでも主力の広告メディアは、オールドメディアに位置づけられるテレビと折り込みチラシなのでしょう。

その高田社長のインタビュー記事が、日経流通新聞に掲載されました。情報源は、『ジャパネットたかた社長高田明氏――お薦め品、語りで売り切る』(日経流通新聞MJ 2007年1月29日 3面)です。

――昨年の歳末商戦は減速感を感じる小売業者も多かったようです。

「液晶、プラズマの薄型テレビの売れ行きはすごかったですが、期待値が高すぎたのかもしれませんね。今は先を読むのが本当に難しく、感覚でしかとらえられません。新商品の情報は世界で同時に流れ、拙速と言えるほどの反応が起きる。2カ月の商談なんてとんでもない。長くて1カ月です。朝令暮改で済んだのは昔の話で、一日何度も判断を変えないと生き残っていけないですね」

――うまく需要を予測しないと、無駄な在庫が膨らみますね。

「生放送で紹介した品を集中販売するので、在庫は抑えられます。昨年の売上高1,080億円に対しおおむね10億円。入ったらすぐ出す、滞留在庫を持たない。ネットでは2,000から3,000品目を扱っていますが、実際には全売上高の7、8割を20から30品目で占めます。

在庫回転率は200回転までいけるでしょう。(大手でも10回転前後の)家電量販店ではこんなレベルはありません。大型量販店では50万品目も並べますが、管理する労力とコストを考えるととてもできませんね」

同社のマーケティング戦略の基本は、流行のロングテールの法則のように、ニッチな売上を積み上げることではありません。戦略の基本はむしろ伝統的な「80:20法則」(パレートの法則)であり、管理コストを重視するために在庫品目数(SKU)を増やすことにも慎重な姿勢を貫いています。ジャパネットがこうした戦略をとっている理由は、同社の顧客特性にあります。

同社の主要顧客である高齢者層は、価格コム等のサイトを駆使して、複数の商品の特徴を分析するようなネットユーザではありません。彼ら、彼女らが望んでいるのは、自分が信頼している販売会社が一押し商品をわかりやすく紹介してくれることでしょう。同社の顧客志向は、単に品目数の絞り込みだけでなく、高齢者向けのユニバーサル志向にも見ることができます。

「操作が難しいなど問い合わせが殺到する商品は、どんなに売れていても販売を止めます。説明に1時間かかることもあり、他の商品を買ったお客さんに対応できなくなる。寄せられた声はメーカーに伝えて改良してもらいます。ボタンを大きくしたり、最低限の操作に絞った簡易説明書を追加したり。カラオケやカーナビなど、ジャパネット仕様の商品は売上高の2、3割を占めます」


ユーキャンさらに1月29日の朝刊には、通信教育のチラシも入っていました。
配っているのは、これもテレビでチラシ配布の事前告知を行っている生涯学習のユーキャンです。

ネットを利用した教育素材が充実してくる中で、ユーキャンがテレビCMや折り込みチラシを依然として主要なマーケティング・チャネルとして重視しているのも、見込み顧客の特性を分析した上でのことだと考えられます。

すでに通信教育に高い関心を持っている消費者は、おそらくインターネット等で情報収集を始めているはずです。興味のある情報を自分で集めにいくような消費者は、アクティブユーザです。こうしたユーザにとっては、ユーキャンが配布するチラシはあまり効果的ではないでしょう。

しかし、生涯学習の潜在マーケットはこうしたアクティブユーザにはとどまりません。まだ積極的な情報収集活動を行っていない消費者に、生涯教育に関して興味を持ってもらうには、何らかのきっかけを与えることが必要です。潜在顧客を掘り起こすには、まずはテレビやチラシといったパッシブなメディアを使うのが、有効な手段となるはずです。

Web2.0による口コミ・マーケティングやロングテールの話ばかりを読んでいると、これからのマーケティング戦略の基本が、すべてネットに移行してしまうかのような印象を受けてしまいます。しかし、ジャパネットたかたやユーキャンの例を考えると、ターゲットさえ明確でありさえすれば、テレビCMや新聞折り込みチラシも、依然として有力な広告メディアとして存在し続ける可能性を示すものだと思えてきます。


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